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極彩色 (碧 act1)

「できた…」
私の渾身の一作。明日の学級開きで６年生たちに示す、担任の願いを込めた掲示だ。うん、今年もいい出来じゃん？極彩色の派手な掲示。第一印象はインパクトが大事。担任である私と、児童たちとの出会いに相応しい逸品だ。自画自賛は私の特技であり、処世術の一つだ。他人の評価なんて気にしてられない。人間、心持ちが大事。細かい事を気にしていたら、ストレスフルなこの業界、生き抜いていけない。

時計は21時を指していた。始業式前日、まだ始まっていないのにこんな時間まで残っているのは、どうやら私だけらしい。30分前に教頭から内線で職員室が空っぽになるから鍵をかけておくという旨を伝えられた。私の帰宅が遅くなることは予想していたので勿論貴重品含め、職員室の鍵は持参していた。

ジャージにTシャツのまま地下鉄に乗るわけにはいかない。無事に更衣室で着替えを済ませ、滅多に着ないスーツに身を包む。普段からスニーカーを履きなれている私にはパンプスなんて歩きにくくてしょうがない。ヒールなんてものは土日の、おしゃれに気合を入れる日だけで十分だ。

職員室の施錠を済ませ、セキュリティのボタンを押す。消灯して職員玄関の鍵も閉めて外に出た。月の光と散り際の桜のコントラスト、最高だな。学校の門の鍵もしっかり閉めて、月明かりの中の花見を楽しんでいた私には、背後に近づく足音には気付くことが出来なかったみたい。

「おねえさん、暇そうじゃん」
聞き覚えの無い声に身が硬くなった。