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甘美 4
しおりを挟む「えっ……それでも、前の方の席を薦めるのが先生の責任では?」
「ゆたかくん、後ろの席になってみたかったと話していたので…。無理強いするべきではないと判断しました」
沈黙が流れる。我ながら、声にも営業スマイルが表れているのが良くわかる。
「そうですか」
「もし、それでも黒板の文字が見えにくいようであれば、ゆたかくん本人と相談させて頂きますので。また気になったら教えて頂けるとこちらもありがたいです」
「わ、かり、ました。すみません、お客様がが来たようなのでこれで失礼します」
「はい。またよろしくお願いいたします」
電話を切ると、碧と九条くん、稲垣先生が目を丸くしてこちらを見ていた。
「すごい…新記録」
「かつてない短さ、でしたね」
「如月さん、お見事ね」
「…へ?」
何故そんなに驚いているのだろうか。私、何か変なこと言ったっけ?
「ゆたかくんのお母さんのクレームは30分が過去最短記録、だったの」
「そうなの?」
碧が複雑そうな顔をして続けた。
「去年の担任さん…私、同じ学年だったんだけど、ゆたかくんのお母さんのクレームが理不尽でしつこ過ぎて、鬱になりかけてたの」
「ちょ、そこまでの情報私に降りてないんだけど」
「知ってたら嫌になるでしょ?伝えるかどうか、ギリギリまで悩んでたの。ごめんね、如月さん。でも、隙の無い対応、すごかったわ」
「は、はあ…」
「如月先生、今日は飲みましょうか」
「いや九条先生車だからお酒付き合ってくれないでしょ」
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