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硝子 2
しおりを挟む「匠……?」
か細い声しか今は出ない。いつもの元気さを求められるのは、今の私にはとってもしんどい。
「やっぱり……一緒に行けば良かった」
「え?」
「葉月先生に嫌がられても、今日は一緒に行くべきだった。澄麗に変な男が近づくなんて、考えもしなかった」
──碧だ。匠に連絡してくれたんだ。そういえば、帰宅してから匠に連絡をしていなかった。
「碧に、聞いたの?」
一瞬力が弱まって顔を上げた。心配そうな、今にも泣きそうな顔をした匠が私の顔をじっと見つめていた。
「変な男に絡まれて、バッティングセンターから走って逃げたって。偶然知り合いに助けてもらえたとも言われたけど。でも」
「でも?」
「澄麗を助けるのは、俺でありたかったよ」
「常にっていうのは、無理だよ。私がもっと警戒していればいいだけの話で」
「今後、どこか出かける時は常に俺と一緒な」
「それは無理でしょ」
至って真面目な顔で無理難題を放つ彼に、私も私で真顔でバッサリと斬った。
「バッサリ過ぎだろ。澄麗、ご飯は食べた?」
この上なく不機嫌な表情を見せた匠は、口を尖らせながらも続けた。
「今から作ろうとしてたの。……痛っ」
「え?澄麗、その男に何かされた?」
一瞬匠の顔が険しくなる。実際に何かされてたら本当に探し出す勢いだ。
「逃げる時に足捻っちゃっただけだよ。そもそもさ、絡まれたけど実際何かされた訳でも」
心配し過ぎでしょ、と続けようとした。出来なかったのは、ふわりと身体が宙に浮いたからだった。
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