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第四章。
4
しおりを挟むナタリアの畑は、農作物でもっさもさとしていた。
未来永劫の豊穣とは、凄まじかった。
どれもとても状態が良くで豊作だ。
村にとっては嬉しい悲鳴である。
そして農作物の管理にあたっていたノアに、まとまった休暇を勧められた。
「ノアはずっと働いてきたんだ」
「病み上がりじろう!」
「何かあれば声さかけるて」
「わしらを信用せんかー!」
と言われてしまい、ありがたく休暇を頂戴することになった。
次いで、地竜に会いに森林へ向かう。
ヤポコットと果物を贈り物にする。
「ノア、おいで」
「?」
呼ばれるままにリリーに近づくと、膝裏に腕を通され背中を抱えられた。
何とも恥ずかしい格好に、ノアは少し慌てた。
「なになに??」
「捕まって」
素直に首元に手を回すと、リリーの灰色の羽はバサバサと羽ばたき、ノアはふわりふわりと感じたことのない浮遊感に更にリリーにしがみついた。
有翼人のリリーに空を飛ぶなんて造作もないことだ。
「わわっ!!」
まだまだ日差しは強く、温かい夏の風を切ってリリーは飛び立った。
「リリー!凄い!飛んでるよ!!」
見たことのない雄大な景色だ。
かなり距離のある隣の村まで見渡せている。
地竜の住処はすぐそこなのに、随分と空高くのぼっているような気がするのは、きっとこの景色をノアに見せてくれたからだ。
「ありがとう、リリー」
リリーはふっと笑みを浮かべた。
それでも近距離に変わりはない。
短い空中散歩はあっという間に終わってしまった。
空から降り立つと、地竜のまわりには子供達の姿があった。
しっぽを滑り台にしたり、くっついたりとなかなかの大人気だ。
「地竜さん、こんにちは」
「ノアと…ノアの番か」
「リリーだよ」
「知っている」
地竜はなんだか、リリーに素っ気ない。
リリーは特に気にした様子もないから、気のせいなのだろうか?
「これ、村で採れた野菜と果物だよ。地竜さんは普段何を食べるの?何が好きなの?」
「我の1番の好物は、ノアの魔力」
「魔力?どうすれば与えられる?」
「触れてくれれば流れ込む」
「わかった!」
ノアは地竜の鼻の上あたりに手を伸ばしさわさわと撫でた。
触れるのははじめてだ。
ほんのりヒヤッとしていて鱗はるつるしている。
はるほどなるほどだ。
夏の陽射しに地竜のにひんやりとした身体は、涼むのに気持ち良いのだろう。
子供達は正直だ。
それに、何よりも怖がらずに地竜に接してくれるのも、地竜がそれを受け入れてくれるのも嬉しい。
「もう、いいだろう」
リリーはノアの手をとった。
何だか複雑そうな表情だ。
「美味だ、馳走になった」
「ううん、どういたしまして!」
改めて森林を見渡せば、まるで知らない場所のように見えてしまう。
樹々の葉は青々しく茂り育ちようが凄まじい。
近所の森林はもはや、木漏れ陽に包まれた大森林だ。
「すごいね、大地の力が満ち満ちてる…」
「地の妖精の加護だ、我とも相性がいい。常に流れ込んでくる」
「うん、良かった!」
ヤポック村は、地竜と地の妖精に守られる豊かな村。
寂れた村と呼ぶ者は、誰もいない。
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