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けじめ

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「おはようございます」
渾身の営業スマイルを大集結させて声を掛けた。

「お、おはようございます」
振り返った彼は緊張感を漂わせながらも何か言いたげだった。

たった2週間。されど2週間。会いたかった。触れたかった。目の前にいる今この瞬間だって触れたくてしょうがない。そうちゃんが目の前にいるのに触れないなんて、すごくすごく落ち着かない。

今がロミオのバイト中じゃなかったら。その胸に飛び込んで、きっとそのまま流された。何度も抱かれて、肝心な話はきっと出来なかった。

バイトを再会の場にして良かった──周りには迷惑な話かもしれないけど。それでも、冷静に私がそうちゃんと向き合うには、である必要があった。

「じゃ、お疲れさまです」
「あれ?亜樹は今日朝からだったの?」
カウンターから少し疲れた様子の亜樹が私とすれ違おうとしていた。

「栗原さん、選考落ちた会社から面接に急遽呼ばれたらしくて。本命なんだって」
就職活動も佳境に入っているらしい。落ち着いたら栗原さんから就活の話を聞いてみたい。

「あ……それは。行かないとだね」
「また明日ね。大学で」
「うん。お疲れさま」
「白雪さん」

速水くんの声に振り返るとお客さんがドアから入ってきたところだった。4名。シルバーにおしぼりとお冷をすぐにセットした。
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