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第二章

22 私の根回し R15

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 帰宅後、私は今日の一件の説明と次の作戦について、アルドと護衛5レンジャー全員と打ち合わせを行った。
 
 
「つまり、次は兄上と話をしたい、と?」
 
「そう」
 
 今回のミッションは、二人の関係の修復である、そのためには双方の意識改善が必要不可欠であることから、ローザ様の夫である王太子殿下とも話をする必要がある。
 いかんせん、ローザ様が積極的に関係を修復しようと考えていらっしゃらないご様子なので、尚更だ。
 
 
「……だが、エイミーは兄上が苦手だろう?」
 
 ギクリ……っ。
 
 実はそうなのだ、私、アルドのお兄さんみたいな、ザ、男っ! という感じの人って苦手なのである。
 
 “自分、甘い言葉なんて口が裂けても言いませんから”
 
 っみたいな顔して、性欲だけは一丁前でしかも絶倫で、やることだけしっかりやる、みたいな……まぁ、私の勝手なイメージですけどね?
 
 
 
「だから、今回は、ビルとリタと一緒に行こうかなって!」
 
 
「えぇ~! また俺留守番かよぉ~!」
 
 小さくガッツポーズをするビルとリタの横で、サムがゴネだす……確かに、サムと出かけることって本当に護衛目的の街とかだけかもしれない。
 
 
 そんなサムに、すかさずリタが鋭いツッコミを入れる。
 
 
「サム、だってあなた、恋愛なんて興味ないでしょう? 女心なんてわかるの?」
 
「恋愛? 女心? 俺だって、国じゃモテモテだったんだぜ?」
 
「モテて、どうしたの? 何人食ったの?」
 
「……え? ……あ、いやそれは……(ごにょごにょ)……」
 
 
 K.O……サム、激弱である。
 
 
 リタは、これだから兵器バカはっと、バッサリとサムを切り捨て、くるり、と何事もなかったかのように、笑顔で私のほうに向きなおった。
 
 その横で、落ち込むサムをレイがよしよし、と慰めている……レイとリタがバチバチなので、リタの被害者には優しいレイなのだ。
 
 それにしても、女は怖い……何人食ったか、だなんて……ウケる。
 ん……? え、まさかサムって童貞?
 
 
 
 私がサムに対して失礼にも童貞疑惑をかけていると、アルドは腕を組み、何やら考え込んだ様子を見せた後、口を開いた。
 
 
「リタは、まぁそうだな……いいかもしれん、兄上も男の言葉よりは聞く耳を持つかもしれない……だがビルは……必要か?」
 
「なっ! レジェンドっひどいですっ! 私とて、お役に立てることがあるかと存じます!」
 
「……例えば?」
 
「た、例えば? そうですね……女性の口説き方などですかね? あとは……女性の喜ぶことをお教えすることなども可能かと……」
 
 アルドはそう言うが、私的にも、ビルの手練手管はそれなりに使えることもあると思ったので、今回連れて行こうと思ったのだ……まぁ、リタの制御人員も兼ねてだが……。
 
 
「ビル、兄上は初対面の令嬢を口説くわけではない、失ってしまった妻の愛を再び得なければならないのだぞ? まさに、不可能を可能にするほどの難問だ……お前にそのアドバイスが出来ると?」
 
 
 どうしたんだアルド……お兄さんの事なんてどうでもいい、と言っていたくせに、なんだか、急に本気だな。
 
 
「そ、それはですねっ! 奥様と言えど女性ですし……(ごにょごにょ)……」
 
「もう、アルドってば意地悪な事言って……お兄さんとビルの相性が悪そうならそう言ってよ、代わりにレイに頼むし」
 
 とはいえ、またもやレイに頼むとなると、さすがにレイも疲れるだろう……それに、ローザ様の話しを直接聞いているので、良からぬ情報までつい口を滑らせてしまう可能性もある。
 
 
 
「いいや……うってつけの者がいるだろう、世界随一の愛妻家であり、妻への愛の深さたるや計り知れない男が……」
 
 
 アルドは、自信たっぷりに言った。
 
 
 ……え、誰?
 
 
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
 
 
 ロン以外の私達は、全員が視線を交え、早く誰のことか聞け、とその役目を押し付け合う。
 
 すると、沈黙に耐えかねたアルドが、自ら口を開く。
 
 
「……誰の事か聞かないのか? エイミー」
 
 
 おっと、名指しっ! 名指しですかアルドさんっ!
 
 ロン以外の4人が、自分でなかったことに明らかにホッとしている様子が視界に入り、なんだかおもしろくない。
 が、ご指名を受けてしまったからには何か答えねばならないだろう……。
 
「え、誰かなぁ? 何となく一人だけ心当たりがあるような気がしないでもないんだけど、その方はとっても忙しいし、気軽に声かけられないかなぁ~って……」
 
 
 私が遠回しにとぼけるも、アルドは笑顔で私のなけなしの努力をあっさりと無視した。
 
 
「安心しろ、忙しいのは忙しいだろが、エイミーの頼みならばその者が断ることは絶対にないだろう、頼んでみたらどうだ?」
 
 
 アルドは、自分が誰の事を指しているのか、ここにいる全員がわかっていると思っているのだろう、まぁ、事実、アルドが誰の事を言っているのかは大体わかっている。
 
 だが、そういう問題ではない……さすがのお兄さんも弟がいたのでは、話せることも話せなくなってしまうかもしれない、まぁ、その逆もありえるかもしれないが。 
 
 
 
 
「えー? どうしようかな……国王陛下・・・・には恐れ多くて頼みずらいなっ(テヘペロ)」
 
「……っな!」
 
「「「「……?!?!」」」」
 
 私の言葉に、護衛4レンジャーは息をのみ、アルドは信じられないっと言った表情で私を見る。
 
「……エイミー? なぜ父上がでてくるのだ?」
 
「なぜってなぜ? だって、国王陛下は世界髄一の愛妻家で、王妃様を想うお気持ちは何よりも深そうだもん」
 
 
 私は嘘を言ってはいない、現に王妃様がこの屋敷に突撃訪問してきた時も、丁度そんな話をして王妃様のご機嫌を取ったばかりである。
 
 
「ああエイミー……わざとか? わざとなんだろう、君って人は……」
 
 
 ええ、わざとです。
 
 護衛の4人は、余計な事言うな、とばかりに私を見て何か言いたげに口をパクパクさせている。
 でも、こうでもしないとアルドは、自分がお兄さんとの話し合いについてくると言いかねないではないか。
 
 
 
 そして、ここでようやくこの人の声が聞こえてきた。
 
 
「……世界一の愛妻家……レジェンドの事、だと思う……」
 
 
「……っ! (ニコニコキラキラ) ……ゴホン……うむ……そうかロン、お前はそう思うのか、そうかそうか、なかなかわかっているじゃないか、お前には特別に今度ドラゴンの脱皮した鱗をやろう」
 
「……やった、嬉しい……ドラゴンの鱗、高く売れそう……」
 
 
 護衛4人がドッとざわつき、羨ましそうにロンを見ている。
 
 まったく、現金な奴らめ……今のを見ていると、本当に無欲な人間が一番得をするんだな、とつくづく感じる……よかったね、ロン……でも、売ったらダメだよ……すぐにあしがついちゃうからね、それに、誰も本物だなんて信じてくれないと思うよ……残念だけど。
 
 
 現存するドラゴンの鱗は、この世界にかつていた大昔のドラゴンの鱗であるとされており、蓄積された歴史も相まって、その希少価値は国宝級に匹敵する……なぜならば、その見た目の美しさもさることながら、ドラゴンの鱗は魔力を通さないため、身に着けていると様々な魔法からその身を守ってくれるとされているのである。
 古い鱗であればあるほど、付加価値がつくのだ。
 
 ちなみに、私もアルドからものすごく古いブルードラゴンの鱗を結婚式でもらって、ペンダントにして首から下げている。
 
 
 
 つまり、何が言いたいかというと、アルドがロンにやると言った脱皮したての鱗には、さほどその価値はないが、欲しがる人はいるため、本物となれば、相当な高値で売れるは売れるだろう、ということ。
 
 
「アルド、冗談はそれくらいにしてさ……」
 
「……冗談? 私はこれまでに一言も冗談など言っていないが……兄上との話し合いの場には、私も同席する、決まりだ」
 
「えぇ……」
 
 あれ? ロンがアルドを褒めただけだった気がするんだけど、そこまで話が飛躍しちゃったの? おかしいな、なんか聞き逃したかな……。

 
 
 
 その後のアルドの言い分としては、私がアルドのお兄さんを苦手としている以上、面と向かってお兄さんに言いたいことを言えるのは自分しかいないだろ、という事らしいが……。
 
 気まずくないのだろうか……仮にも、私達って、お兄さんにとっては、少しは後ろめたいことのある夫婦なわけだし……。
 
 
 
 
 結局、アルドの独断により、お兄さんとの話し合いには私とアルドの2人で行くことになり、ビルとリタの出番はなくなってしまったのであった。
 
 その結果、リタがショックで荒れてしまったのは言うまでもない……荒れるリタをなだめるのは、同郷であり歳も近いビルの仕事だ、すまないビル、頼んだぞ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そしてその夜、私は再びバードコールに呼びかける。
 
 
 
「んんっゴホンっ! チェッ、チェッ、チェッ、マイクチェックワン、ツーッ! ……っリュシアーン! 聞こえますかぁー!」
 
 
 
 
 
『……聞こえません』
 
 
 
 
 
 聞こえてんじゃねーか!
 
「ねぇねぇ、聞きたいことがあるんだけど、今25歳くらいで、当時学園の生徒会長をしていた、金髪に緑の瞳の人って知ってる? 何となく、アルベール王子に似てるらしいんだけど」
 
 どうかっ! 知っていてくれリュシアン、頼む!



 
『……兄上に似てる……? ああ……クリストフのことか? ギャバン公爵家の三男だよ……先代の王弟の子供だったかな』
 
 ビンゴっ! やっぱり髪の毛と目の色は血筋かっ! 
 思ったより簡単に見つかったな……後は……。

 
「ねぇ~リュシアン君、そのクリストフさんとやらの今現在のお姿を収めた写真とか手に入ったりしな~い? ってか、その人結婚してるの? 恋人は? 今どこで何してるの?」

 ざ、質問攻めである。

 ローザ様に、クリストフさんの写真とともに、彼の今の近況を教えてあげれば、彼女も喜ぶだろうし、クリストフさんがすでに結婚していたり恋人がいたりもすれば、初恋の人なんて忘れて現実を見てくれるだろう。

 そう……ローザ様の現実……自分には浮気して子供を作ってきた夫がいるという悲しい現実を。

 悲しいが、一国の王太子妃ともなれば、ローザ様もそれなりの覚悟を持って結婚したのだろう……だからこそ、彼女の怒りは浮気した夫に、ではなく、その夫が浮気した事を申し訳なさそうにメソメソおどおどして自分に気を使っている、という部分なのだろう。


 今のローザ様には、ほんの少しの心のオアシス……つまり、イケメンの補充が必要なのかもしれない。

 あわよくば、“推し”を見つける事が出来れば、なお、可。




『エイミー……これ、言っていいのかわかんねぇけど……クリストフのことなら、ブルーノ騎士団長に聞いた方が早いぞ……』
 
「ブルーノ兄様に?」
 
 
 っ……おっと、ブルーノ兄様という言葉が出ただけで、隣にいるアルドから殺気が……っ……。
 

『……俺から聞いたって言うなよ? ……妹のお前にはショックかもしれないが、別に本人達も隠してる様子もないからいうけど……ブルーノ騎士団長とクリストフは、そういう仲なんだよ』
 
「……そういう仲?」
 
『……そういう仲だ』
 
 












 ……ハッ!
 
 まさかっ!! BがLしちゃう、あれですかリュシアンさん! え、しかも、ブルーノ兄様が?! 私の推し兄が?!
 
 ヤバい……ヤバすぎる……。

 だから、ブルーノ兄様には今までも女の影がなかったのか……なにそれ、推しがゲイとか、最高でしょ!
 どこぞの馬の骨にとられる心配がないなんて!

 
「……尊すぎる……何それ、ご褒美ですか? もちろん、ブルーノ兄様が攻めよね? バリタチよね?」
 
『は? 何言ってんのかわかんねぇよ』
 
 っチ……使えないヤツ。

 なぜわからないんだ……クリストフさんを見た事はないが、アルベール王子に似ているなら、美人さんで、絶対に受けのネコちゃんだろ。


 すると……。

 
「いいかリュシアン王子、エイミーは、ベッドの上において、彼女の兄上がクリストフとやらに突っ込む方なのか、と聞いている」
 
 ぎゃっ! アルドっ何、突然参加しちゃってるの?! しかもそんな明け透けに訳さないでっ!
 
 
『……なんだ、エドゥアルド王子もいたのかよ、まぁ別にいいけど……っていうか……知らねぇよ、どっちでもいいだろそんな事! お前、よく自分の兄貴でそんなことまで想像できるな!』

 
「いいえリュシアン……これはとても重要なことなの……兄とか関係ないの(推しだから)……でもまぁいいわ、素晴らしい情報をありがとうリュシアン、今日ほどあんたに感謝したことはないかもしれない……」
 
『んなわけねぇだろ、馬鹿エイミー! 俺はいつもお前に感謝されまくってたわ!』
 



 とはいえ、兄様にいきなり恋人の写真くれ、なんて言ってもいいものだろうか……? ちょっとハードルが高いような……。
 
 まず、何で俺に頼むんだ、から始まって、誰に何を聞いたか言わなければならなくなるだろう。

 リュシアンは俺から聞いたと言うな、と言っていたし……。




「リュシアン、どうにかクリストフさんの写真、お願いできないっ? 協力してくれたら、アルドが脱皮したドラゴンの鱗くれるって!」

 ごめんアルド……鱗、1枚予約できますか? ……。


 
『まじかよ! ……でも、脱皮したての鱗って……魔法防御のチカラはあるのか? ……まぁ写真な、心当たりはあるから、貰ってきてやるよ』
 
「本当?! やったぁ! ありがとうリュシアンっ!」
 
 
 それにしても、ドラゴンの鱗、大人気だな……これはもしや、今後もいい交渉材料になるのでは?
 
 と、私がリュシアンバードコールの前で悪い顔をしていると、すかさずアルドから指摘が入る。


 
「……エイミー、ドラゴンの脱皮は数十年に一度しかないんだぞ?」
 
「あ、そうなの?! でも、8頭もいるから、順番に脱皮するでしょ?」
  
 
 ドラゴン、どんだけ鱗大事にしてんだよ……もっと頻繁に生え変えたらいいのに。
 
 
 
 
 こうして、ドラゴンの鱗の件は無しにしても、なんとかクリストフさんとやらの写真をゲットできそうである、何とも幸先がいい。
 
 おまけに、ブルーノ兄様がゲイだと知ったからか、アルドの機嫌がとてもよくなったのである、リュシアン、今回は本当にいい仕事したな、まじで。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 それから数日、アルドのお兄さんのアポがなかなか取れないため、私は一本脚本を書いて、劇団の練習場を訪れていた。
 
 私がシュドティリアでマリーの紹介で出会った劇団は、あれから私の書く脚本で大ヒットを飛ばし、エスティリアとシュドティリアとを行ったり来たりして公演を続けている。
 彼らは近く、西と北にも行くんだ、と意気込んでいるほどに、今、ノリにノっている劇団となったのである。
 
 
「やっほぉー!」
 
「エイミーちゃん! ビルさんとロンくんも、いらっしゃい!」
 
 
 劇団に来る時の護衛はいつもこの2人だ、なぜなら他を紹介するのが面倒だから、劇団員は人数が多いしね。
 
 
「今日は、一本短編の脚本持ってきたの……どうかな、見てくれる?」
 
 私が団長に書き立てほやほやの脚本を手渡すと、団長はいつものようにその場ですぐ驚異の速読で内容を確認する。
 
 
 
 
 
「わぁお……どうしちゃったの、攻めたわね……学園物のBLとは……」
 
 
 おや、団長……もしや、お好きですか?
 
 ちなみに団長はおかまだ……女口調ではあるが、見た目はゴリゴリのおっさんである。
 
 
「そうなの、在学中に出会って、二人が卒業したその後まで……二人が結ばれて、その後も幸せですって内容にしたかったの」
 
「モデルがいるのね?」
 
 さすが団長、鋭い……。
 
「モデルはいるけど、それよりもこの舞台を見てもらいたい人がいるの……もしやってくれるなら、すごいスペシャルゲストになると思うわ」

 王太子妃も観に来た舞台となれば、かなりの評判になるだろう。

 
「うぅ~んっ! お金のいい匂いがプンプンするわぁ~、最近BLも根強いファンが多いから、そろそろ私達も演じ手として、手を出してもいいかも、と思ってたところなのよぉ~、もちろん協力するわ、この脚本、買わせていただきます」
 
 やった! まいど~。
 
 ちなみに、私のこの手の収入は、護衛達へのプレゼントを買ったり、屋敷の使用人たちへのプレゼントの購入に使っている。
 
 アルドにバレない程度に使って、無くさないといけないからだ。
 
 
「あ、ちなみに、受けのネコちゃん役は、ジャンね、これは譲れない」
 
 
 何故かって? 王族に似た色の金髪だから、それだけ。
 
 
 
 
 
 
 
 こうして、私の根回しはある程度済んだ。
 
 
 後は、王太子殿下との話し合いを済ませたいところなのだが……もしかして、避けられているのだろうか?

 そろそろ王妃様にも途中経過を報告しなければ、どうなっているのかしら? と、聞かれてしまうかな、と心配なのだが……。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ところがその夜……。
 
 
「エイミー、ようやく兄上が観念して、明日、我々との時間を設けると約束したぞ」
 
 ん? 観念して、という事は、やっぱり私達と話しをするのが嫌で、避けられていたという事だろうか?

 それにしても明日?! 急だなしかし! ……だが、散々待たされたので、準備は万端である。

 私を見くびるでないぞ王太子殿下め。


 
「本当?! そろそろ王妃様にも中間報告しないとヤバいかな、って焦ってたところだったの、良かったぁ」
 
「……母上に報告? そんなものは必要ないだろ? 今以上に母上に気に入られて、余計な仕事を頼まれてしまうだけだ」
 
 え、そうなの? それは面倒だな……でも、引き受けたからには、ホウレンソウは大事だと思うんだけど……。
 
「安心しろエイミー、城で起こっていることはすべて母上の耳に入っているはずだから、エイミーが義姉上に頻繁に会いに行って、楽しくやってくれていることもすべてわかっていると思うぞ、今の時点で、母上から何も言ってこないのが、その証拠だ」
 
 アルドは、せっかちな母上ならば、頼んでからなにも進展が見られないようであれば、必ず催促してくるはずだ、と付け足した。
 
 なるほどね……私は今、様子を見られているのか……王妃様のミッションをクリアできる嫁かどうか……。
 
 
 ……がぜん燃えるぜ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 こうして、私は決戦に備えるのだった。





 しかしその夜の就寝時……。



「なぁ、エイミー?」

「……んっ……んん……っはぁ……」



 アルドはやっぱり今夜も私を揺さぶっている。


「……エイミーは私が世界随一の愛妻家だと感じていないのか?」


 此奴は今、あぐらをかく自分の上に私を向かい合わせに座らせ、そのまま挿入し、ゆさゆさと出し入れしながら、上目遣いで私に話しかけていた。


「……っぁ……ん……っ! っあ、あ、ぁっ……」

 私はそれどころではない、突起がこすれて気持ちいいわ、アルドの大きいのが奥を突いて気持ちいいわ、早くイキたい……。

 と、言うか、何日前の事を根に持っているんだこの人は。


「なぁエイミー? 私の愛が足りないのか? ……っこん……っなに、毎……っ晩、君にっ愛をっ全身でっ伝えてい……っ……るというのにっ……っ!」


「っひゃっぁっ!! んんーーっ!! ……(ビクンビクンッ)」

「……っ!」


 奥を突きながら、突起を指でこねてくるアルドに、私は彼の頭を抱え込むように抱き、胸を押し付け果ててしまう。

 どうやらアルドもこっそり果てたようだ。





「……アルド……セックスしてるからって、愛が伝わるわけじゃないんだからね……ん……っんんっ! っ」


 ピチャピチャと水音を響かせるように、唾液たっぷりに舌を絡ませ、深く口吻するアルド。

 イッたばかりで息が上がっているのに、苦しいではないか。


 大体、セックスは愛がなくても出来る代表的な行為ではないだろうか。
 相手の顔を見て、ゆっくり唇を重ね合わせるようなキスのほうがよほど愛が必要な気がする。


「こんなにも愛してると、囁き、口付け、身体を交えているではないか……」

「……アルド、忘れたの?」


 アルドが私に手紙を書いてくれていた頃、離れていても私の事を思い出して考えてくれている事がとても嬉しかった。

 アルドに嬉しい事があった時には、私も喜ぶだろうか、と考えてくれたり、アルドに悲しい事があった時には、私が悲しい思いをするのは嫌だ、側にいてあげたい、と思ってくれたり……。

 私の為に転移魔法を頑張って覚えるんだ、と言ってくれたり……そんな事をストレートに伝えられると、私はとても愛されているな、と感じる。

 自分は愛されているな、とを、どこでどう感じるかは、本当に人それぞれであるため、なんとも言えないが、飾りっ気のないストレートな気持ちが、優しい感情であれば、大多数が嫌な気分にはならないのではないだろうか。


 まぁ、ドエムの人やドエスの人はちょっと計り知れない部分がありますけどね……。

 私の夫は、ドエス・エムのハイブリッド種なので、ますます分かりませんし理解に苦しみます。


「明日は兄上に、私が日頃どれだけ妻に愛を伝えているのか教えてやろうと思ったんだが……まさか自分も足りていなかったとは……」


 まさかこの人、セックスレスの兄に、新婚の自分達がどれだけの頻度でヤッてるか話すつもりじゃないだろうな?!
 それだけは断固阻止せねば!

「ねぇアルド……私達のことはさ、お兄さんには秘密ね? 私がアルドの前では、こんなに乱れているなんて知られたら、恥ずかしいもん……」


 私はアルドが喜びそうな言葉で彼を説得する。


「……そう言われてみたらそうだな……妻が夫にだけ見せる妖艶で乱れに乱れる姿を知るのは、夫である私だけの特権だ……兄上にエイミーのそんな姿を一瞬でも想像させるわけにはいかないな」


 よし、チョロくて助かるっ!


 しかし、なぜこの会話でアルドの子ドラゴンが復活するのかはまったくわからないが、間違いなくソレは復活していた。

 ムクムクと私の中に入ったまま硬さを取り戻したソレの持ち主は、私をぎゅっと抱きしめたまま、パタン、と背後に倒し、そのまま私をベッドに沈める。







「エイミーがあんまりにも可愛い事を言うから、我が息子がもう一度、とわがままを言っている……」

「まったく、わがまま息子はちゃんと躾けて貰わないと困ります……(チュッ)」


「エイミー、私の言う事はきかないんだ、君が躾けてくれ……(チュッ)」

「……(チュッ)」

「……(チュッチュッ)」

「……(チュッチュッチュッ)」




 こうして私は、決戦に備えるのであった。


 
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