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4 生きていればいつか会える

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「だからこそ、その滅多に続くことの無い恋人を逃がすべく、其方は王子に身を任せたというのだな」
「生きていればいつか何とでもなる、ということは私達には常識でしたから」

 あっさりと彼女は言い放つ。

「ではその恋人とやらは、本当に逃がされたのか?」
「私が王子に自死をちらつかせながら、彼を辺境領の森の辺りまで運び、追い払うところまで確認できました。
 さすがにその時はあの王子も言いました。これで満足か、と」
「満足したのか?」
「ええ」

 すっ、と首を伸ばし、晴れやかな表情を見せてくる。

「最悪なのは、どちらかが死んでしまうこと。
 生きていればいつか会える。何があろうが自分の教わった、そしてその後身につける全ての知識と知恵を駆使して生き残り、何処かでお互いを探し当てる。
 そう私達は常に語り合っていましたから」
「ではもしその時、相手が殺されていたなら」
「七年前の私は、確実に自身を即死させていたでしょう」

 その言葉は酷く軽く、ハリエットの唇からこぼれた。

「では話を前に戻そう。第二王子が第一王子一家の殺害計画を立て、専門業者に委託させた件だが、動機を聞いたことがあるか?」
「はい」

 背後の国王夫妻が震えている。
 第二王子は、彼等のもとに生まれたただ一人の子だったのだ。
 男子の長子相続が基本のこの国において、残るのは後から入れた妾妃が産んだ現在十五歳の第三王子だけである。
 王女ならば、同じ妾妃から三人生まれている。
 第二王子が立太子したのは、彼が成人した五年前だった。
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 その後二年経ってもなかなか妃候補が決まらない中、アンネリアは皇帝の勅命により、第二王子の婚約者としてやってきたのだった。
 アンネリアはその時既に二十五歳。
 跡取りである弟の補佐を一生していこうと思っていた矢先の指名だった。
 家族達からの、

「まあこの家に生まれたからには仕方がない」
「良い殿方だったらそのまま居着いてもいいのよ」
「姉上を扱いきれる男性が居たら見てみたいな」

 等の声に送られてやってきたのだった。
 だがまあ、これは確かに怪しいことだ、と彼女が思うのには時間はかからなかった。
 まず最初に手をつけて――そして今日の今日まで、解けなかった謎の答えが今、彼女の目の前にあったのだ。
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