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初めてのバイトの日
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「今日からよろしくお願いします」
ついに、この日が来た。
というのは大袈裟かもしれないが、真理愛ちゃんの初バイトの日である。
相変わらず可愛いなあ。これから人気店員になって、この店の売上に貢献してくれるに違いない!
「よろしくね! で、ご存知だと思うけど、こちらがウチのバイトの伏木逢莉子」
「よろしくお願いします」
「はーい、よろしくー」
うわ、超塩対応...ホントに仲良くないんだな...。
「え、えーっと、今日は俺らの手伝いしてくれれば大丈夫だから! いろいろ指示は出すからよろしくね! とりあえず、逢莉子に更衣室の場所教えてもらって、制服に着替えてもらってもいいかな?」
「分かりました。伏木さん、よろしくお願いします」
「アタシら同い年だし、なんなら同じ大学の同じ学科なんだから、敬語じゃなくていいよ。とりあえず着替える場所案内するから」
「わかった」
これから、2人が仲良くバイトしてくれたらいいのだが...。
2人を見送り、俺は真理愛ちゃんの制服姿を楽しみにしながら厨房で待つことにする。
◇ ◇ ◇
「着替えるとこはここね。ロッカーはここ使って」
「わかった」
喜多山さんとは普段大学で話すこともないから、なんか気まずいな。
「ねえ、なんでウチでバイトしようと思ったの」
間が持たなさそうだし、気になってたこと聞いておく。
「兄が米田さんと知り合いで、バイト紹介してもらったから」
「縁故ってわけね。アタシがここでバイトしてるの知ってたの?」
「面接の時に知った。でも、話す機会なくて言えなかった。ごめん」
「別に謝らなくていいけど。今まで大学で関わりなかったけどさ、せっかく同じバイトなわけだしよろしく」
「こちらこそよろしく。伏木さんって、優しいんだね」
いまのアタシの発言の、どこが優しかったんだろ。
「べつに、普通だと思うけど。制服はこれね。着替え終わったら声掛けて。サイズはアタシとそんなに変わらないだろうから、大丈夫だと思うけど」
「分かった」
「それじゃ、アタシは戻ってるね」
◇ ◇ ◇
「今日全然お客さん来なくない?」
「準備中にしてるからな。真理愛ちゃん初日だし、まずは俺たちに慣れてもらおうと思って」
「へー、ずいぶんと優しいんだね。アタシの時はそんなことなかったと思うんだけど」
「いや、あったから!逢莉子の時だって、初日は俺とコーヒー飲んでもらったはずだぞ」
「ああ、あの時コーヒー苦手なのに無理やり飲まされたっけな。バイト初日からコーヒーハラスメントされたな」
「コーヒーハラスメント」って...世の中いろんなハラスメントに溢れてるよな...。
「俺は断り入れたはずだぞー。美味しいって言ってくれてたじゃんかー」
「まあ、遥太のコーヒーは飲めるかな」
相変わらずコーヒーは苦手なのね...。でも、俺の煎れたコーヒーは飲めるのなら嬉しいかな。
「逢莉子が俺のコーヒーなら飲めるなら、俺としては本望だな!」
「お待たせしました」
制服に着替えた真理愛ちゃんが、俺たちのもとへ顔を出した。
「おお! 似合ってる! 可愛いね!」
「ありがとうございます。制服、オシャレでいいですね」
「そう言ってもらえてよかったよ。逢莉子が拘った甲斐あったな」
「そうだねー」
素直に喜ばないなぁまったく...。
「伏木さんは、バイトしてどれくらいになるの?」
「大学入ってすぐだよ。学校近いし、バイトの内容ラクだし続けられると思うよ」
「ラクな理由は、暇だからだろうか...」
「そうだね。でも赤字ではないんでしょ? アタシのお陰だね」
「逢莉子のお陰だろうな。SNSでアピールしてくれたり、接客が良いお陰でお客さん増えてきてるよ」
「遥太だけじゃ経営大変だったかもねー。アタシが居ないと生きていけないんじゃない?」
「まあ、そうかもな...」
なんか、真理愛ちゃんの前で強気じゃないか?
「えっと...米田さんって、おいくつでしたっけ?」
なぜ気になったのか、唐突に真理愛ちゃんから聞かれるなどした。
「俺? 25だけど...」
「5歳上じゃないですか。伏木さんはどうしてタメ語で名前呼び捨てなの?」
「もしかして、遥太言ってなかったの? アタシたちが付き合ってること」
「えっ?」
逢莉子の言葉に、真理愛ちゃんは凍りつくように硬直した。
「おい、嘘つくな! 真理愛ちゃん、俺たちはただの店長とバイトだからね!」
真理愛ちゃんのリアクション、絶対本気にしてたじゃん。俺も焦ったけど...。
「それなら、タメ語で呼び捨ての理由はどうしてですか?」
「遥太に言われたのー。呼び捨てタメ語でいいって」
「なんというか、なんでも話せる間柄になれたらいいなって思ってね。だから、真理愛ちゃんも敬語じゃなくていいからね」
「さすがに初日からそれは...ハードル高いです」
まあ、そう思う人もいるよね。人それぞれ距離感の掴み方は違うだろうし。
「タイミングは任せるよ」
「ありがとうございます」
「てかさ、今日は何時からお店開けるの?」
「ああ、もうそろそろ開けようか。真理愛ちゃん、それじゃあよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
新しいバイトを雇って初日となる仕事、真理愛ちゃんのことを知っていけたらと思う。
ついに、この日が来た。
というのは大袈裟かもしれないが、真理愛ちゃんの初バイトの日である。
相変わらず可愛いなあ。これから人気店員になって、この店の売上に貢献してくれるに違いない!
「よろしくね! で、ご存知だと思うけど、こちらがウチのバイトの伏木逢莉子」
「よろしくお願いします」
「はーい、よろしくー」
うわ、超塩対応...ホントに仲良くないんだな...。
「え、えーっと、今日は俺らの手伝いしてくれれば大丈夫だから! いろいろ指示は出すからよろしくね! とりあえず、逢莉子に更衣室の場所教えてもらって、制服に着替えてもらってもいいかな?」
「分かりました。伏木さん、よろしくお願いします」
「アタシら同い年だし、なんなら同じ大学の同じ学科なんだから、敬語じゃなくていいよ。とりあえず着替える場所案内するから」
「わかった」
これから、2人が仲良くバイトしてくれたらいいのだが...。
2人を見送り、俺は真理愛ちゃんの制服姿を楽しみにしながら厨房で待つことにする。
◇ ◇ ◇
「着替えるとこはここね。ロッカーはここ使って」
「わかった」
喜多山さんとは普段大学で話すこともないから、なんか気まずいな。
「ねえ、なんでウチでバイトしようと思ったの」
間が持たなさそうだし、気になってたこと聞いておく。
「兄が米田さんと知り合いで、バイト紹介してもらったから」
「縁故ってわけね。アタシがここでバイトしてるの知ってたの?」
「面接の時に知った。でも、話す機会なくて言えなかった。ごめん」
「別に謝らなくていいけど。今まで大学で関わりなかったけどさ、せっかく同じバイトなわけだしよろしく」
「こちらこそよろしく。伏木さんって、優しいんだね」
いまのアタシの発言の、どこが優しかったんだろ。
「べつに、普通だと思うけど。制服はこれね。着替え終わったら声掛けて。サイズはアタシとそんなに変わらないだろうから、大丈夫だと思うけど」
「分かった」
「それじゃ、アタシは戻ってるね」
◇ ◇ ◇
「今日全然お客さん来なくない?」
「準備中にしてるからな。真理愛ちゃん初日だし、まずは俺たちに慣れてもらおうと思って」
「へー、ずいぶんと優しいんだね。アタシの時はそんなことなかったと思うんだけど」
「いや、あったから!逢莉子の時だって、初日は俺とコーヒー飲んでもらったはずだぞ」
「ああ、あの時コーヒー苦手なのに無理やり飲まされたっけな。バイト初日からコーヒーハラスメントされたな」
「コーヒーハラスメント」って...世の中いろんなハラスメントに溢れてるよな...。
「俺は断り入れたはずだぞー。美味しいって言ってくれてたじゃんかー」
「まあ、遥太のコーヒーは飲めるかな」
相変わらずコーヒーは苦手なのね...。でも、俺の煎れたコーヒーは飲めるのなら嬉しいかな。
「逢莉子が俺のコーヒーなら飲めるなら、俺としては本望だな!」
「お待たせしました」
制服に着替えた真理愛ちゃんが、俺たちのもとへ顔を出した。
「おお! 似合ってる! 可愛いね!」
「ありがとうございます。制服、オシャレでいいですね」
「そう言ってもらえてよかったよ。逢莉子が拘った甲斐あったな」
「そうだねー」
素直に喜ばないなぁまったく...。
「伏木さんは、バイトしてどれくらいになるの?」
「大学入ってすぐだよ。学校近いし、バイトの内容ラクだし続けられると思うよ」
「ラクな理由は、暇だからだろうか...」
「そうだね。でも赤字ではないんでしょ? アタシのお陰だね」
「逢莉子のお陰だろうな。SNSでアピールしてくれたり、接客が良いお陰でお客さん増えてきてるよ」
「遥太だけじゃ経営大変だったかもねー。アタシが居ないと生きていけないんじゃない?」
「まあ、そうかもな...」
なんか、真理愛ちゃんの前で強気じゃないか?
「えっと...米田さんって、おいくつでしたっけ?」
なぜ気になったのか、唐突に真理愛ちゃんから聞かれるなどした。
「俺? 25だけど...」
「5歳上じゃないですか。伏木さんはどうしてタメ語で名前呼び捨てなの?」
「もしかして、遥太言ってなかったの? アタシたちが付き合ってること」
「えっ?」
逢莉子の言葉に、真理愛ちゃんは凍りつくように硬直した。
「おい、嘘つくな! 真理愛ちゃん、俺たちはただの店長とバイトだからね!」
真理愛ちゃんのリアクション、絶対本気にしてたじゃん。俺も焦ったけど...。
「それなら、タメ語で呼び捨ての理由はどうしてですか?」
「遥太に言われたのー。呼び捨てタメ語でいいって」
「なんというか、なんでも話せる間柄になれたらいいなって思ってね。だから、真理愛ちゃんも敬語じゃなくていいからね」
「さすがに初日からそれは...ハードル高いです」
まあ、そう思う人もいるよね。人それぞれ距離感の掴み方は違うだろうし。
「タイミングは任せるよ」
「ありがとうございます」
「てかさ、今日は何時からお店開けるの?」
「ああ、もうそろそろ開けようか。真理愛ちゃん、それじゃあよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
新しいバイトを雇って初日となる仕事、真理愛ちゃんのことを知っていけたらと思う。
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