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六章
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翌日、名古屋地方裁判所の評議室では、裁判長の招集の元6人の裁判員が集められ、それぞれの席に着いていた。
「本日はお集まり頂きありがとうございます。今日の評議にてみなさんの疑問疑惑を取り除き、出来る限り満場一致にて評決したいと思いますのでよろしくお願いします」
言葉に合わせて3人の裁判官が頭を下げた。
「まず始めに、朝比奈裁判員が疑問視されていた被害者の死亡推定時刻は、検察側より午後9時30分に訴因変更があり、裁判官としてはこれを受理いたしました。ですので、被告人の犯行は十分に可能だと思われます。それと、鉄パイプの指紋についてですが、被告人は被害者の頭を殴打した後、一瞬頭が真っ白になり思わずハンカチで拭いたそうです。しかし、冷静になり自分のしたことを省みてもう一度鉄パイプを握った、被害者の拳が傷んでいなかったのは、膝と肘で殴られたと証言しています。ですので、被告人の犯行は十分に可能です。以上のことを考慮して、判決を出したいと思います。それでは・・・・・」
その時、朝比奈が右手を上げた。
「裁判官にお伺いいたしますが、実際に実証してみましたか。確か、検事さんにも裁判官にも捜査権はあるんですよね。日本の優秀な警察官の調べた情報は確かかもしれませんが、今回のように犯行を認めた場合は徹底的に調べたりはしませんからね。僕は違いますよ。真実は1つしかありませんからね。実際に通話記録から被告人は午後9時前に居酒屋『五郎丸』栄店からタクシーを使えば9時30分には間に合ったが、証拠としてタクシーのドライブレコーダーに残ってしまう。公共交通機関を使った場合は、何度も繰り返してみましたが、余程の急ぎ足でなければ間に合いませんでした。犯行時間が訴因変更の9時30分だったとしても、揉み合っている時間はございません」
敢えて立ち上がり、熱弁を振るった。
「しかし、それは・・・・・」
裁判長が戸惑っていた。
「遺体の発見がこんなに早かったのですから、今の法医学からすれば死亡推定時刻の誤差は殆んど無いと思います。最初から、2時間の幅があるのに違和感を感じていました。それなのに、訴因変更で更に30分もずらされるのには納得はできません。その鑑定をされた先生の名前を教えていただけませんか。それと、先程の裁判長の話を聞いて、裁判員の皆さんは不思議には思いませんでしたか。いくら被告人が罪を認めても、その死亡推定時刻など自供とは異なる証拠が出たのですから、被告人の立場になれば、弁護士は無罪を主張してもおかしくないのではないのでしょうか。僕には、裁判官、検事、弁護士が、三位一体それぞれ忖度し合いながら、この事件を正当防衛として強引に結審させるつもりだとしか思えません」
最後は裁判長の顔をじっと見つめた。
「失礼な。法曹界では、そんなことは絶対に有り得ません」
きっぱりと言い放ったが、動揺は隠しきれなかった。
「亡くなった被害者には他に親族は無い為上告はされず、この裁判で結審するでしょう。裁判員の皆さん、もし自分や親族が被害者と同じ立場だったらどうでしょう。殺害されたのに、真実がねじ曲げられて殺害者本人は正当防衛で罪には問われないのに、本人は反対に一方的に暴行を加えた悪者扱い、殺害されても仕方ないと世間の人は思うことになる。僕はそんなこと絶対に許せません。」
裁判員の顔を順に見ながら同意を求めた。
「あなたの個人的な意見は分かりましたが、それで他の皆さんを誘導するのは控えてください」
少し冷静になって裁判長が注意した。
「誘導ではなく、真実を述べているつもりです。この事件をもし正当防衛で結審したのなら、真犯人を見逃してしまうということなんです。裁判官の皆さんも間違った判決を下したことになり、汚点をつけることになりますよね。冤罪の可能性があり、他に犯人がいたとしても強引に多数決を取りますか」
ゆっくりと席に着いた。
「これは法律に基づいて行われることです。それでは、傷害致死に値するか、正当防衛なのかについて決定したいと思います」
「これが世界に誇れる日本の法律ですか。ノンフィクションドラマで、婦人警官に対しての暴行傷害の罪を着せられた男性が、一旦は担当検事により前科が付かない起訴猶予を提示され認めてしまった事件がありました。でも、その男性は、やはり間違いは正せなければと、国家賠償法により国を訴えることにした。これは通常起訴された事案に対するもので、起訴猶予に対しては非常に高い壁が幾つも存在した。それでも諦めることなく、9年掛けて勝訴を勝ち取ったものでした。僕も、今回の案件は、被告人は事件に関係していたとしても被害者を殺害した犯人ではないと思います。」
多数決を無理に推し進める裁判長に最期の言葉をぶつけた。
「私も朝比奈さんの意見に賛成です」
月見里が手を挙げ、それにつられるように裁判員全員が手を挙げた。
「日本の世の中には、まだ正義が残っていましたね」
朝比奈が感動している頃、大神と川瀬はサイバーセキュリティー室を訪れていた。
「大神班長、本当にいいのですか」
吉田鋼鉄弁護士の事件前後の通話記録の資料を手に川瀬刑事が尋ねた。
「乗りかかった船でしょ」
大神は、憎たらしい朝比奈の顔を頭に描き、それでも薄笑いを浮かべた。
「朝比奈さんの裁判事件でもし正当防衛の判決が出たら、こんなことを調べても無意味ですよね。反対に、勝手に捜査していたことが刑事部長にしれたら、お目玉だけじゃ済みませんよ」
心配そうに大神の顔を見た。
「正当防衛ね・・・・・川瀬刑事は朝比奈との付き合いがまだ浅いからそう思っても仕方ないけど、あいつがそれで終わらせることは絶対にない。、白を黒には出来ないし、勿論黒を白には絶対にできない男だから、今回の事件もきっと白紙に戻させるだろうねどんな手を使っても」
確信を持って答えた。
「どんな手を使ってもですか・・・・・でも、裁判官の3人は正当防衛を認めるんでしょ。だったら、無理じゃないんですか」
どんな手の意味が分からなかった。
「確かに、採決を取り、裁判員の1人でも裁判官の3名に同意すれば可能だろうけれど、6人全員が認めなければ成立はしない。そうでなければ、裁判員制度にした意味がなくなってしまうからね」
大神には評議会の様子が何となく想像できた。
「それが朝比奈さんの奥の手なんですね」
大神の言葉に何となく納得でき、少し安心した。
「いいや、まだまだ最終兵器はあるんだけどね。今回は、それを出すまでにはいたらないと思う」
大神の最終兵器と言う言葉に少し震えた。
「私が調べた資料を置いておきました」
部屋に戻ると高橋刑事が待っていた。
「川瀬刑事、こちらの資料もコピーしてくれないか」
席に着く前に指示を出した。
「まず、吉田弁護士の通話記録ですが、8時52分に白井良二の携帯への通話が記録されています。気になったのは、それ以前に白井以外の携帯電話に1度、事件後の9時前に同じ番号に1度かけられていて、この携帯番号はその日以外にも何度も通話記録として残っています。ただ、この携帯番号の相手は分かっていません」
通話記録を見て川瀬が報告した。
「ちょっと待てよ。この携帯の番号は・・・・・・・・」
大神は自分のデスクに戻り引き出しから一枚の書類を取り出した。
「これは、被告人白井良二の当日の通話記録だけど、同じ番号が何度か記載されている。つまり、吉田弁護士が事件後にかけていた携帯の持ち主は、白井良二にも関わる人物ということだ。川瀬刑事、この番号の主を確認するように。それから、高橋刑事の報告をお願いします」
書類を川瀬に渡した。
「はい、白井良二について詳しく調べました。先回も話しましたが、次期社長と噂される出来の良い兄の良一とは正反対で、高校時代から悪い連中とも付き合うようになって、痴漢や暴行傷害などで何度も訴えられています。事件は全て示談が成立して起訴されることは1度もなく前科もついていないと報告しましたが、その示談交渉をすべて行っていたのが吉田弁護士だと分かりました。まあ、会社の顧問弁護士でもありますから、当然といえば当然なのですが、良二にとって兄と比較され、白井家の恥さらしと罵倒する父親よりも、吉田弁護士を信頼していたのかもしれません」
資料を手にして答えた。
「被害者の石川由幸さんについてはどうですか」
一応資料に目を通しながら尋ねた。
「資料にもありますように、以前は週刊パトスの記者でしたが、6年前に退職してフリーのライターをしていたようですが、取材した限りではどの雑誌社にも投稿の実態はなく、どのようにして生計を立てていたのか、今のところはまだ分かっていません」
「結婚をしていなくて、他に家族も居なかったそうですが、それについてはどうなんでしょう」
生計について疑問に思い質問した。
「両親も既に亡くなっていまして、結婚した姉がいたそうですが、その姉も亡くなっているようで、血の繋がった親族は誰もいないとのことです。近所付き合いも余り無かったようですが、数年前までは若い女性と一緒に住んでいたと言う情報もあり、付き合っていた女性はいたかもしれません」
資料にないことを付け加えた。
「被告人との関係はどうなっているのですか」
「週刊パトスに在籍中も傷害事件などの刑事事件には関わっていなかったようですし、今のところは接点は見当たりません」
「では、吉田弁護士と被害者の接点を洗い直してみるか。それと、帝王グルーブについても少し調べる必要があるな。乗りかかった船は、巨大な泥船かもしれないけど」
大神の言葉に二人の刑事が頷いた。そして、その日の夕方、久しぶりに糸川美紀のスマホに朝比奈から仕事後に『ゼア・イズ』で会いたいとのメールが届き、午後7時に行くという返信を送った。その後は、仕事が手に付かず気にしていた時計が6時を指すと、準備していた通りに立ち上がると『失礼します』の声を残して事務所を後にして、自宅へと向かった。何を着ていこうか迷った末に、白のスタンドカラーシャツにネイビーレーススカート、普段は付けないイヤリングにペンダント、化粧の手直しも済みしっかりチェックして、急いで目的の『ゼア・イズ』へと向かい、店の前で1度深呼吸をしてからゆっくりと扉を開けた。すると、足を進めた美紀の目には、見知らぬ女性を前にした朝比奈の姿が飛び込んできた。
「えっ、どういう事」
そう呟くと一瞬体が固まったが、時間が立ち少し冷静になると期待していた自分に呆れ、帰ろうと決めたその時に目が合い、朝比奈は頭の上で右手を左右に振った。美紀は仕方なく、文句の1つでも言ってやろうとテーブルへと向かった。
「あれ、今日はドレスアップして何かあったの」
美紀の姿に声を掛けた。
「あの、お邪魔でしたら、帰りますけど」
あなたの為にでしょの言葉を飲み込んだ。
「邪魔どころか、早く来てくれないかと待ってたくらいだよ」
隣の席を勧め、美紀は仕方なく腰を下ろした。
「こちらは、たまたま同じ事件で裁判員として選ばれた月見里恵子さんです」
朝比奈の言葉に反応して美紀とは対照的に、ベージュのプルオーバーに茶色のストレッチパンツ姿の恵子が頭を下げた。
「そして、恵子さんに紹介したいのは、朝比奈法律事務所でパラリーガルとして働いてもらっています糸川美紀・・・・・さんです」
後の方は美紀の顔を横目に見て少し口ごもった。
「恵子さん、相貌失人って言葉知っていますか」
「あっ、いえ、し、知りません」
「失顔症と呼ばれることが多いのですが、脳に何らかの異常が生じて人の顔が認識できない病気です
「まっ、まさか、糸川さんが、そ、その病気にかかっていらっしゃるのですか」
改めて美紀の顔を見た。
「事故などで脳に障害を受けて起こる場合が多いのですが、彼女の場合は先天的なもので、その病気の為に子供の頃からいじめなどで苦労したようです」
「えっ、今でも、わ、私の顔が分からないのですか」
「いいえ、最近の医学の進歩は目覚しく、3D画像診断で脳の1部に良性の腫瘍が発見され視神経を圧迫していたことが分かったのです。その腫瘍の摘出にも成功して、今は、僕たちよりもはっきりと認識できるので、先日のお姉様との密談も直ぐにバレてしまいました」
思わず頭を掻いた。
「わっ、私が無理にお願いしたのです。も、申し訳ありません」
美紀に向かって頭を下げた。
「別に優作さんが誰と会おうと構いませんので、気になさらないでください」
冷静を保ち、感情を表に出さないように答えた。
「その話は置いといて、今日美紀さんに来てもらったのは、ちょっと調べてほしいことがあったからなのです」
「えっ、私がですか」
突然の要望に驚いた。
「大神にも頼んではあるけど、事件の事しか調べてはくれないだろうからね。美妃さんも分かってくれてると思うけど、普段から事件には関わるなと言われている姉さんに依頼する訳にもいかないし、今一番頼りになるのは美紀さんしかいないから」
顔の前で両手を合わせた。
「私なんて力になれませんよ。能力のある優作さんが調べればいいんじゃないですか」
そんな言葉には騙されないと横を向いた。
「できるだけ調べようとは思っているけど、今はちょっと他の仕事で忙しくて時間が取れないんだよね」
「えっ、他の仕事って、優作さん就職したんですか」
「あっ、いや、今はまだアルバイトなんだけど、朝から夜まで拘束時間が長いんだよね。その代わり、今日は何でも好きなものをおごるから」
「何でもって言ったよね。もし、無かったら、引き受けませんからね」
美紀も困らせてやろうと言い返した。
「はい、武士に二言はありません」
「お腹がすいているから、うな重と、松阪牛のすき焼きを皆の分もね」
どうだという顔で朝比奈を見ると、恵子には無理難題を言っての完全な嫌がらせだと感じられた。
「あるよ」
マスターはその声に反応し早速料理をはじめ、朝比奈はガッツポーズをとった。
「マスター、すき焼きの2つはテイクアウトでお願いします」
朝比奈の言葉にマスターが頷いた。
「それで、私は何をすればいいのですか」
美紀は諦めて尋ねた。
「一応、紙にしたためておきました。よろしくお願いします」
朝比奈はポケットから紙切れを取り出し差し出した。
「えっ、こんなにあるの」
紙を広げて驚いた。
「そうなの、事務所の中でも、とても優秀なパラリーガルと常々姉貴から伺っておりますので、それくらいは朝飯前だと思いますけど、どうでしょう」
運ばれてきたうな重を頬張りながら言った。
「何とか努力させていただきます」
負けじと、うな重を頬張り、恵子は二人の会話に付いて行けなくて、しばらく会話も途切れた。
「恵子さんを送って行きますので、お先に失礼します」
朝比奈は、恵子が食べ終えるのを待って立ち上がった。
「えっ、えっ、え、どういう事」
『どうして恵子さんなの』と心の声が漏れてきた。
「美紀さんも家までの帰り道は、お気を付け下さい。念の為に、タクシー代も置いておきます」
テーブルに5000円札を置いた。
「マスター、いつものようにツケといてください」
頷くマスターが用意してくれた、すき焼きを受け取り2人は出口に向かった。
「あっ、あの、良かったのですか」
美紀の方を向いて尋ねた。
「ちょっと見栄を張っちゃいましたかね。3000円にすればよかったですかね」
少し後悔していた。
「あっ、そう言う意味ではなくて」
頓珍漢な答えに戸惑っていた。
「という事で、タクシーで帰れませんので、市バスで送ることになりました。申し訳ありません」
指差して、市バスの停留所に向かった。
「あの、朝比奈さんと糸川さんは、ど、どのような関係なのですか」
朝比奈の美紀に対する態度が理解できなかった。
「関係ですか・・・・・・そうですね、ある事件で彼女を助けたことがあって、それ以来の付き合いなのですが、僕のことを理解してくれる数少ない友人の1人でしょうか」
市バスが停留所に近づき、ウインカーを点滅して止まると扉が開き、2人は1番後ろの席に腰を下ろした。
「ど、どんな事件だったのですか」
興味を示して尋ねた。
「話せば長くなりますが、法律に関する仕事を目指していたのですが、色々な事情で諦めることになってしまった。それを僕が、姉の法律事務所などを紹介して、今は弁護士を目標にパラリーガルとして頑張っている」
その時の状況を思い浮かべて微笑んだ。
「朝比奈さんは、ふっ、不思議な人ですね」
「えっ、変人とは言われますが、不思議な人とは初めてです。それって、褒め言葉として受け取ってもいいのかな」
「ど、どうして、他人の為に、そんなに一生懸命になれるのですか」
今まで出会ったことのない人間の存在に驚いていた。
「親父や姉貴の影響もあって、子供の頃から兎に角曲がったことが大嫌い。これでも、大学を卒業して、それなりの会社に就職したんですよ。人事部に配属されたある時、新人の面接官の助手をさせられた時、その面接官は履歴書に記入された大学名だけで判断して、人間性や可能性を見ようとはしなかった。人間の価値って何で決まるのだろう。高学歴、肩書き、そんなものではないはずだ。人間の価値は、その人自身の持つ人格だと思っていた若き日の僕は、その面接官を殴ってしまった。勿論会社を辞めることになり、そういう会社の組織や本質は今も昔も変わらず、ここに至っても就職することができないでいる訳です」
話が進むように、市バスもスムーズに運行し目的の停留所に着き、2人は市バスを降りて恵子のマンションへと向かった。
「今の、よ、世の中には、認められない珍しい程に変人なんですね。で、でも、とても素敵です」
夜空に輝く満月を見上げた。
「そんな変人に、惚れるなよ」
ポーズを決めて答えた。
「あ、朝比奈さん、そんな言葉もポーズも、まっ、全く似合いません。そ、それに、女心が分からない男性は、さ、最低です」
顔を左右に振ると、しばらく無言で歩いた。
「これ、お姉さんに食べてもらってください」
マンションの部屋の前で、すき焼きの1つを恵子に渡した。
「今日は御馳走様でした。また、また会える日を楽しみにしています」
恵子が頭を下げた。
「僕も楽しみにしていますが・・・・・・あっ、会えるといいですね。それでは」
頭を下げると恵子に背を向けて歩き出したが、なぜか朝比奈の言葉が心に残った。そんなことも知らないで、恵子のマンションを出た朝比奈は、徒歩で自宅へと帰ろうと近道になる、薄暗い通りへと足を進めると、突然走り出して振り返った。その先には、朝比奈の跡をつけていた2人の男性の驚く姿があった。
「本日はお集まり頂きありがとうございます。今日の評議にてみなさんの疑問疑惑を取り除き、出来る限り満場一致にて評決したいと思いますのでよろしくお願いします」
言葉に合わせて3人の裁判官が頭を下げた。
「まず始めに、朝比奈裁判員が疑問視されていた被害者の死亡推定時刻は、検察側より午後9時30分に訴因変更があり、裁判官としてはこれを受理いたしました。ですので、被告人の犯行は十分に可能だと思われます。それと、鉄パイプの指紋についてですが、被告人は被害者の頭を殴打した後、一瞬頭が真っ白になり思わずハンカチで拭いたそうです。しかし、冷静になり自分のしたことを省みてもう一度鉄パイプを握った、被害者の拳が傷んでいなかったのは、膝と肘で殴られたと証言しています。ですので、被告人の犯行は十分に可能です。以上のことを考慮して、判決を出したいと思います。それでは・・・・・」
その時、朝比奈が右手を上げた。
「裁判官にお伺いいたしますが、実際に実証してみましたか。確か、検事さんにも裁判官にも捜査権はあるんですよね。日本の優秀な警察官の調べた情報は確かかもしれませんが、今回のように犯行を認めた場合は徹底的に調べたりはしませんからね。僕は違いますよ。真実は1つしかありませんからね。実際に通話記録から被告人は午後9時前に居酒屋『五郎丸』栄店からタクシーを使えば9時30分には間に合ったが、証拠としてタクシーのドライブレコーダーに残ってしまう。公共交通機関を使った場合は、何度も繰り返してみましたが、余程の急ぎ足でなければ間に合いませんでした。犯行時間が訴因変更の9時30分だったとしても、揉み合っている時間はございません」
敢えて立ち上がり、熱弁を振るった。
「しかし、それは・・・・・」
裁判長が戸惑っていた。
「遺体の発見がこんなに早かったのですから、今の法医学からすれば死亡推定時刻の誤差は殆んど無いと思います。最初から、2時間の幅があるのに違和感を感じていました。それなのに、訴因変更で更に30分もずらされるのには納得はできません。その鑑定をされた先生の名前を教えていただけませんか。それと、先程の裁判長の話を聞いて、裁判員の皆さんは不思議には思いませんでしたか。いくら被告人が罪を認めても、その死亡推定時刻など自供とは異なる証拠が出たのですから、被告人の立場になれば、弁護士は無罪を主張してもおかしくないのではないのでしょうか。僕には、裁判官、検事、弁護士が、三位一体それぞれ忖度し合いながら、この事件を正当防衛として強引に結審させるつもりだとしか思えません」
最後は裁判長の顔をじっと見つめた。
「失礼な。法曹界では、そんなことは絶対に有り得ません」
きっぱりと言い放ったが、動揺は隠しきれなかった。
「亡くなった被害者には他に親族は無い為上告はされず、この裁判で結審するでしょう。裁判員の皆さん、もし自分や親族が被害者と同じ立場だったらどうでしょう。殺害されたのに、真実がねじ曲げられて殺害者本人は正当防衛で罪には問われないのに、本人は反対に一方的に暴行を加えた悪者扱い、殺害されても仕方ないと世間の人は思うことになる。僕はそんなこと絶対に許せません。」
裁判員の顔を順に見ながら同意を求めた。
「あなたの個人的な意見は分かりましたが、それで他の皆さんを誘導するのは控えてください」
少し冷静になって裁判長が注意した。
「誘導ではなく、真実を述べているつもりです。この事件をもし正当防衛で結審したのなら、真犯人を見逃してしまうということなんです。裁判官の皆さんも間違った判決を下したことになり、汚点をつけることになりますよね。冤罪の可能性があり、他に犯人がいたとしても強引に多数決を取りますか」
ゆっくりと席に着いた。
「これは法律に基づいて行われることです。それでは、傷害致死に値するか、正当防衛なのかについて決定したいと思います」
「これが世界に誇れる日本の法律ですか。ノンフィクションドラマで、婦人警官に対しての暴行傷害の罪を着せられた男性が、一旦は担当検事により前科が付かない起訴猶予を提示され認めてしまった事件がありました。でも、その男性は、やはり間違いは正せなければと、国家賠償法により国を訴えることにした。これは通常起訴された事案に対するもので、起訴猶予に対しては非常に高い壁が幾つも存在した。それでも諦めることなく、9年掛けて勝訴を勝ち取ったものでした。僕も、今回の案件は、被告人は事件に関係していたとしても被害者を殺害した犯人ではないと思います。」
多数決を無理に推し進める裁判長に最期の言葉をぶつけた。
「私も朝比奈さんの意見に賛成です」
月見里が手を挙げ、それにつられるように裁判員全員が手を挙げた。
「日本の世の中には、まだ正義が残っていましたね」
朝比奈が感動している頃、大神と川瀬はサイバーセキュリティー室を訪れていた。
「大神班長、本当にいいのですか」
吉田鋼鉄弁護士の事件前後の通話記録の資料を手に川瀬刑事が尋ねた。
「乗りかかった船でしょ」
大神は、憎たらしい朝比奈の顔を頭に描き、それでも薄笑いを浮かべた。
「朝比奈さんの裁判事件でもし正当防衛の判決が出たら、こんなことを調べても無意味ですよね。反対に、勝手に捜査していたことが刑事部長にしれたら、お目玉だけじゃ済みませんよ」
心配そうに大神の顔を見た。
「正当防衛ね・・・・・川瀬刑事は朝比奈との付き合いがまだ浅いからそう思っても仕方ないけど、あいつがそれで終わらせることは絶対にない。、白を黒には出来ないし、勿論黒を白には絶対にできない男だから、今回の事件もきっと白紙に戻させるだろうねどんな手を使っても」
確信を持って答えた。
「どんな手を使ってもですか・・・・・でも、裁判官の3人は正当防衛を認めるんでしょ。だったら、無理じゃないんですか」
どんな手の意味が分からなかった。
「確かに、採決を取り、裁判員の1人でも裁判官の3名に同意すれば可能だろうけれど、6人全員が認めなければ成立はしない。そうでなければ、裁判員制度にした意味がなくなってしまうからね」
大神には評議会の様子が何となく想像できた。
「それが朝比奈さんの奥の手なんですね」
大神の言葉に何となく納得でき、少し安心した。
「いいや、まだまだ最終兵器はあるんだけどね。今回は、それを出すまでにはいたらないと思う」
大神の最終兵器と言う言葉に少し震えた。
「私が調べた資料を置いておきました」
部屋に戻ると高橋刑事が待っていた。
「川瀬刑事、こちらの資料もコピーしてくれないか」
席に着く前に指示を出した。
「まず、吉田弁護士の通話記録ですが、8時52分に白井良二の携帯への通話が記録されています。気になったのは、それ以前に白井以外の携帯電話に1度、事件後の9時前に同じ番号に1度かけられていて、この携帯番号はその日以外にも何度も通話記録として残っています。ただ、この携帯番号の相手は分かっていません」
通話記録を見て川瀬が報告した。
「ちょっと待てよ。この携帯の番号は・・・・・・・・」
大神は自分のデスクに戻り引き出しから一枚の書類を取り出した。
「これは、被告人白井良二の当日の通話記録だけど、同じ番号が何度か記載されている。つまり、吉田弁護士が事件後にかけていた携帯の持ち主は、白井良二にも関わる人物ということだ。川瀬刑事、この番号の主を確認するように。それから、高橋刑事の報告をお願いします」
書類を川瀬に渡した。
「はい、白井良二について詳しく調べました。先回も話しましたが、次期社長と噂される出来の良い兄の良一とは正反対で、高校時代から悪い連中とも付き合うようになって、痴漢や暴行傷害などで何度も訴えられています。事件は全て示談が成立して起訴されることは1度もなく前科もついていないと報告しましたが、その示談交渉をすべて行っていたのが吉田弁護士だと分かりました。まあ、会社の顧問弁護士でもありますから、当然といえば当然なのですが、良二にとって兄と比較され、白井家の恥さらしと罵倒する父親よりも、吉田弁護士を信頼していたのかもしれません」
資料を手にして答えた。
「被害者の石川由幸さんについてはどうですか」
一応資料に目を通しながら尋ねた。
「資料にもありますように、以前は週刊パトスの記者でしたが、6年前に退職してフリーのライターをしていたようですが、取材した限りではどの雑誌社にも投稿の実態はなく、どのようにして生計を立てていたのか、今のところはまだ分かっていません」
「結婚をしていなくて、他に家族も居なかったそうですが、それについてはどうなんでしょう」
生計について疑問に思い質問した。
「両親も既に亡くなっていまして、結婚した姉がいたそうですが、その姉も亡くなっているようで、血の繋がった親族は誰もいないとのことです。近所付き合いも余り無かったようですが、数年前までは若い女性と一緒に住んでいたと言う情報もあり、付き合っていた女性はいたかもしれません」
資料にないことを付け加えた。
「被告人との関係はどうなっているのですか」
「週刊パトスに在籍中も傷害事件などの刑事事件には関わっていなかったようですし、今のところは接点は見当たりません」
「では、吉田弁護士と被害者の接点を洗い直してみるか。それと、帝王グルーブについても少し調べる必要があるな。乗りかかった船は、巨大な泥船かもしれないけど」
大神の言葉に二人の刑事が頷いた。そして、その日の夕方、久しぶりに糸川美紀のスマホに朝比奈から仕事後に『ゼア・イズ』で会いたいとのメールが届き、午後7時に行くという返信を送った。その後は、仕事が手に付かず気にしていた時計が6時を指すと、準備していた通りに立ち上がると『失礼します』の声を残して事務所を後にして、自宅へと向かった。何を着ていこうか迷った末に、白のスタンドカラーシャツにネイビーレーススカート、普段は付けないイヤリングにペンダント、化粧の手直しも済みしっかりチェックして、急いで目的の『ゼア・イズ』へと向かい、店の前で1度深呼吸をしてからゆっくりと扉を開けた。すると、足を進めた美紀の目には、見知らぬ女性を前にした朝比奈の姿が飛び込んできた。
「えっ、どういう事」
そう呟くと一瞬体が固まったが、時間が立ち少し冷静になると期待していた自分に呆れ、帰ろうと決めたその時に目が合い、朝比奈は頭の上で右手を左右に振った。美紀は仕方なく、文句の1つでも言ってやろうとテーブルへと向かった。
「あれ、今日はドレスアップして何かあったの」
美紀の姿に声を掛けた。
「あの、お邪魔でしたら、帰りますけど」
あなたの為にでしょの言葉を飲み込んだ。
「邪魔どころか、早く来てくれないかと待ってたくらいだよ」
隣の席を勧め、美紀は仕方なく腰を下ろした。
「こちらは、たまたま同じ事件で裁判員として選ばれた月見里恵子さんです」
朝比奈の言葉に反応して美紀とは対照的に、ベージュのプルオーバーに茶色のストレッチパンツ姿の恵子が頭を下げた。
「そして、恵子さんに紹介したいのは、朝比奈法律事務所でパラリーガルとして働いてもらっています糸川美紀・・・・・さんです」
後の方は美紀の顔を横目に見て少し口ごもった。
「恵子さん、相貌失人って言葉知っていますか」
「あっ、いえ、し、知りません」
「失顔症と呼ばれることが多いのですが、脳に何らかの異常が生じて人の顔が認識できない病気です
「まっ、まさか、糸川さんが、そ、その病気にかかっていらっしゃるのですか」
改めて美紀の顔を見た。
「事故などで脳に障害を受けて起こる場合が多いのですが、彼女の場合は先天的なもので、その病気の為に子供の頃からいじめなどで苦労したようです」
「えっ、今でも、わ、私の顔が分からないのですか」
「いいえ、最近の医学の進歩は目覚しく、3D画像診断で脳の1部に良性の腫瘍が発見され視神経を圧迫していたことが分かったのです。その腫瘍の摘出にも成功して、今は、僕たちよりもはっきりと認識できるので、先日のお姉様との密談も直ぐにバレてしまいました」
思わず頭を掻いた。
「わっ、私が無理にお願いしたのです。も、申し訳ありません」
美紀に向かって頭を下げた。
「別に優作さんが誰と会おうと構いませんので、気になさらないでください」
冷静を保ち、感情を表に出さないように答えた。
「その話は置いといて、今日美紀さんに来てもらったのは、ちょっと調べてほしいことがあったからなのです」
「えっ、私がですか」
突然の要望に驚いた。
「大神にも頼んではあるけど、事件の事しか調べてはくれないだろうからね。美妃さんも分かってくれてると思うけど、普段から事件には関わるなと言われている姉さんに依頼する訳にもいかないし、今一番頼りになるのは美紀さんしかいないから」
顔の前で両手を合わせた。
「私なんて力になれませんよ。能力のある優作さんが調べればいいんじゃないですか」
そんな言葉には騙されないと横を向いた。
「できるだけ調べようとは思っているけど、今はちょっと他の仕事で忙しくて時間が取れないんだよね」
「えっ、他の仕事って、優作さん就職したんですか」
「あっ、いや、今はまだアルバイトなんだけど、朝から夜まで拘束時間が長いんだよね。その代わり、今日は何でも好きなものをおごるから」
「何でもって言ったよね。もし、無かったら、引き受けませんからね」
美紀も困らせてやろうと言い返した。
「はい、武士に二言はありません」
「お腹がすいているから、うな重と、松阪牛のすき焼きを皆の分もね」
どうだという顔で朝比奈を見ると、恵子には無理難題を言っての完全な嫌がらせだと感じられた。
「あるよ」
マスターはその声に反応し早速料理をはじめ、朝比奈はガッツポーズをとった。
「マスター、すき焼きの2つはテイクアウトでお願いします」
朝比奈の言葉にマスターが頷いた。
「それで、私は何をすればいいのですか」
美紀は諦めて尋ねた。
「一応、紙にしたためておきました。よろしくお願いします」
朝比奈はポケットから紙切れを取り出し差し出した。
「えっ、こんなにあるの」
紙を広げて驚いた。
「そうなの、事務所の中でも、とても優秀なパラリーガルと常々姉貴から伺っておりますので、それくらいは朝飯前だと思いますけど、どうでしょう」
運ばれてきたうな重を頬張りながら言った。
「何とか努力させていただきます」
負けじと、うな重を頬張り、恵子は二人の会話に付いて行けなくて、しばらく会話も途切れた。
「恵子さんを送って行きますので、お先に失礼します」
朝比奈は、恵子が食べ終えるのを待って立ち上がった。
「えっ、えっ、え、どういう事」
『どうして恵子さんなの』と心の声が漏れてきた。
「美紀さんも家までの帰り道は、お気を付け下さい。念の為に、タクシー代も置いておきます」
テーブルに5000円札を置いた。
「マスター、いつものようにツケといてください」
頷くマスターが用意してくれた、すき焼きを受け取り2人は出口に向かった。
「あっ、あの、良かったのですか」
美紀の方を向いて尋ねた。
「ちょっと見栄を張っちゃいましたかね。3000円にすればよかったですかね」
少し後悔していた。
「あっ、そう言う意味ではなくて」
頓珍漢な答えに戸惑っていた。
「という事で、タクシーで帰れませんので、市バスで送ることになりました。申し訳ありません」
指差して、市バスの停留所に向かった。
「あの、朝比奈さんと糸川さんは、ど、どのような関係なのですか」
朝比奈の美紀に対する態度が理解できなかった。
「関係ですか・・・・・・そうですね、ある事件で彼女を助けたことがあって、それ以来の付き合いなのですが、僕のことを理解してくれる数少ない友人の1人でしょうか」
市バスが停留所に近づき、ウインカーを点滅して止まると扉が開き、2人は1番後ろの席に腰を下ろした。
「ど、どんな事件だったのですか」
興味を示して尋ねた。
「話せば長くなりますが、法律に関する仕事を目指していたのですが、色々な事情で諦めることになってしまった。それを僕が、姉の法律事務所などを紹介して、今は弁護士を目標にパラリーガルとして頑張っている」
その時の状況を思い浮かべて微笑んだ。
「朝比奈さんは、ふっ、不思議な人ですね」
「えっ、変人とは言われますが、不思議な人とは初めてです。それって、褒め言葉として受け取ってもいいのかな」
「ど、どうして、他人の為に、そんなに一生懸命になれるのですか」
今まで出会ったことのない人間の存在に驚いていた。
「親父や姉貴の影響もあって、子供の頃から兎に角曲がったことが大嫌い。これでも、大学を卒業して、それなりの会社に就職したんですよ。人事部に配属されたある時、新人の面接官の助手をさせられた時、その面接官は履歴書に記入された大学名だけで判断して、人間性や可能性を見ようとはしなかった。人間の価値って何で決まるのだろう。高学歴、肩書き、そんなものではないはずだ。人間の価値は、その人自身の持つ人格だと思っていた若き日の僕は、その面接官を殴ってしまった。勿論会社を辞めることになり、そういう会社の組織や本質は今も昔も変わらず、ここに至っても就職することができないでいる訳です」
話が進むように、市バスもスムーズに運行し目的の停留所に着き、2人は市バスを降りて恵子のマンションへと向かった。
「今の、よ、世の中には、認められない珍しい程に変人なんですね。で、でも、とても素敵です」
夜空に輝く満月を見上げた。
「そんな変人に、惚れるなよ」
ポーズを決めて答えた。
「あ、朝比奈さん、そんな言葉もポーズも、まっ、全く似合いません。そ、それに、女心が分からない男性は、さ、最低です」
顔を左右に振ると、しばらく無言で歩いた。
「これ、お姉さんに食べてもらってください」
マンションの部屋の前で、すき焼きの1つを恵子に渡した。
「今日は御馳走様でした。また、また会える日を楽しみにしています」
恵子が頭を下げた。
「僕も楽しみにしていますが・・・・・・あっ、会えるといいですね。それでは」
頭を下げると恵子に背を向けて歩き出したが、なぜか朝比奈の言葉が心に残った。そんなことも知らないで、恵子のマンションを出た朝比奈は、徒歩で自宅へと帰ろうと近道になる、薄暗い通りへと足を進めると、突然走り出して振り返った。その先には、朝比奈の跡をつけていた2人の男性の驚く姿があった。
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