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2 家族に相談

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 こらすぐに手を出してはいけません、でもこのお菓子美味しそうだし、とか何とか子供達との応酬もありつつ。
 家族五人は居間の丸テーブルに揃い、お茶もそれぞれに渡った。
 そしてエイブラハムはふぅん、と紅茶の香りを確かめつつ、一息つくと、家族に向かいこう言う。

「実はな、去年まで夏休暇に皆で行っていた別荘が、今年は行けなくなったんだよ」
「ええっ!」

 そうまず言ったのはマリアだった。

「私、あそこの大きなぶらんこをいつも楽しみにしていたのに!」
「まあそう言うな。代わりと言っては何だが、今年は少し遠くのカントリーハウスをランダ大伯母さんが貸してくれるって言うんだよ」
「カントリーハウス」

 その言葉に食いついたのはウィリアムだった。

「と言うと父さん、結構それは古い館かな」
「そうだな、いつもの別荘よりは歴史はあるな。父さんも昔、よく兄弟…… お前等の伯父さん達だな、と揃って行ったんだ。広い野原があってな。いやその前に、館の近くにはまずりんごの木がずらりと並んでいてな、春に行くと花がとても綺麗だったことを覚えているなあ。馬を走らせるにも狩りをするにもいいところでな」
「つまり、若い時にとってもお世話になったんですね」

 このまま話させておくと止めど無いな、とサリーは夫の話をとりまとめた。

「狩りもできるんだ」
「りんごの木だけ?」
「いや、ともかくあの家はそこで色んな果物を作ってはジャムにしていたと思うぞ。今はどうか判らないが……」
「? もしかして、あの方々は今そこにはいらっしゃらないということ?」

 サリーは尋ねた。
 確か彼女が昔聞いた話では、そこはエイブラハムの伯母の嫁ぎ先なのだと。
 だからちょいちょい遊びに行けたのだと。

「うんサリー、さっきも言っただろう? 旦那の具合が良くないから、街の方に移ったんだ。だから向こうには管理人を置いて、時々様子を見に行っている程度なんだって」
「まあ…… では荒れてはいないかしら」
「使っていない部屋ばかりだとは思うが、一応管理人がいるわけだし。それなりに手入れはしているだろう。それに行くのだったら、その前に倉庫に食料は届けておく、という話だし」
「僕は賛成だな」

 ウィリアムは薄く焼いたビスケットを口に放り込みつつうなづいた。

「父さん、一緒に狩りに行こうよ。何だったら友達も誘ってもいいかな」
「いやそれはちょっと難しいんじゃないか? 通いのお前はともかく、皆この夏はそれぞれ自宅に戻りたいだろう」

 ウィリアムの学校は大半が寮生であり、通いの生徒はごく希だった。
 彼自身も寮生活を楽しんでみたい、という希望もあった様だが、そう思うにはあまりにも学校と自宅との距離が、走っていける程度に近すぎたのだ。

「仕方ないなあ」
「お父様、おばけとか出ない? 古いお屋敷なんでしょ?」
「さあどうかな」

 エイブラハムはにやっと笑う。
 いやあ、と娘は怖がる。

「冗談だよ。まあさすがにちょっと夜灯りも無しに廊下に出ると怖いってことはあるが、昼間なら何ってことはないさ。昔父さんもお前等の伯父さん達と幽霊探しをたものさ」
「へえ! あの伯父さん達が!」
「そう! あんなにお前に今ではがみがも勉強しろとうるさい伯父さんがな!」

 エイブラハムは上の兄弟しかいない。
 故に末っ子の家庭には子供ができると何かとやいやいと口を出してきたものだった。

「子供の時は皆そう変わらんさ。まあだから、ウィル、お前も結構気に入ると思うよ」
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