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『さっき解散したよ。今から向かいます』

3人と別れて、地下鉄の車内。怜にLINEを送って、ひと息ついた。

安定の性格の悪さだったな、紗香。案外佐々木さんと相性良いかもしれない。

昔、紗香に呼ばれて飲み会に行ったことがある。世でいう合コンというやつだ。そこでの紗香は「どちら様ですか?」と言いたくなるレベルの豹変ぶりだった。

「えぇー、紗香、わかんなあい」
とか
「それ、紗香も、紗香も」
とか……。今思い出しても背筋が寒くなる。紗香の通常の一人称は『私』だ。

彼女は自慢のピンク&フリルコーデで肩をすぼめて手を口の前に常に持っていっていた。伝わるだろうか?右手をグーにして分度器の中心、90°のあたりから30°程更に右側に倒すというか。

一体どこのサイトのモテ技だろうか。少なくとも令和に書かれたものでは無いだろう。平成初期ぐらいかもしれない。

『駅に迎えに行くから改札で待ってて』

怜はLINEの返信が早い。いつも早い。でもこの返信の早さはきっと今だけ。数多の恋愛系YouTubeチャンネルで学習した私は、男性がLINEが苦手なこと、LINEの返信が早いのは付き合い始めだけだということを心得ていた。

怜もきっと、そのうち返信遅くなるんだろうな。仕方のない事かもしれない。寂しいけど、悲しいけど、しょうがない。

LINEや電話が減っていくのと同じペースで、健二は私を雑に扱うようになっていった。この先、怜にも雑に扱われるのかもしれない。

だから、身体は許しても、心は許し切ってはいけない。そんな気がしていた。
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