恋とは落ちるもの。

藍沢咲良

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薫り 9

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「雨か…困ったな」
私達は2人とも傘を持ってきていなかった。

「店長、借りていい傘ありませんか?」
「そこに立ててあるビニール傘、忘れもんだから持ってけ」
店長が店のドア近くにある数本のビニール傘を指差した。
「ありがとうございます。亜樹、行こうか」
優輝はビニール傘を一本手に取ると店を出た。


「亜樹、入って」
傘を広げて私が入れるように場所を開けてくれる。
「ありがとう。でも、優輝濡れちゃうよ」
「亜樹がもっと俺にくっつけばいい」
優輝は私の肩を抱いて自分の体に引き寄せた。
不意に抱き寄せられて頬が熱くなるのを感じた。

「あ、雨が降るとちょっと涼しいね」と誤魔化すと、「夏でも亜樹とくっついていられるなら雨も悪くないな」なんて言うから、私だけ体温が上昇しているように思えた。


しばらく歩いていると、優輝の家に到着した。

「お邪魔します…」
玄関に入ると、しんとしていた。

「今日、みんな出掛けてるんだ」
「そうなんだ…」
「亜樹、上がって」
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