世界一美人な妹とブサイクな俺

第十話 話がこじれて部下が出てくる職場

「どうも、エイブンの野良といいます」

「今日は十時に来る約束だったのに今頃来たのかい。あきれたね」
　
おばあさんにぴしゃりと言われた。無論、俺はそんな約束など聞いていない。

「申し訳ありません。担当が代わるときに連絡の行き違いがあったみたいです」

「行き違いねえ。それであんたに担当が代わったってことは、あんたはあいつの上司なわけかい」
　
歯切れ良くおばあさんはそう言うと、横からすっとキセルを取り出して吹かし始めた。

なかなか粋な姿である。

「いや、僕は馬場の部下です」

「部下？　何で話がこじれている時に部下に担当が代わるんだい」

「聞いてくれますか！」と俺は思わず仕事のことなど忘れて馬場の愚痴を口からあふれ出してしまった。

これは俺の心が限界ぎりぎりだったこともあるし、おばあさんが人生相談なら私に任せなさいという雰囲気をあまりにも出していたからなので、仕方がないことだったのである。

改めて言わせてもらうが俺は悪くない。

俺が馬場の仕打ちを丁寧に説明して、性格の悪さを細かく分析した結果を報告すると、おばあさんも始めはなんとも驚いた顔をしていたが、終わりには相槌を打って俺を元気付けてくれた。