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第三章 エルフの里

第二十五話 ノア、初めての実戦をする

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「ふぅ。これくらいで良いかな?」

「そうね。このやり方はやりすぎない方がいいしね」

「うん。強くなった!」

 あれからノアはエンシェントドラゴンを五回倒した。それにより、ノアはLV.41になっていた。これなら目を離した隙に連れ去られるなんてことにはならないだろう。

「後は戦い方を教えないとね。レベルを上げただけでは勝てないことも多いから」

「確かにそうだな……」

 ステータスに大きな差があっても、技量のせいで拮抗した勝負になってしまうことも珍しくはない。前にシャオニンと戦った時がそうだ。シャオニンが生命力を代償にした身体強化をしたとしても、俺とのステータスの差は三倍以上あった。それなのにもかかわらず、シャオニンが何分間も俺と戦えたのは、技量に隔絶した差があったからだ。

「だが、具体的には何をやるんだ?」

「そうね……ゴブリンなどの弱い魔物を自力で倒させるところから始めましょう。実践が一番成長するからね」

「そうだな。じゃあ、グランの森に行くか。〈空間操作スペーショナル〉!」

 俺は〈空間操作スペーショナル〉でグランの森に転移した。

「よっと。じゃあ探すか……うん。ここから二百メートル先に六体いるな」

 グランの森に転移した俺は、即座にゴブリンがどこにいるのかを〈気配察知〉で確認した。

「分かったわ。じゃあ、行きましょう」

「うん。頑張る」

 俺達はゴブリンがいる場所に向かって歩き出した。



 暫く歩いたところで、俺達は六体のゴブリンを発見した。

「ノア、あれがゴブリンだ」

「う、うん」

 ノアは初めての本格的な戦闘に緊張しているようだ。

「ノアのステータスならあれくらい簡単に倒せる。だから、緊張せずに行きなさい」

「そうよ。ノアちゃんなら絶対勝てる」

「ああ。それに、何があってもパパが守ってあげるよ」

 俺はノアの頭をぽんぽんと叩くと、そう言った。

「うん。やってくる」

 ノアは白輝の剣を構えると、ゴブリンの群れに跳び出した。

「ギャギャ!?」

 ゴブリン達はノアに気づくと、ノアに棍棒を向けた。

「えいっ!」

 ノアは白輝の剣を横なぎに振った。

「ギャア!!」

 それだけで、四体のゴブリンが胴を両断されて死んだ。

「ギャ……」

 残り二体は、今の様子を見て、逃げ腰になっている。そこに、ノアの容赦ない一撃が入った。

「えいっ!」

「ギャ―!」

 二体のゴブリンは腹を裂かれて死んだ。

「よし。出来たよー!」

 ノアは返り血を大量に浴びた状態で、笑顔でそう言った。
 何かちょっとホラーを感じる。

「やっべ。俺のローブを貸しとけばよかった」

 最近忘れがちだが、俺のローブには体温調節や耐久力上昇の他に、汚れが付かない機能が付いている。

「あ、それなら安心して」

 クリスはそう言うと、懐から魔石のように見える半透明の石を取り出した。

「クリス、それは何だ?」

「これはお父さんと一緒に作った汚れを落とす魔道具だよ。高い再生力を持つ魔物の魔石に光属性の魔法をかけることで出来るから、結構簡単に作れるんだよ」

「なるほどな。魔道具はそうやって作られているのか……」

 俺は顎に手を当てると、クリスが持っている魔道具をじっと見つめた。

「これの使い方は、これに魔力を込めながら、これを汚れに当てるだけ」

「そうか。じゃあやるか――」

 そう言って、魔力を込め始めた瞬間、クリスに魔道具を取り上げられた。

「そんなに沢山魔力を込めたら壊れるよ! ユートの場合はほんの少し込めることをイメージすればいいわ」

「わ、分かった」

 俺は頭の中で”少し”を連呼しながら魔力を込めた。

「お、すげぇ……」

 魔道具に吸い込まれるようにして、汚れがどんどん取れていった。
 俺は、魔道具をあちこちに当てて、血の汚れを全て取った。

「よし。きれいになったな」

 俺は返り血が取れたノアを満足気に眺めた。

「うん。ありがとう。パパ」

 ノアはニコッと笑うと、俺に抱き着いた。うん。やっぱかわいいな。

「どういたしまして。あと、この魔道具を持ってきたのはクリ――ママだよ。だから、ママにもお礼を言おうな」

 俺はノアの頭を撫でると、そう言った。

「うん。ママ、ありがとう」

 ノアはクリスの方に行くと、クリスに抱き着いた。

「ふふっ どういたしまして」

 クリスは嬉しそうに微笑むと、俺と同じようにノアの頭を撫でた。

「ちゃんと戦えることは確認できたし、里に帰るか」

 俺はノアから白輝の剣を受け取ると、エルフの里に転移した。
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