41 / 56
*41 鐘が鳴った──のか? *
しおりを挟む
このタイミングで、それを出す!? 騎士がいることに気づいてないのか?! ホワイトタイガーさんがどんな反応をするのか恐ろしくて、肝が冷える。そ~っと横目で彼の様子を伺ったのだが……なんか、様子がおかしい。俺の思ってたのとナンカ違う。
目を真ん丸にして、マッキーさんを見てる。あくまでも雰囲気なんだが、ホワイトタイガーさんの周りに花が舞い散り、リンゴ~ンって鐘が鳴ってる感じ。
まさに今、一目で恋に落ちました、っていう……。
「じゃ、僕、眠いから帰るね」
一方で、マッキーさんはどこまでもマイペース。ふわ~あぁと大きなあくびをして、俺たちに背を向けたが、
「失礼。君の名前を伺ってもいいだろうか? 私は、ティグレカヴァリエ騎士団 第四中隊所属のシグヴァルト・デュランタ・ユゼローク・ヴェメスだ」
騎士様……アナタ、ひざまずいて何してますのん? 俺がポカーンとしている横で、
「ウソ!?」
「まさか?!」
オルレアとおかみさんが、信じられないという顔で視線を合わせていた。
「ひょっとして!?」
「ひょっとするかも?!」
と言ったところで、お互いに抱き合う。え? ちょっと、ちょっと何よ? 何なの? 何が起きてんの。俺だけおいてきぼりなんだけど?! ただ、二人とも目がキラッキラしてて、期待度マックスになってるのは分かる。マジで何事?!
「ん~? 僕? 僕はマキノ・タクミだよ」
「マキノ・タクミ……。不思議な響きの名だ。タクミ、今のあなたは体調が万全と言えない状態のようだ。嫌でなければ、私に家まで送らせてもらえないだろうか?」
「? シグさんが? 何で? 仕事中じゃないの?」
ぶふぉっ! ちょ、マッキーさん?! あんた、相手は騎士様! お貴族様! 爵位は分からないから、せめてヴェメス様って呼ぶべきだろ!? 俺がひえぇっとおののいている前で、
「市民の安全を守ることも私の仕事だ。ふふっ。シグさんとは……初めての呼び名だ」
「嫌なら変えるよ?」
「いや、かまわないとも」
あれえ? 何とも和やかなやり取りが。そのまま、マッキーさんは、ホワイトタイガーさんこと、ヴェメス様にエスコートされて帰って行った。
……どういうことだよ? 何が起きたんだ? え? 一目ぼれ的な?
助けを求めるような気持ちで、オルレアとおかみさんを見たら、
「見たかい、オリー?!」
「見たよ、見た! すごい! まさか、こんな瞬間が見られるなんて!」
「「夢みたい……」」
え、え~? あの……何が起きたんで? 訳が分からないって顔をしている俺に気づいたオルレアは、興奮冷めやらぬ状態で、
「つがいだよ、つがい! あの騎士様のつがいはマッキーさんだったんだよ!」
「つが……あぁ、つがい。……………えぇっ?! ちょ、あれ!? あれが?!」
つがいというのは、端的に言えば運命の相手だ。この運命の相手は、同族の異性とは限らず、同性だったり、別の種族だったりすることも珍しくないらしい。
ただし、注意点がいくつか。
1、人族はつがいセンサーが鈍いので、自分でつがいは分からないと思ったほうがいいこと。
2、つがいセンサーが鋭いのは獣人族と魔人族だが、彼らからつがいだと言われても、簡単に信じてはいけないこと。つがい詐欺ってものがあるらしい。
つがい詐欺が広く一般に知られてはいるものの、人族はカモられやすいとのことである。日本でも特殊詐欺の被害件数はずっと横ばい状態だし、分かる気がする。
「本当につがいだとしても、その人と一緒になって幸せになれるとは限りませんので、そこは冷静に見極めましょう。運命の出会いがハッピーエンドだなんて、誰が決めたんだって話です。悲恋なんて、そこら中に転がっていますよからね」
チャールズさんは、いつも厳しい。優しいからこそ、厳しいんだってことは分かってる。
とりあえず、二人には注意しておかなくては。
「二人とも、ヴェメス様のつがいがマッキーさんだったってこと、言いふらしたりしないように。正確な身分は分からないけど、ヴェメス様は貴族なんだからさ」
「は! そうだね。あんなにいい男なんだ。縁談の五つや六つ、あったっておかしかないよ」
「縁談相手から、マッキーさんが狙われたり!?」
それ、どんな昼ドラ。でも、絶対にないと言い切れないあたりがおっかない。
「喋るなら、つがいと出会ったっぽいカップルを見たってことだけにしとこうか。オリー」
「そうだね。エリーゼさん」
二人は力強く「うん」と頷き合った。突っ込まれたら、虎族と人族のカップルだと答えることにしようと決めて、おかみさんはパン屋に帰って行った。
昨日から色んなことが立て続けに起こりすぎじゃないかナー? なんか疲れた……。
目を真ん丸にして、マッキーさんを見てる。あくまでも雰囲気なんだが、ホワイトタイガーさんの周りに花が舞い散り、リンゴ~ンって鐘が鳴ってる感じ。
まさに今、一目で恋に落ちました、っていう……。
「じゃ、僕、眠いから帰るね」
一方で、マッキーさんはどこまでもマイペース。ふわ~あぁと大きなあくびをして、俺たちに背を向けたが、
「失礼。君の名前を伺ってもいいだろうか? 私は、ティグレカヴァリエ騎士団 第四中隊所属のシグヴァルト・デュランタ・ユゼローク・ヴェメスだ」
騎士様……アナタ、ひざまずいて何してますのん? 俺がポカーンとしている横で、
「ウソ!?」
「まさか?!」
オルレアとおかみさんが、信じられないという顔で視線を合わせていた。
「ひょっとして!?」
「ひょっとするかも?!」
と言ったところで、お互いに抱き合う。え? ちょっと、ちょっと何よ? 何なの? 何が起きてんの。俺だけおいてきぼりなんだけど?! ただ、二人とも目がキラッキラしてて、期待度マックスになってるのは分かる。マジで何事?!
「ん~? 僕? 僕はマキノ・タクミだよ」
「マキノ・タクミ……。不思議な響きの名だ。タクミ、今のあなたは体調が万全と言えない状態のようだ。嫌でなければ、私に家まで送らせてもらえないだろうか?」
「? シグさんが? 何で? 仕事中じゃないの?」
ぶふぉっ! ちょ、マッキーさん?! あんた、相手は騎士様! お貴族様! 爵位は分からないから、せめてヴェメス様って呼ぶべきだろ!? 俺がひえぇっとおののいている前で、
「市民の安全を守ることも私の仕事だ。ふふっ。シグさんとは……初めての呼び名だ」
「嫌なら変えるよ?」
「いや、かまわないとも」
あれえ? 何とも和やかなやり取りが。そのまま、マッキーさんは、ホワイトタイガーさんこと、ヴェメス様にエスコートされて帰って行った。
……どういうことだよ? 何が起きたんだ? え? 一目ぼれ的な?
助けを求めるような気持ちで、オルレアとおかみさんを見たら、
「見たかい、オリー?!」
「見たよ、見た! すごい! まさか、こんな瞬間が見られるなんて!」
「「夢みたい……」」
え、え~? あの……何が起きたんで? 訳が分からないって顔をしている俺に気づいたオルレアは、興奮冷めやらぬ状態で、
「つがいだよ、つがい! あの騎士様のつがいはマッキーさんだったんだよ!」
「つが……あぁ、つがい。……………えぇっ?! ちょ、あれ!? あれが?!」
つがいというのは、端的に言えば運命の相手だ。この運命の相手は、同族の異性とは限らず、同性だったり、別の種族だったりすることも珍しくないらしい。
ただし、注意点がいくつか。
1、人族はつがいセンサーが鈍いので、自分でつがいは分からないと思ったほうがいいこと。
2、つがいセンサーが鋭いのは獣人族と魔人族だが、彼らからつがいだと言われても、簡単に信じてはいけないこと。つがい詐欺ってものがあるらしい。
つがい詐欺が広く一般に知られてはいるものの、人族はカモられやすいとのことである。日本でも特殊詐欺の被害件数はずっと横ばい状態だし、分かる気がする。
「本当につがいだとしても、その人と一緒になって幸せになれるとは限りませんので、そこは冷静に見極めましょう。運命の出会いがハッピーエンドだなんて、誰が決めたんだって話です。悲恋なんて、そこら中に転がっていますよからね」
チャールズさんは、いつも厳しい。優しいからこそ、厳しいんだってことは分かってる。
とりあえず、二人には注意しておかなくては。
「二人とも、ヴェメス様のつがいがマッキーさんだったってこと、言いふらしたりしないように。正確な身分は分からないけど、ヴェメス様は貴族なんだからさ」
「は! そうだね。あんなにいい男なんだ。縁談の五つや六つ、あったっておかしかないよ」
「縁談相手から、マッキーさんが狙われたり!?」
それ、どんな昼ドラ。でも、絶対にないと言い切れないあたりがおっかない。
「喋るなら、つがいと出会ったっぽいカップルを見たってことだけにしとこうか。オリー」
「そうだね。エリーゼさん」
二人は力強く「うん」と頷き合った。突っ込まれたら、虎族と人族のカップルだと答えることにしようと決めて、おかみさんはパン屋に帰って行った。
昨日から色んなことが立て続けに起こりすぎじゃないかナー? なんか疲れた……。
56
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
平凡でモブな僕が鬼将軍の番になるまで
月影美空
BL
平凡で人より出来が悪い僕、アリアは病弱で薬代や治療費がかかるため
奴隷商に売られてしまった。奴隷商の檻の中で衰弱していた時御伽噺の中だけだと思っていた、
伝説の存在『精霊』を見ることができるようになる。
精霊の助けを借りて何とか脱出できたアリアは森でスローライフを送り始める。
のはずが、気が付いたら「ガーザスリアン帝国」の鬼将軍と恐れられている
ルーカス・リアンティスの番になっていた話。
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
あるある設定な異世界に転移しましたが、俺は普通に生きようと思います。
宮野愛理
BL
手持ちはBL漫画とネタ帳とペン、そんな装備で森で迷子になった片桐健翔。
やってやるぜサバイバル!と意気込むも、一日目には挫折を味わうことになる。
助けてくれたのは狼の獣人、セルト。
彼と言葉を交わすには――「はい、異世界あるあるってやつですね! お約束ぅ!!」
しかし健翔を待ち構えていたのは、誘拐・暗殺・クーデターと不穏な単語のオンパレードだった。
でも不穏な中にも萌えはある!
それを糧に乗り切ります!
「とりあえず生き残ることを目標に! 頑張れ、俺!!」
普通に生きようとするもどこかネジがぶっ飛んでる系腐男子の、ドタバタコメディBLです。
(エッチなシーンが入る時は、タイトルの最後に「※」が付きますので背後にご注意ください)
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています
ぽんちゃん
BL
男爵家出身のレーヴェは、婚約者と共に魔物討伐に駆り出されていた。
婚約者のディルクは小隊長となり、同年代の者たちを統率。
元子爵令嬢で幼馴染のエリンは、『医療班の女神』と呼ばれるようになる。
だが、一方のレーヴェは、荒くれ者の集まる炊事班で、いつまでも下っ端の炊事兵のままだった。
先輩たちにしごかれる毎日だが、それでも魔物と戦う騎士たちのために、懸命に鍋を振っていた。
だがその間に、ディルクとエリンは深い関係になっていた――。
ディルクとエリンだけでなく、友人だと思っていたディルクの隊の者たちの裏切りに傷ついたレーヴェは、炊事兵の仕事を放棄し、逃げ出していた。
(……僕ひとりいなくなったところで、誰も困らないよね)
家族に迷惑をかけないためにも、国を出ようとしたレーヴェ。
だが、魔物の被害に遭い、家と仕事を失った人々を放ってはおけず、レーヴェは炊き出しをすることにした。
そこへ、レーヴェを追いかけてきた者がいた。
『な、なんでわざわざ総大将がっ!?』
同性婚が可能な世界です。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる