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16 お茶会の終わり(2)

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 警察は到着すると、サムウェラの遺体を引き取っていった。
 具合が悪く、妻の死も知らぬタメリクス侯爵は病院へ搬送された。
 男爵夫妻はお互いの今までの暮らしそのものを反省するということでやり直しをはかる、ということで戻っていった。
 伯爵一家は、善は急げとばかりに婿予定の男をつまみあげたまま、帰っていった。
 残った者は、当初の予定通り、ティムスの実両親と兄達、離婚が決まったワイター夫妻、そして弁護士夫妻だけだった。
 場所を常の居間に移し、茶ではなく別の飲み物を、とルージュはメイドに命じた。
 着席した義父母と義兄達にルージュは頭を下げる。

「このたびは、わざわざのご足労ありがとうございました。
 残念な結果と、残酷な場面を皆様に見せつけてしまって申し訳ございません。
 お義父様お義母様には結婚後、何かとよくしていただいたのに本当に……
「いや何、あれのしたことを考えれば仕方が無い。
 そうだろう?」

 多少何か言いたそうな妻に対し、義父はそう言って控えさせた。
 妻が末の息子に甘かったことに気付いているのだろう。

「ありがとうございます。
 ところで、あのひとが闇マーケットをあれだけ毛嫌いしていたのは何かあったんですか?」
「あれは昔、誘拐されたことがあってな」
「え」
「知りませんよそんな」

 兄達が初耳だ、とばかりの表情になる。

「お前等には内密にしていたからな。
 お前等が学校の寮に居た頃だ。外で乳母と散歩していた時にさらわれてな、もう少しで闇ルートに乗っていたかもしれなかったんだ」
「それであいつは学校の寮に入れなかったんですか! 
 納得いったよ、なあ!」
「そうそう。
 俺等ばかり厳しい学校に叩き込んで、とずっと思ってたんだけど、一応理由があったんだな」
「ええそうですよ…… 
 戻ってきたはいいけど、それ以来、まあ神経質になってしまったり、暗闇を怖がったり、ともかく甘えたがりになったり……」
「女に弱くなったのは、そのせいですか父上」
「さて、な。
 だからこそしっかりした侯爵夫人の元に婿養子として入ってくれれば、安心だと思っていたのだがなあ」
「ルージュさんがもう少し優しくしてくれたら……」
「侯爵家の経営を全て仕切っていたんだ、ティムスにそんなことができると思うか?」
「まあ、確かに私があの女性達の様に優しくできた訳ではないのは承知しております。
 ですから、玄人の方に優しくしてもらえばいいのかな、と思っていたのですが…… 後腐れが無い様に。
 だけど玄人の方が居る世界自体が怖かったんですね、あのひとは」
「初めからそれを言っておけば良かったかもしれないな」
「いや父上、それだと要するに、この家に妾を入れておけ、という話になったのではないですか? 
 それはまたそれで外聞が悪いですし」
「外聞は我々の身分にとっては本当に大事ですからね……」

 そう姻族で皆でため息を突き合っていると、ロンダース弁護士夫妻が入ってきた。
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