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「買い過ぎじゃない?」
ポテトチップスのコンソメ味、プリングルスのサワーオニオン、じゃがりこのサラダ味に大量のブラックサンダー。駄菓子コーナーからなかなか戻って来ないと思っていたら、カゴの中が真っ黒になっていた。
「いいの。これが無いと俺頑張れないの」
「せめてブラックサンダーはファミリーパックにするとか」
「ファミリーパックは邪道なの。この大きさじゃないと。……ん、でも、ファミリーパック、か」
一瞬考え込んだ後、彼はカゴにファミリーパックのブラックサンダーも追加した。

「いや増えてるし」
「ファミリーパック勧めたのは英だろ」
うーん、としか言葉の出ない私をよそに、時緒はレジにカゴを持って行った。


私がお肉を捏ねている間、時緒は静かにパソコンの前にいた。学会で割り振られた仕事の締め切りが近いと車の中で嘆いていた。以前と変わらない時緒に安心する。けど、やっぱり例の件については話すのを避けていると思う。やだ、私別れたくないよ。離れたくないよ。時緒、まだ結論を出さないで。例の件、話せなくてもいい。それでも時緒の側にいたいと願う私は、身勝手なの?

「うまい」
「よかった。おかわりあるよ」
「多分食べ尽くすな」
食欲旺盛なのもいつもと変わらない。いつもと変わらない安心を一番欲しがっているのは、私なんだと思う。時緒の方が、ずっと不安なはずなのに。時緒を支えるには、私じゃ役不足なの?

「昨日な。匠に怒られたよ」
「え。なんて?」
「一人で抱えるなって言われた。周りの人間がどれだけ寂しい思いをするか、よく考えろって。甘えるのも愛情だって」
匠さん、ナイス!よくぞ言ってくれた。さすが澄麗の彼氏。
「英。俺、甘えるの、下手だけど……。なあ英。まだ俺と、一緒にいてくれる?」
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