マスクドアセッサー

碧 春海

文字の大きさ
上 下
1 / 13

プロローグ

しおりを挟む
 最近、テレビのサスペンスドラマの法廷シーンで正面に3人の裁判官を含め、9名の男女が腰を下ろす場面が多くなりました。それは、裁判員制度が採用された為で、裁判官以外の6名が国民の中から選ばれた裁判員で、3人の裁判官と共に検察官が起訴した案件に関して、有罪か無罪か、有罪の場合はどのような刑にするのかを審議する制度です。国民が刑事裁判に参加することにより、裁判の内容や手続きに国民の良識が反映されると共に、司法に対する国民の理解が深まり、その信頼が高まることが期待されています。
 裁判員裁判を行う裁判所は、各都道府県の県庁所在地にある地方裁判所の他、函館、旭川、釧路を含む50か所と、一部の地方裁判所支部の立川、小田原、沼津、浜松、松本、堺、姫路、岡崎、小倉、郡山を含めて計60か所です。そして、裁判員はその裁判所の管轄区域に居住する20歳以上の有権者の中からくじにより無作為に選ばれます。ですので、転居した場合を除き、居住地を管轄する地方裁判所以外の裁判所の裁判員に選ばれることはありません。反面、裁判所の管轄内に居住する人は裁判員になる可能性があるのです。その確率は0.01%、全有権者の約13500人に1人になります。
 先程裁判官と共に審議することと述べましたが、大きく分けて法廷での審理に立ち会うこと、評議での意見を述べること、判決の宣告に立ち会うことの3つです。法廷での審理とは、法定で取り調べられた証拠を元に起訴状に書かれた犯罪行為を被告人が犯したかどうかを判断します。評議においては、法定で取り調べた証拠に基づいて行うことが重要で、同じ証拠を元に経験もバックグランドも異なる裁判員と裁判官とが、十分に論議を尽くして全員一致の結論を導くことが大切ですが、どうしても意見がまとまらない場合は、多数決で結論を決めることになります。但し、多数決と言っても、その多数の方には1名以上の裁判官が必要となります。そして、裁判員裁判の対象事件は、殺人、傷害致死、強盗致死傷、現住建造物等放火、身代金目的誘拐、危険運転致死、保護責任者遺棄致死、覚せい剤取締法違反などです。
 何れも、とても重要な評決であり、その人のその後の人生を左右する為、裁判員に対しての負担を少しでも軽くするようにと、制度設計や運用上にも多くの工夫がされています。裁判を始める前には、検察官、弁護士、裁判所により公判前整理手続きを実施して争点や証拠を練り込み、審理も集中して行うように配慮されています。ですので、1日5時間、期間として5日前後で殆どの事案が終了しています。それでも、裁判員法により一定の秘密を守る義務が課せられ、その違反に対して罰則が定められていることや、事件関係者などから危害を加えられるのではないかなどの不安や、その他の精神的負担を感じられる方も多い。ただ、裁判員法に従ってやむ得ない事由がない限り辞退はできません。該当地域に居住していれば、あなたのもとに今日にも名簿記載通知書が届くかもしれません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

密室島の輪舞曲

葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。 洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

特殊捜査官・天城宿禰の事件簿~乙女の告発

斑鳩陽菜
ミステリー
 K県警捜査一課特殊捜査室――、そこにたった一人だけ特殊捜査官の肩書をもつ男、天城宿禰が在籍している。  遺留品や現場にある物が残留思念を読み取り、犯人を導くという。  そんな県警管轄内で、美術評論家が何者かに殺害された。  遺体の周りには、大量のガラス片が飛散。  臨場した天城は、さっそく残留思念を読み取るのだが――。

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

声の響く洋館

葉羽
ミステリー
神藤葉羽と望月彩由美は、友人の失踪をきっかけに不気味な洋館を訪れる。そこで彼らは、過去の住人たちの声を聞き、その悲劇に導かれる。失踪した友人たちの影を追い、葉羽と彩由美は声の正体を探りながら、過去の未練に囚われた人々の思いを解放するための儀式を行うことを決意する。 彼らは古びた日記を手掛かりに、恐れや不安を乗り越えながら、解放の儀式を成功させる。過去の住人たちが解放される中で、葉羽と彩由美は自らの成長を実感し、新たな未来へと歩み出す。物語は、過去の悲劇を乗り越え、希望に満ちた未来を切り開く二人の姿を描く。

双極の鏡

葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。 事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。

ダブルネーム

しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する! 四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。

処理中です...