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紅に染まる 5
しおりを挟む澄麗をアパートに送り届け、そのまま黒瀬さんは私の家へと向かってくれた。明日あたり、九条先生からクレームを喰らうんだろうか。九条包囲網がまた一段と強化されてそう。澄麗はむしろそれを喜んでそうだけど。
「──朔から、どれくらい聞いてます?」
「と、言いますと?」
赤信号で停車した車内で黒瀬さんはぽつりと切り出した。
「クロセ製薬って聞いたことあります?」
「あの、頭痛薬の、ですか?ベフェリンの」
聞いたことがあるどころじゃない。私の常備薬で、鞄にも職員室の机の引き出しにも常にある。
「僕はそのクロセ製薬の社員なんですが──その、」
黒瀬さんがクロセ製薬の社員。ん?黒瀬さんがクロセ製薬?
「もしかして、黒瀬さん」
「はい、社長の黒瀬隆夫は僕の父です」
ええ!御曹司!私、御曹司の車に乗ってんの?でもこの御曹司結婚してるのか、残念。いや、残念って。私には朔さんという大事な人が……。
「その、クロセ製薬でちょっと色々ありましてね。ざっくり言うと、朔に相談しないといけない事態になっているんです」
「それは、警察官としての朔さんに、ということですね?」
御曹司が警察官としての朔さんに相談しないといけない事態。つまり、犯罪の臭いがするってことだよね。
「最近、朔さんの仕事用じゃないスマホに頻繁に電話があったのは」
「僕だと思います。朔が他に何か抱えていなければ、ですが」
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