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第三章。
ロイへの干渉。
しおりを挟む知らない場所に寝かされていて、ロイが僕の手を握りながらベッドに突っ伏していた。
「ここは神殿の中か…?」
身体がだるくてまだ眠い…何が起きたのか思い出すことができない。
「ヒール…、ヒール…、キュアコンディション…」
駄目だった、魔法が効かない。
魔法の力が及ばない症状だということは、僕は何か失敗してしまったんだろうか。
「ん、…起きたのか?」
「うん。何が起こったのか思い出せない…」
「あぁ…、装備を脱いだら倒れたらしい…」
「ん…?装備を……?」
しばし考えたあとに、思い出した。
そうだ、神殿の神子だ。
ロイに知られないうちにとっとと済ませて、イルネージュに向かおうとしてたのに。
ロイにも知られてしまったか。
「…謝らないぞ。致し方ないことだったんだ」
「神子と寝ることがか…?それとも、俺を神殿に置いてくことがか…?」
あああ…ロイが怒っている。
これはもう弁解の余地はないな、それだけのことをしでかしたんだ。
「あいつと寝ようとしたのは、ロイをここで守ってもらうためだ。それと…イルネージュには1人で行くつもりだった…」
「随分と勝手なことを…」
「失いたくないからだよ。二度と。ましてや僕を、お前僕を庇って死んだんだぞ…、そんなの冗談でも……」
「でも、生きてる」
「それは…、僕が…」
不確定要素の多い魔法で蘇らせたからだ。
「それに…、もう……次があるかわからないんだぞ…」
「もし死ぬことがあるなら、俺はお前のそばがいい、アキラを守って死ねるなら本望だろ?それに、この魔法は不安定なんじゃないのか…?あのクソ神子は禁忌だと、使えなかったと言っていた」
「それなら余計に…!」
「アキラには悪いけどな、もしこの魔法が不安定なもので、お前がイルネージュに渡ったあとに効果が切れたとしたら、俺はこんなとこでお前の目の届かない場所で1人で死ぬことになるのか?」
この男は、なんてことを言い出すんだよ…、そんなこと言われたら置いてけないじゃないか。
僕は大きく溜息をついた。
「酷い男だな…」
「どっちがだよ」
「その変わり、ひとつだけ約束してくれよ。二度と僕を庇ったりしてくれるなよ!これは絶対だ!!」
「無理だな。守れない約束はかわせない」
「お前な……」
ロイは僕の手を両手で包んだ。
僕より大きくて、めいっぱい温かいこの手が好きなんだ。
ロイが好きなんだ、そう意識しはじめてから思いがだだ漏れてしまう。
それにロイのこの琥珀色キラキラする瞳だって好きなんだ。
もう仄暗く落ちる様も見たくないんだ。
「駄目だな…僕は。女の子が好きだったのに…、お前最後まで責任とれよ。僕より先に死ぬな、僕を置いてくな…本当に二度とごめんだからな…」
「善処しよう、それになアキラ」
ロイは自分が僕と同じイルネージュの世界の魔法を使えるようになったと聞かせる。
信じ難いけれど、生き返らせたことでロイがイルネージュに干渉してしまったということか?
ゲームの世界の話を、どう説明すればいい…。
「それは…」
「何にせよ、戦う術を手に入れたということだ」
禁忌の反動に、副産物、責任を取るべくは僕のほうじゃないか…、僕等神子は神子として召喚される。
この世界の人間で後天的に神子と同等の力を手にいれるなんてあるのか?
いや…そもそも後天性も何も一度死んでるわけだし…、駄目だ、意味がわからない。
ただロイ自身を不確定要素の多い存在にしてしまったのは、僕だ…、取り返しがつかない…。
ロイの指が僕の眉間をぐりぐりと押し込んだ。
「そう難しく考えるな…」
「でも…」
「俺は後悔していない」
「それは、まだ─」
「大丈夫だ」
返す言葉がない。
この世界に神様がいるなら、この不確定要素の多い男を、禁忌と見做すことなくどうか見過ごしてくれ。
僕は切に祈った。
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