上 下
68 / 140
第二章

第十六話 第一回ダンジョン探索の成果

しおりを挟む
 ゲイリックさんたちと別れた俺は、真っ先に受付へと向かった。
 すると、受付嬢は俺を見て若干目を見開きつつも、愛想よく笑みを浮かべる。
 やっぱ、この見た目だと皆に驚かれるなぁ……
 まあ、そんなことはさておき、一体いくらになるのだろうか……

「これを売りに来ました」

 そう言って、俺はリュックサックの中及び空間収納スペーショナル・ボックスの中から、アークタラテクトの糸玉2つ、迷宮紅水晶メイズ・レッドクリスタルを2つ、迷宮蒼水晶メイズ・ブルークリスタルを1つ取り出した。
 受付嬢はその中の――特にアークスパイダーの糸玉に驚愕したような表情を見せるが、スチャッとズレかけた眼鏡を押さえて冷静になると、丁寧に査定を始める。
 そうして待つこと数分後、受付嬢が口を開いた。

「はい。アークスパイダーの糸玉は2つで銀貨4枚。迷宮紅水晶メイズ・レッドクリスタルは、1つが銀貨4枚で1つが銀貨3枚。迷宮蒼水晶メイズ・ブルークリスタルは1つで銀貨3枚になりますので、合計で14万セルになります。それでは、冒険者カードの提示をお願いします」

「どうぞ」

 予想通りの査定結果に納得しつつ、俺は受付嬢に冒険者カードを見せた。
 その後、受付嬢が確認記録等をした後、買取金である小金貨1枚と銀貨4枚が、俺の掌に収まった。

「ありがとうございました」

 そう言って、俺は受付を離れた。
 ……やった! これだけでもいい稼ぎだぞ!
 いや~ラッキーが重なったとは言え、現状既に迷賊から頂戴した金を含めれば22万セルになる。
 流石にこれは、ニヤけざるを得ない。
 俺は口元を押さえ、笑みが零れているのを感じながら、上へと続く螺旋階段を上り始めた。
 上ってみると、意外と長い螺旋階段を上がり続け、遂に地上に到達した。
 チラリと横を見てみると、窓から差し込む光が、俺の顔を照らしてくる。
 6日ぶりの陽光ということもあってか、流石に眩しく感じるな……
 俺は咄嗟に手傘で目元を覆う。
 すると、6日前に舐め――心配してくれた、男性職員と目が合った。

「お、あの時の子供。生きてたのか……!」

 そんな驚きの言葉に、俺は内心「死んでると思ってたのかよ……」と思ったが、流石にそれは言葉に出さない。
 冷静に考えてみれば、いくらDランク冒険者とは言え、子供が1人でダンジョンに入ったのだとしたら、生きている方が確率的には低いだろう。
 まあ、俺の場合は普通じゃ無いし、そもそも1人で入った訳ではないから、そこには当てはまらないが……

「いやいや、生きてますよ」

 収入がうまうまで、機嫌の良い俺は、その言葉に笑みを浮かべて返した。
 すると、彼は「お、おう……」と気まずそうに視線を逸らしたのであった。
 その後、俺はそのまま扉に手をかけると、ダンジョン管理所の外に出た。そして、即刻宿に行ってベッドダイブしたい気持ちを押さえながら、魔石ギルドへ赴く。

「魔石を売りに来ました」

 魔石ギルドに到着した俺は、受付に直行すると、受付嬢に用件を告げる。
 そして、ダンジョンで手に入れた大量の魔石が入った革袋をいくつもドサッと目の前に置いてやった。
 俺がDランク冒険者であることを知らない彼女は、その量と俺の顔を交互に見比べてドン引きするが、査定していくうちに、それは直ぐに収まって行った。
 恐らく、中に入っている物が全てダンジョンで出現する魔物だと分かってきたからだろう。荷運びポーターと思えば、自然と納得できるだろうし。
 やがて査定が終わったのか、魔石を奥に持って行った受付嬢が、数枚の効果を携えて戻って来た。

「こちら、買取金の6万8600セルです」

 そう言って、手渡される銀貨6枚小銀貨8枚銅貨6枚。
 俺はそれらを確認した後、革袋と一緒にリュックサックの中に放り込むと、礼を言ってその場を立ち去った。

「……いや~いい稼ぎだった……!」

 魔石ギルドの外に出た俺は、感極まった声音で思わずそんな言葉を口にした。
 初めてのダンジョン攻略。”炎狼の牙”との共闘。
 それにより得られたのはいくつかの有用な知識。
 そして、28万8600セルの大金だった。
 6日でこれだけ稼げたのだ!
 これ以下の金額を稼ぐのに、1か月も費やしていた俺は何だったんだー!と思わず叫びたくなる。
 まあ、今回のはラッキーにラッキーが重なった結果のような感じがしなくもない為、次回もこれだけ稼げるとは考えない方が良いだろう。
 さて、こうして6日間ダンジョン攻略をした訳だが、レイン殿下との会談までは、まだ14日もある。後もう1回ぐらいは、探索しても大丈夫だろう。
 勿論、次は1人で。
 ゲイリックさんたちとの探索で得た知識で、よりパワーアップした俺なら、そこそこ深くまで潜っても大丈夫!
 てなわけで、これから物資を揃えて、明日にでも行くとしよう。
 そこそこガッツリ探索した次の日にまた探索に行くとか、Aランク冒険者でもため息を吐くような所業だろうが……ま~気にしな~い。気にしな~い。
 無論無理するつもりはさらさらないが、割と欲望のままに生きたいのだ!俺は!

「いや~楽しみだ」

 そう言って、楽しそうに笑みを浮かべた俺は、明日から始まる探索に向けて、必要な物資を買い揃えに向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME
ファンタジー
旧題:捨てられ従魔の保護施設! 冒険者として、運送業者として、日々の生活に職業として溶け込む従魔術師。 けれど、世間では様々な理由で飼育しきれなくなった従魔を身勝手に放置していく問題に悩まされていた。 そんな時、従魔術師達の間である噂が流れる。 クリノリン王国、南の田舎地方──の、ルルビ村の東の外れ。 一風変わった造りの家には、とある変わった従魔術師が酔狂にも捨てられた従魔を引き取って暮らしているという。 ─魔物を飼うなら最後まで責任持て! ─正しい知識と計画性! ─うちは、便利屋じゃなぁぁぁい! 今日もルルビ村の東の外れの家では、とある従魔術師の叫びと多種多様な魔物達の鳴き声がぎゃあぎゃあと元気良く響き渡る。

ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん

月猫
ファンタジー
異世界へ拉致された主人公。目が覚めた先はボロボロの世界樹の中だった?! 迷宮の主となった主人公は、ダンジョンの能力【創造】により全く新しい”モノ”を世界に作り出し、現状の打破に挑む。 新しい魔物を創ったり、予想外な成長に困惑したり。 世界樹の愚痴を聞いたり、なだめたり。 世界樹のため、世界のため、世界樹の治療と環境改善を目指し、迷宮はどんどん大きくなる。そんなお話。 始めは少々危険な場面がありますが、ダンジョンが成長してからはその様な場面は少なくなり、周りの生物の方がダンジョンに抗う感じになります。 俺TUEEEならぬ、ダンジョンTUEEEもの。チート能力ならぬ、チートダンジョンの予定。 (チート能力者が居無いとは言っていない) 初投稿です。山なし谷なし作品ですが、暖かい目でみてください。 異世界なのだから、元の世界の常識が当てはまらなくても、おかしくないのでは? をコンセプトに、スキルやら魔法やらの仕組みを表現できたらと思っています。 ※「小説家になろう」にも掲載 ※ストックが切れたら、更新が遅くなると思います、ご容赦下さい

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...