抱擁 ～愛しい夜～

抱擁 ～愛しい夜～

夜、眠りにつく時、目を閉じると不意に不安になって現実が夢ではない証を確かめる。

　――― 大丈夫、傍にはいつも彼がいる。

共に日々を過ごしているのに、なぜか微かな不安が消えない。
目を開けたら、まだ一人ぼっちのままでいそうで。
この手でしっかり触れていないと、孤独が見せる幻のような気がして。
そんな想いを振り払うように、ベッドのぬくもりを追う。

闇の中に優しい体温。
見えなければ恥じらいも必要ないからと、すべての明りを消して毎晩、甘えさせてくれる。
すっかり許してしまった心と身体をあずけ、暖かい胸に擦り寄った。

「おやすみなさい」
「できれば、まだおやすみたくねえんだけどな」

からかうような口調で、彼は私の髪を撫でる。
苦笑して、私は眠ったふりを決め込んだ。

独りではないという喜びを示すように、強く固く抱きしめる。
手に入れた唯一の幸せを逃さない為に。



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