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第三章 エルフの里

第四話 パーティー

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「君は何の使命を持って、この世界に生まれてきたんだ?」

 クリスの祖父からそう聞かれた時、俺は少し戸惑った。まあ、いきなりそんな質問をされたら、戸惑うのは仕方のないことだ。
 俺は数秒かけて、頭の中を整理してから答えた。

「そうですね……勇者の魔王討伐の手助けをすることですかね」

「なるほど……確かにそれなら、その強さにも納得だ。何せ魔王は、元神族だからな」

 クリスの祖父は、顎に手を当てながらそう言った。ていうか、何気に魔王が元神族であることをクリスの祖父は知っていた。そして、そのことにみんな頷いている辺り、どうやらこのことはハイエルフの中では常識のようだ。

「いきなりステータスを見てしまい、すまなかった。ああ、自己紹介を忘れていたね。私の名前はトリエスト・ワーレン。ハイエルフの祖でもある。そして、横にいるのが私の妻、ディーネ・ワーレン。彼女も、私と同じく、ハイエルフの祖だ」

 クリスの祖父――トリエストさんは、穏やかな口調で自己紹介をした。

「はい。私がディーネ・ワーレンです。此度は、孫のクリスティーナを助けてくださり、ありがとうございます」

 クリスの祖母――ディーネさんは、頭を下げて、礼を言った。

「ああ、どういたしまして……」

 俺はディーネさんの感謝に、頬を掻きながら答えた。

「よし、今夜は里のみんなでパーティーをするか」

「はい。里のみんなで、クリスが帰ってきたことを喜び、クリスを助けてくれたユートを歓迎しましょう」

「ええ、もうすぐ夕食の時間ですし、みんなを世界樹の元に集めましょう」

 こうして、俺たちはパーティーの準備をすることになった。俺は、パーティーで食べるオーク・キングの肉を提供した。エルフと聞くと、草食系のイメージがあったのだが、実際は人間と同じように肉もそれなりに食べるとのことだ。そして、クリスの家族も、楽しそうに、率先して準備をしていた。因みに、ノアは世界樹の周りで、エルフの子供たちと遊んでいた。


 完全に夜になったところで、パーティーが始まった。
 パーティー会場の中央にいるのはクリスの家族と、俺とノアだ。そして、その周りを三百人ほどのエルフが囲んでいる。
 そして、全員が集まったところでトリエストさんが口を開いた。

「本日! クリスティーナが無事帰還した!無事に戻ってきてくれたことに乾杯!」

「「「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」」」

 ここにいるみんなが、果実水の入ったコップを掲げ、乾杯した。

「おい! この肉美味いぞ」

「そいつはオーク・キングの肉だな。確か、クリスティーナ様を助けた人族が狩ったって聞いたな」

「なるほどな。最近人族に対して悪い印象しか持てなかったから、なんだか複雑な気分だな」

「まあ、人族だから必ず悪ってわけだはないからな。どんな種族にも、平等に良いやつ悪いやつはいるんだよ」

「ん? それじゃあお前は悪だな。この前、俺の靴の中に毛虫を入れやがって、あれ、毒持ってるやつだぞ」

「いや、それはちょっとした悪ふざけだって。つーか、だったらお前も俺の朝食を激辛にしただろ!俺が辛いの嫌いなの知ってるくせに」

「結局二人とも悪じゃねーか」

「「「「わははははっ」」」」

 みんな楽しく食事をしていた。そして、それは俺も同じだった。

「あ~やっぱオーク・キングの肉は最高だな~」

「はむ……おいしい」

 俺も、ノアと一緒に食事を楽しんでいた。やはり、オーク・キングの肉はいい。あの時、ちゃんと回収しておいて正解だった。

「ふむ……美味しいな。ユート殿にこれほどの食材を用意させてしまうとは……なんだか申し訳ないな」

「いえ、こちらこそ。オーク・キングの肉を、美味しく調理してくれてありがとう。俺は料理が苦手だからな」

 オーク・キングは里周辺に自生している食用の植物や、里で栽培している野菜と共に、巨大な鍋で煮込んである。そして、それをみんなが器によそって食べるという形式だ。
 王族であるクリスたちも、他の人と一緒によそいに行っている辺り、この里の王族は、いい意味で、王族らしくないと思った。

「まあ、楽しんでいるんだしいいか」

 俺はそう呟くと、引き続きパーティーを楽しんだ。
 こんな風に、みんなと一緒に食べることは何だかんだ初めてだ。前の世界では、クラスメイトが長期休みに焼肉屋で盛り上がっているのをLI●Eで見ながら、ネット上の友達とゲームをしていたからだ。
 それにしても、みんなと一緒に食べることがこんなにも楽しいだなんて……クラスメイトとも行っとけばよかったなあ……



「はぁ~疲れた……体力は満タンなのに……」

 結局、パーティーは日付が変わるまで続いた。その為、朝になると、ほとんどのエルフたちがパーティー会場で、酔っぱらったおじさんのように寝ていた。
 そんな中、トリエストさんとディーネさんの部屋には、クリスの家族がクリス含め、七人。そして、俺がいる。因みにノアは他の部屋でぐっすりと寝ている。
 みんな眠そうな顔をしているのに、何故ここに集まったのかと言うと、トリエストさんが、深刻そうな顔で、俺たちに伝えたいことがあると言っていたからだ。

 眠たさと深刻さが入り混じった、何とも言えない雰囲気の中、トリエストさんが口を開いた。
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