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沼 (碧 act4)
しおりを挟む「朔さん」
「んー?どうした碧ちゃん?」
どうしたもこうしたもあったもんじゃない。
朔さん。こんなにお酒、弱かったなんて。酔って上機嫌なのはいいのだけど。酔うと極度の方向音痴になるだなんて、そんなパターン知らないよ?
次のお店に行きたがる朔さんをなんとか宥めて、朔さんの部屋へと向かっている。
約束していた、お酒を飲む日。朔さんが連れて行ってくれたのは夜景の見える行きつけのバー…ではなく、焼き鳥屋だった。
歓楽街に近い、有名な商店街に連れて行って貰った時にはどんなオシャレなお店に連れて行ってくれるのかなーなんて思ってたんだけど。到着したのはボロ…もとい、きっと昭和の時代から繁盛していたであろう年季の入った焼き鳥屋さんで。
客層はおっちゃん…じゃなくておじさま方が9割。20代の女子は店内に私しかいなかった。
テーブルに運ばれてきた焼き鳥は絶品だった。映えに拘る私達女子に選ばれる率は限りなく低いこのお店は、大将の料理のおかげで常にほぼ満席だった。
生ビールと焼き鳥。この世で一番ぴったりな組み合わせだと思う。
「美味しいですね」
「でしょ。店の見た目は女子向けではないけど、料理は最高なんだよ」
私達が店に入ったタイミングではテーブル席が空いておらず、カウンター席に通された。機嫌良くビールと焼き鳥を口に運ぶ朔さんの腕が、さっきからずっと触れている。これ、わかっててやってるんだろうか?
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