恋とは落ちるもの。

エーデルワイス 3

「俺ね…」
「うん？」
アイラインの引き直しを試みる。何とか、ミリ単位の努力が形になった。

「亜樹が図書館にいるの、気付いてたんだ」
「えっ？」
また腕の中で振り返る。今日だけでこの姿勢、何度目だろうか？

「私が図書館で勤務してるの…知ってたの？」
「うん」
「いつから？」
「２ヶ月ぐらい前」
２ヶ月ぐらい前…異動して間も無い頃だ。

「仕事帰りに気分転換に図書館寄ったら、亜樹そっくりな人が本の整理してた」
「それ、私じゃん。何で声掛けなかったの？」
「簡単には…声掛けられないよ。別れを告げたの俺だったし。嫌われてる恐れだってあったしさ」
寂しそうに笑う優輝の表情を見ると、胸の奥が締め付けられてしまう。

「嫌いになる訳…無いよ」
私だって、ずっと忘れられなかったのだから。

「あれから８年経ってて、彼氏がいるかもしれないかと思うと尚更声掛けられなかったんだ」
「じゃあ…何で昨日は声掛けてくれたの？」