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13 タメリクス侯爵夫人サムウェラ(3)
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「そこまで調べがついていた訳」
え、とティムスとマリエはサムウェラを見る。
「このひとは、児童人身売買に関わっているのよ。
最近のこの子供達の保護の流れの中でね」
「人聞きが悪い。
そっちとどれだけ違うというの?
親も家も無い、道ばたで死んでいくしか無い子供達に、住処を与えるという意味ではそう変わらないのではなくって?」
「そこから逃げ出した子が病院に保護されたのよ」
ぴく、とサムウェラの眉が動いた。
「そう」
「見つけたのは、街角で幻覚に苦しめらてふらふらしていたところを馬車にひっかけられたからよ。
街では事故にあった身寄りのなさげな子供は病院に連れてくる様に、と告げてあるわ。
謝礼をするとも」
「馬鹿じゃないの。
それ目当てに自分で傷つけたり腕わ折ったりしてくる子供も居るでしょうに」
「それならそれでいいわ。
ケガは保護する名目でもあるのだから。
ともかくその子は病院で目覚めた時、まだ幻覚症状が抜けてなかった。
調べてみたら、アルカロイド系の薬物が使われていたわ」
「それで?
だからと言ってすぐに私に結びつく?」
「その子供がね、外に咲いていたエンジェルトランペットを酷く怖がったのよ。
しばらくして落ち着いてから、その理由を聞いてみたわ。
そうしたら、自分が捕まっていた家には、沢山それが咲いていて、首を垂れた様な花が、いつか自分が吊される姿じゃないか、っていう幻覚にすり替わってしまったんですって」
エンジェルトランペットは、その名の通り、空から天使がハレルヤとラッパを吹く姿に似ていることから名か点けられている。
白や黄色、オレンジの花が、重く大きく下向きに広がっているものである。
「あれは美しいけど、幻覚症状を起こす成分で一杯ということを貴女は知っていたでしょう?」
「それが? どうして?」
「貴女昔から、そういう花が好きだったわよね。そう、そっちのテーブルに挿したジギタリス」
そう言って指すルージュに、自分のテーブルだったマリエがびく、とした。
「ああ、ジギタリスは心臓の薬にもなるから、それはそれでいいのよ。
でもまあそういう類が、沢山貴女の実家にはあったわね。
確か使用人が、花壇から紛れたスノーフレークの葉をニラと、スイセンの根を玉葱と間違えて食べて大変なことになったとか言っていなかったかしら?
それも貴女、結構な笑顔で」
ひっ、とティムスは息を呑む。
「記憶力が良いのね、
昔と貴女、そういうところはまるで変わらない。
だからこそ今でも女学者侯爵夫人と呼ばれるのよ」
「答えて、楽しかったの?」
「楽しかったと言えば貴女は喜んでくれるのかしら?」
サムウェラは唇の端をきゅっと上げて笑んだ。
「いいじゃない。
ちょっとばかり、私の方が損したのだから」
え、とティムスとマリエはサムウェラを見る。
「このひとは、児童人身売買に関わっているのよ。
最近のこの子供達の保護の流れの中でね」
「人聞きが悪い。
そっちとどれだけ違うというの?
親も家も無い、道ばたで死んでいくしか無い子供達に、住処を与えるという意味ではそう変わらないのではなくって?」
「そこから逃げ出した子が病院に保護されたのよ」
ぴく、とサムウェラの眉が動いた。
「そう」
「見つけたのは、街角で幻覚に苦しめらてふらふらしていたところを馬車にひっかけられたからよ。
街では事故にあった身寄りのなさげな子供は病院に連れてくる様に、と告げてあるわ。
謝礼をするとも」
「馬鹿じゃないの。
それ目当てに自分で傷つけたり腕わ折ったりしてくる子供も居るでしょうに」
「それならそれでいいわ。
ケガは保護する名目でもあるのだから。
ともかくその子は病院で目覚めた時、まだ幻覚症状が抜けてなかった。
調べてみたら、アルカロイド系の薬物が使われていたわ」
「それで?
だからと言ってすぐに私に結びつく?」
「その子供がね、外に咲いていたエンジェルトランペットを酷く怖がったのよ。
しばらくして落ち着いてから、その理由を聞いてみたわ。
そうしたら、自分が捕まっていた家には、沢山それが咲いていて、首を垂れた様な花が、いつか自分が吊される姿じゃないか、っていう幻覚にすり替わってしまったんですって」
エンジェルトランペットは、その名の通り、空から天使がハレルヤとラッパを吹く姿に似ていることから名か点けられている。
白や黄色、オレンジの花が、重く大きく下向きに広がっているものである。
「あれは美しいけど、幻覚症状を起こす成分で一杯ということを貴女は知っていたでしょう?」
「それが? どうして?」
「貴女昔から、そういう花が好きだったわよね。そう、そっちのテーブルに挿したジギタリス」
そう言って指すルージュに、自分のテーブルだったマリエがびく、とした。
「ああ、ジギタリスは心臓の薬にもなるから、それはそれでいいのよ。
でもまあそういう類が、沢山貴女の実家にはあったわね。
確か使用人が、花壇から紛れたスノーフレークの葉をニラと、スイセンの根を玉葱と間違えて食べて大変なことになったとか言っていなかったかしら?
それも貴女、結構な笑顔で」
ひっ、とティムスは息を呑む。
「記憶力が良いのね、
昔と貴女、そういうところはまるで変わらない。
だからこそ今でも女学者侯爵夫人と呼ばれるのよ」
「答えて、楽しかったの?」
「楽しかったと言えば貴女は喜んでくれるのかしら?」
サムウェラは唇の端をきゅっと上げて笑んだ。
「いいじゃない。
ちょっとばかり、私の方が損したのだから」
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