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cross 7
しおりを挟む「……でも、それが朔さん、なんでしょ?」
「ああ。性分は変えられない」
少し細めたその眼に滲ませた感情は嘲りとも諦めとも感じられるものだった。
「悪いことじゃ、ないと思います。仕事に一生懸命になれるって、素敵です」
「褒めても何も出ないよ?」
「朔さんみたいに捜査に一生懸命な方がいらっしゃるから、私達は安心して暮らせるんです」
笑みを浮かべたまま、彼の表情は固まってしまった。
「コーヒー、飲みましょう?冷めちゃいますよ」
「あ、ああ…」
コーヒーを飲んでいる間、私達は静かだった。店内を流れるジャズ音楽は音量が絞られていて、耳に心地良い。
「なあ碧ちゃん」
顔を上げると、口角を上げた彼は言葉を放った。
「今日は酒、飲まなくていいの?」
「ここ、飲む感じのところじゃないでしょ?」
「ビールあるじゃん。飲んでもいいよ?運転俺だし」
「ハンバーグ食べ終わってコーヒーも飲んだのに飲むんですか?」
もう既にお腹はいっぱいだ。何を今更言っているのだろうか、この人は。
「また酔っ払ったら、碧ちゃんを家に連れて帰れるな、なんて思った」
「問題発言を真顔でさらっと言わないでもらえますか」
「今の、もっと怒っていいんだよ?」
「朔さん、私に怒って欲しいんですか?」
「怒った顔も見てみたくなったんだよ」
なんだこの人は。急に砕けたというか…。発言がチャラいぞ?
「──梨愛に報告しときます」
「ちょ、それは勘弁して。おかんにまでバラされる可能性大だから」
お母さんのことをおかんって呼んでいるのか。前よりも朔さんを近くに感じられたような気がした。
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