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打破(澄麗 act5)
しおりを挟む九条くんと目が合うことは、私にとっては日常と化していた。だから、目が合わなくなると、すぐに私は気付いた。
彼は、これ以上私と仲良くすることに迷いを抱いている。そんな感じがする。目が何度も合う日と、全く会わない日が何日かおきにやって来る。その度に、私は何かしてしまったのかな?と気に病んでいた。でも、業務上必要な会話をしているうちに悲しいかな、時間はあっという間に過ぎてしまう。彼が目を合わさない日でも稲垣先生を挟めば、彼はいつもの「九条先生」に戻っている。プライベートな会話をしなくなって久しい。
沢田先生とは、あのラーメンの日以来、特に変わらない。そもそも沢田先生は大学で同じ学科だった上條くん──かみちゃんと私たちは呼んでいた──と同じサークルで、大学当時から付き合いがあった。沢山いる飲み仲間の一人でもある。その当時も何も無かったのに、今更沢田先生とどうこう、というのは私には現実的ではない。気楽な仲間の一人でしかない。沢田先生にしてみても、そうだと思う。あのラーメンの日に肘がくっついていたのは、ただ単にお店が狭かったからだろう。
「澄麗ちゃん」
「ちょ、沢田先生…」
仲間たちで飲むときは学生の頃のように下の名前で呼び合うのが常だ。そのメンバーでの飲み会は月イチであり、先週もその飲み会があった。そこに雄二くん──沢田先生も同席していた。
「職員室で名前で呼ばないでよ」
小声で抵抗すると、「葉月先生も呼んでるじゃん」と怯まない。
九条くんと目が合った。
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