44 / 140
第一章
第四十四話 ガリア君崩壊の兆し
しおりを挟む
ガリアの不正証拠を難なく手に入れた俺は、次の行動に移る。
まず、大量に手に入れた不正証拠だが、俺には権力者への伝手が絶望的なまでにない為、このままでは全然活用できずに終わってしまう。
一応ジニアスさんに渡せば、いい所へ持って行ってはくれるだろうけど……それでもちょっとキツイかな。
忘れがちだが、ガリアって侯爵家当主だからね。それも、かなり力のあるところ。
だから、ここは数の暴力と権力で、有無を言わさず終わらせるとしよう。
作戦はいたってシンプル!
スライムを使って王都内にいる有力貴族たちの部屋に、これらの書類を送ってあげる。ただそれだけ!
ふっふっふ。何せ、俺は王城内にも侵入できたのだ。貴族の屋敷に侵入することぐらい、造作もない。
……嘘です! 結構大変でした!
特に上級貴族はヤバかった……!
「じゃ、名簿を作るか」
そう呟くと、俺はリュックサックから鉛筆を取り出した。
そして、全ての不正証拠の書類の裏に、これから送る貴族家の名前を書き始めた。
これを受け取った貴族たちが、直ぐに行動できるように――
◇ ◇ ◇
「はい、完成っと」
手をパキパキと鳴らしながら俺は書類を見やる。
ふと、外を見てみると、空は薄っすらと青白く光っており、もうすぐ夜が明けることを物語っていた。
「ね、眠いぃ……」
夜通し書き続けていたせいで、めちゃくちゃ眠い。疲労が半端ない。
「きゅ~? きゅきゅきゅ!」
ネムは、俺を励ますように鳴き声を上げる。
うん。ありがとう。
だが、流石に眠い……
「……いや、流石にここで寝るのは避けたい……!」
そろそろガリアも異変に気づいている頃だろうし、俺に矛先が向く前にここから避難しないと。
そう思った俺は、即座に荷物を纏めると、空間転移で、王都ティリアン――のちょっと前に暇つぶしで滅ぼした犯罪組織の地下アジトに転移した。ここにいた奴ら、金を沢山持ってたんだけど、俺ってつい最近までスライムに物を持たせた状態で召喚して持ってこさせる……という発想が無くてさ。
本には載ってたけど、見落としてたっていうね……
結局気が付いた時には誰かに根こそぎ持ち去られていた。
悔しい!
だから、今後制圧出来そうな犯罪組織を見つけたら、凸ってみようと思う。
そして、金を回収するのだ!
そんな他人が聞いたら正気を疑われそうなことを思いながら、真っ暗なアジトに転移した俺は、光球で明かりをつける。
「ん~……見た感じ安全そうだね。それじゃ、入り口やその周辺に厳戒態勢を敷いて、俺はゆっくり寝るとしよう」
そう言うと、俺はリュックサックを地面に置いた。そして、ひんやりとした硬い石の地面に寝転がる。
「きゅきゅきゅ!」
すると、ネムが俺の頭の下に入り込み、枕になってくれた。
流石ネム! 気が利く~!
「んじゃ、寝るか」
そう言って、俺は光球を消すと、直ぐに意識を手放した。
◇ ◇ ◇
シンが不正証拠の書類を根こそぎ奪ってから、少し経った頃。
フィーレル侯爵邸執務室にて。
「……あー疲れて来た。そろそろ吸わんと」
書類を書いていたガリアは途端に手を止めると、イラついたように後髪を掻く。
これ以上は禁断症状が出てきそうだと判断したガリアは、いつものように引き出しの鍵を解錠し、その引き出しを引く。
そして、戦慄する。
「な、ない!」
ない。ないのだ。
数時間前まであったキルの葉が、無くなっているのだ……!
しかも、その他機密書類も消えている。
「な、どこへ!?」
さしものガリアも狼狽し、焦りを見せる。
「だ、誰か……いや、損傷はないし、無理やり解錠された痕跡も無い。となると、俺がどこか別の所に置いたのか……?」
ここ最近、物忘れが頻発しているのを思い出したガリアは、咄嗟にそうだと判断すると、執務室の中を捜索しにかかる。
他の引き出しを、タンスの中を、植木の隙間を、絵画の裏を――
捜して捜して、とにかく捜しまくった。
だが――
「見つからん」
一向に見つからない。
あれが事情を知らない第三者の目に触れるのは避けたい。
大抵のことなら無理やりもみ消すこともできるが――その選択はあまり取りたくない。
「くそ! くそ! くそ! どうしたらいいんだ……ッ!」
ガリアの声は、執務室に虚しく響き渡るのであった。
まず、大量に手に入れた不正証拠だが、俺には権力者への伝手が絶望的なまでにない為、このままでは全然活用できずに終わってしまう。
一応ジニアスさんに渡せば、いい所へ持って行ってはくれるだろうけど……それでもちょっとキツイかな。
忘れがちだが、ガリアって侯爵家当主だからね。それも、かなり力のあるところ。
だから、ここは数の暴力と権力で、有無を言わさず終わらせるとしよう。
作戦はいたってシンプル!
スライムを使って王都内にいる有力貴族たちの部屋に、これらの書類を送ってあげる。ただそれだけ!
ふっふっふ。何せ、俺は王城内にも侵入できたのだ。貴族の屋敷に侵入することぐらい、造作もない。
……嘘です! 結構大変でした!
特に上級貴族はヤバかった……!
「じゃ、名簿を作るか」
そう呟くと、俺はリュックサックから鉛筆を取り出した。
そして、全ての不正証拠の書類の裏に、これから送る貴族家の名前を書き始めた。
これを受け取った貴族たちが、直ぐに行動できるように――
◇ ◇ ◇
「はい、完成っと」
手をパキパキと鳴らしながら俺は書類を見やる。
ふと、外を見てみると、空は薄っすらと青白く光っており、もうすぐ夜が明けることを物語っていた。
「ね、眠いぃ……」
夜通し書き続けていたせいで、めちゃくちゃ眠い。疲労が半端ない。
「きゅ~? きゅきゅきゅ!」
ネムは、俺を励ますように鳴き声を上げる。
うん。ありがとう。
だが、流石に眠い……
「……いや、流石にここで寝るのは避けたい……!」
そろそろガリアも異変に気づいている頃だろうし、俺に矛先が向く前にここから避難しないと。
そう思った俺は、即座に荷物を纏めると、空間転移で、王都ティリアン――のちょっと前に暇つぶしで滅ぼした犯罪組織の地下アジトに転移した。ここにいた奴ら、金を沢山持ってたんだけど、俺ってつい最近までスライムに物を持たせた状態で召喚して持ってこさせる……という発想が無くてさ。
本には載ってたけど、見落としてたっていうね……
結局気が付いた時には誰かに根こそぎ持ち去られていた。
悔しい!
だから、今後制圧出来そうな犯罪組織を見つけたら、凸ってみようと思う。
そして、金を回収するのだ!
そんな他人が聞いたら正気を疑われそうなことを思いながら、真っ暗なアジトに転移した俺は、光球で明かりをつける。
「ん~……見た感じ安全そうだね。それじゃ、入り口やその周辺に厳戒態勢を敷いて、俺はゆっくり寝るとしよう」
そう言うと、俺はリュックサックを地面に置いた。そして、ひんやりとした硬い石の地面に寝転がる。
「きゅきゅきゅ!」
すると、ネムが俺の頭の下に入り込み、枕になってくれた。
流石ネム! 気が利く~!
「んじゃ、寝るか」
そう言って、俺は光球を消すと、直ぐに意識を手放した。
◇ ◇ ◇
シンが不正証拠の書類を根こそぎ奪ってから、少し経った頃。
フィーレル侯爵邸執務室にて。
「……あー疲れて来た。そろそろ吸わんと」
書類を書いていたガリアは途端に手を止めると、イラついたように後髪を掻く。
これ以上は禁断症状が出てきそうだと判断したガリアは、いつものように引き出しの鍵を解錠し、その引き出しを引く。
そして、戦慄する。
「な、ない!」
ない。ないのだ。
数時間前まであったキルの葉が、無くなっているのだ……!
しかも、その他機密書類も消えている。
「な、どこへ!?」
さしものガリアも狼狽し、焦りを見せる。
「だ、誰か……いや、損傷はないし、無理やり解錠された痕跡も無い。となると、俺がどこか別の所に置いたのか……?」
ここ最近、物忘れが頻発しているのを思い出したガリアは、咄嗟にそうだと判断すると、執務室の中を捜索しにかかる。
他の引き出しを、タンスの中を、植木の隙間を、絵画の裏を――
捜して捜して、とにかく捜しまくった。
だが――
「見つからん」
一向に見つからない。
あれが事情を知らない第三者の目に触れるのは避けたい。
大抵のことなら無理やりもみ消すこともできるが――その選択はあまり取りたくない。
「くそ! くそ! くそ! どうしたらいいんだ……ッ!」
ガリアの声は、執務室に虚しく響き渡るのであった。
605
お気に入りに追加
1,247
あなたにおすすめの小説
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
貴方様の後悔など知りません。探さないで下さいませ。
ましろ
恋愛
「致しかねます」
「な!?」
「何故強姦魔の被害者探しを?見つけて如何なさるのです」
「勿論謝罪を!」
「それは貴方様の自己満足に過ぎませんよ」
今まで順風満帆だった侯爵令息オーガストはある罪を犯した。
ある令嬢に恋をし、失恋した翌朝。目覚めるとあからさまな事後の後。あれは夢ではなかったのか?
白い体、胸元のホクロ。暗めな髪色。『違います、お許し下さい』涙ながらに抵抗する声。覚えているのはそれだけ。だが……血痕あり。
私は誰を抱いたのだ?
泥酔して罪を犯した男と、それに巻き込まれる人々と、その恋の行方。
★以前、無理矢理ネタを考えた時の別案。
幸せな始まりでは無いので苦手な方はそっ閉じでお願いします。
いつでもご都合主義。ゆるふわ設定です。箸休め程度にお楽しみ頂けると幸いです。
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
聖女の辞め方〜庶民聖女は今日も元気に規律を破る〜
イセヤ レキ
恋愛
神殿による管理のもと、治癒の力を持った神に選ばれし聖女たちは、今日も健気に奉仕する。
……というのは、庶民が抱く幻想だ。
神殿の内部は聖女とその護衛騎士が夜な夜な交わるほどに堕落し、寄付金次第で患者の優先順位をつけるよう腐敗している。
また、神殿は寄付金を目当てに、聖女たちは治癒の力が枯渇することを恐れて自らの力を出し惜しみし、人々を完治させることはないのである。
そんな中、元々庶民であるのに膨大な治癒力を持ったとして神殿に保護された聖女のシアナは、一刻も早く聖女を辞めるために、護衛騎士のウォリスを連れて、夜な夜な街に繰り出すのであった。
※全17話、完結済
※脇で本編に全く絡まない同性愛あります
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
vamps
まめ太郎
BL
当たり前のように人間と吸血鬼(vamps)が共存する世界。
大学生の草場アレンは自分が吸血鬼であることがずっとコンプレックスだった。
そんな彼に吸血鬼の能力が最大限に開花する出来事が起こり……。
まめ太郎初めてのファンタジー作品です。
私の書くファンタジーですから、本格ではございません。
色々ご都合主義がまかり通りますので、地雷の多い方お気をつけください。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる