恋とは落ちるもの。

エーデルワイス 8

「優輝の家？」
「そう、俺ん家」
「優輝の家、調味料とかあったっけ？」
味噌汁を飲みながら彼が斜め上を見上げる。

「…無いかも」
くしゃっと笑うその顔に目を奪われる。
「調味料とか無いと私ご飯作れないよ？」
「帰りに一緒にスーパー寄ればいいじゃん。仕事帰りに一緒にスーパー行くとか夫婦っぽくて良くね？」
さりげなく優輝の口から出た二文字に反応してしまう。
「そ、そうだね…」
どう反応したら良いのかわからない。
「目、泳ぎ過ぎ」
発言の主は目を細めて私を見ている。
何でこの人はこんなに余裕があるのだろうか？数年ぶりに巡り合った事にも、もう一度付き合えた事にも驚いている私は、彼から「夫婦」という言葉を聞いてしまってただ動揺していた。

「俺ん家にも亜樹の色んな物置いてくれていいよ。俺も亜樹の家に色々置いてるし」
優輝の私物は我が家のクローゼットの一角に少しずつ増えていった。スウェットもTシャツも、そのまま仕事に行けるようにスーツの上下も置いてある。
優輝の不在時にワイシャツのアイロンをするのは私の最近の幸せな時間だ。

「うん…少しずつ持って行こうかな」
化粧品ぐらいなら置かせてもらってもいいかもしれない。