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第一章
第四十一話 束の間の休息(?)
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いつものように夕食を食べ終えた俺は部屋に戻った。
そして、ごろりとベッドに転がる。
「あー今日は頑張った」
何せ魔物を500匹以上も倒したからね。
ただ、あれからちょーっとやらかしてることに気付いてさ。
俺、倒すのに満足しちゃって、死体から討伐証明部位と魔石を取るの、忘れちゃった……!
いや~これはマジで痛い。もしちゃんと取っていれば、相当な金額になっていただろうに。
「……あ、でも取ったら、人間が倒したってバレちゃうな」
ジニアスさんは凶暴化した魔物が同士討ちしたことにしてくれると言っていた。
つまり、魔石と討伐証明部位を取ってしまったら、どうやってもその説明が出来なくなってしまう。
てことは、俺がその2つを取らなかったのは、正しい判断ということなのか!
ふっ……俺、天才だな。
「あ、そういや召喚したスライムたちを戻さないと」
昼間召喚した30万匹のスライムは、王都ティリアンを中心としたいくつかの街とその近辺にある森から均等に召喚したのだ。
だから、さっさとそっちへ戻さなければならない。
戻す方法は、さっきやったように、スライムを召喚する能力をスライム越しに使うってやつだ。
祝福は魔力を使わないから、こんな感じでホイホイ使うことが出来る。
だが、何のデメリットも無しにいくらでも使えるわけではなく、大体10時間ぐらいぶっ通しで使うと、唐突に疲労で倒れる。そして、次の日まで起き上がることすら億劫に感じた。
ま、そんなに使うことは普通無いけどね。
「さーて、やるか」
俺は早速王都内にいるスライムに視覚を移すと、そこにさっき召喚したスライムたちをどんどん召喚し、散開させる。
そして、数が戻ってきたら、また別の場所へと移り、召喚する。
それを何度も何度も繰り返し、30分ほどで元通りになった。
「はー頑張った」
俺は暇つぶしに王都内をスライムの視覚を借りて散策しながら、そう言った。
にしても、王都は随分と発展してるよな。そして広い。大体シュレインの5倍はあると思う。
「王城も綺麗だなぁ……」
月明かりに照らされた白亜の城。それが、王族の住まうグラシア城なのだ。
因みに、あそこへ潜入させているスライムは……いる。
運び込まれる荷物に紛れて、何匹が入れたんだよね。
因みに、入れた理由は、王城内を見学したかったから……という、いかにも子供らしい理由だ。
だが、あそこは警備が厳重で、魔力探知や熱源探知が一重二重と張り巡らされており、魔力がほとんどなく、熱も発しないスライムですら、感知出来てしまう程だ。
それを突破すべく、俺が送り込んだのは当然変異種――僅か5ミリメートル程の超小型スライムだ。
目の前にいても、大抵の人なら目を凝らさないと分からず、何かしらの感知能力がある人でも、埃と勘違いしてしまうようなそいつによって、王国最高峰の警備システムが正面から破られたのだ。
因みに現在、そいつらは王城内の適当な空き部屋に住まわせている。
いや~見れるところは全て見たからね。
無論、見れてないところも多々あるが、流石にそこは行ったら確実にバレるんだよなぁ……
「んー……何か面白いのないかなー?」
そんなことを言いながら、俺は王都内のスライムの視覚を次々と見る。
一応”テイム”の鍛錬になるし、偶に面白いことしている奴もいるから、暇つぶしには丁度いいのだ。
「……あ、カツアゲしてる」
路地裏でカツアゲしている悪い奴を発見!
即、スライム越しにスライムを召喚する能力を使って、その男の首に少し強めの溶解液を持つスライムを召喚!
そして、考える暇さえ与えず溶解液を出させた後、即座に元の場所へと戻す!
そうすることで――
「な、なんだ!? が、ぐああっ!!」
付着した溶解液で首周りの皮膚が溶け、激痛が走る。
男は首裏を抑えるが、それで治るわけもなく、ヒリヒリとした痛みで苦悶の声を上げる。
これではもう、カツアゲをしている場合ではない。
「い、今の内に……」
その隙に、カツアゲされていた男が逃げ出した。
よし。完璧だ。
カツアゲぐらいなら、別に殺す必要もない。首周りの皮膚を軽く溶かす程度で、勘弁するとしよう。
「にしても、今のは中々上達してたな」
スライム越しに発動したにも関わらず、あそこまで正確な位置に召喚し、適切な量だけ溶解液を出させる。そして、最速で元の場所に戻す。
一昨日やった時と比べて、相当上達しているのが分かる。
「うーん。今日の成果が早速出ているのかな?」
今日は久々にガチの本気で戦った。そのお陰で戦闘勘というものがよりついたのではないか?と思う。
「ただ、ギリギリの戦いはあまりしたくないんだよなぁ……」
毎日あんな戦いしてたら、精神が持たない。過労死する未来がよーく見える。
「まあ、俺はまだ9歳だ。焦りすぎるのは良くないな」
前世のせいで忘れがちだが、今の俺は9歳なんだ。
普通なら、友達と仲良く平和に遊んでいるはずだ。
今の俺みたいに、毎日命の取り合いをしている9歳児なんて、全体の5パーセントほどしかいない。
……いや、逆に言えば5パーセントもいる、だな。
そこはこの世界が日本――いや、地球と比べてだいぶ殺伐としているのが原因だから仕方ないか。
そして、ごろりとベッドに転がる。
「あー今日は頑張った」
何せ魔物を500匹以上も倒したからね。
ただ、あれからちょーっとやらかしてることに気付いてさ。
俺、倒すのに満足しちゃって、死体から討伐証明部位と魔石を取るの、忘れちゃった……!
いや~これはマジで痛い。もしちゃんと取っていれば、相当な金額になっていただろうに。
「……あ、でも取ったら、人間が倒したってバレちゃうな」
ジニアスさんは凶暴化した魔物が同士討ちしたことにしてくれると言っていた。
つまり、魔石と討伐証明部位を取ってしまったら、どうやってもその説明が出来なくなってしまう。
てことは、俺がその2つを取らなかったのは、正しい判断ということなのか!
ふっ……俺、天才だな。
「あ、そういや召喚したスライムたちを戻さないと」
昼間召喚した30万匹のスライムは、王都ティリアンを中心としたいくつかの街とその近辺にある森から均等に召喚したのだ。
だから、さっさとそっちへ戻さなければならない。
戻す方法は、さっきやったように、スライムを召喚する能力をスライム越しに使うってやつだ。
祝福は魔力を使わないから、こんな感じでホイホイ使うことが出来る。
だが、何のデメリットも無しにいくらでも使えるわけではなく、大体10時間ぐらいぶっ通しで使うと、唐突に疲労で倒れる。そして、次の日まで起き上がることすら億劫に感じた。
ま、そんなに使うことは普通無いけどね。
「さーて、やるか」
俺は早速王都内にいるスライムに視覚を移すと、そこにさっき召喚したスライムたちをどんどん召喚し、散開させる。
そして、数が戻ってきたら、また別の場所へと移り、召喚する。
それを何度も何度も繰り返し、30分ほどで元通りになった。
「はー頑張った」
俺は暇つぶしに王都内をスライムの視覚を借りて散策しながら、そう言った。
にしても、王都は随分と発展してるよな。そして広い。大体シュレインの5倍はあると思う。
「王城も綺麗だなぁ……」
月明かりに照らされた白亜の城。それが、王族の住まうグラシア城なのだ。
因みに、あそこへ潜入させているスライムは……いる。
運び込まれる荷物に紛れて、何匹が入れたんだよね。
因みに、入れた理由は、王城内を見学したかったから……という、いかにも子供らしい理由だ。
だが、あそこは警備が厳重で、魔力探知や熱源探知が一重二重と張り巡らされており、魔力がほとんどなく、熱も発しないスライムですら、感知出来てしまう程だ。
それを突破すべく、俺が送り込んだのは当然変異種――僅か5ミリメートル程の超小型スライムだ。
目の前にいても、大抵の人なら目を凝らさないと分からず、何かしらの感知能力がある人でも、埃と勘違いしてしまうようなそいつによって、王国最高峰の警備システムが正面から破られたのだ。
因みに現在、そいつらは王城内の適当な空き部屋に住まわせている。
いや~見れるところは全て見たからね。
無論、見れてないところも多々あるが、流石にそこは行ったら確実にバレるんだよなぁ……
「んー……何か面白いのないかなー?」
そんなことを言いながら、俺は王都内のスライムの視覚を次々と見る。
一応”テイム”の鍛錬になるし、偶に面白いことしている奴もいるから、暇つぶしには丁度いいのだ。
「……あ、カツアゲしてる」
路地裏でカツアゲしている悪い奴を発見!
即、スライム越しにスライムを召喚する能力を使って、その男の首に少し強めの溶解液を持つスライムを召喚!
そして、考える暇さえ与えず溶解液を出させた後、即座に元の場所へと戻す!
そうすることで――
「な、なんだ!? が、ぐああっ!!」
付着した溶解液で首周りの皮膚が溶け、激痛が走る。
男は首裏を抑えるが、それで治るわけもなく、ヒリヒリとした痛みで苦悶の声を上げる。
これではもう、カツアゲをしている場合ではない。
「い、今の内に……」
その隙に、カツアゲされていた男が逃げ出した。
よし。完璧だ。
カツアゲぐらいなら、別に殺す必要もない。首周りの皮膚を軽く溶かす程度で、勘弁するとしよう。
「にしても、今のは中々上達してたな」
スライム越しに発動したにも関わらず、あそこまで正確な位置に召喚し、適切な量だけ溶解液を出させる。そして、最速で元の場所に戻す。
一昨日やった時と比べて、相当上達しているのが分かる。
「うーん。今日の成果が早速出ているのかな?」
今日は久々にガチの本気で戦った。そのお陰で戦闘勘というものがよりついたのではないか?と思う。
「ただ、ギリギリの戦いはあまりしたくないんだよなぁ……」
毎日あんな戦いしてたら、精神が持たない。過労死する未来がよーく見える。
「まあ、俺はまだ9歳だ。焦りすぎるのは良くないな」
前世のせいで忘れがちだが、今の俺は9歳なんだ。
普通なら、友達と仲良く平和に遊んでいるはずだ。
今の俺みたいに、毎日命の取り合いをしている9歳児なんて、全体の5パーセントほどしかいない。
……いや、逆に言えば5パーセントもいる、だな。
そこはこの世界が日本――いや、地球と比べてだいぶ殺伐としているのが原因だから仕方ないか。
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