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3年後、アルク再び(俯瞰視点三人称)

10 再集結する馬鹿ども達

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 三年前。
 政治犯であるらしい彼らは、収容されていた「冬の惑星」ライから脱走した。
 政治犯である「らしい」。
 そうは言われている。
 彼らの持つ「知識」は彼ら自身にもそう告げている。
 だが「自分」が果たして「政治犯」であるのかどうか、は彼ら自身にも判らない。
 何せ彼らの記憶は、投獄される以前のパーソナルな部分が抹消されているのだから。
 ただ、抹消といったところで、それは完全に「消す」ことを意味しているのではない。
 人間の記憶はそう簡単に、電子的データの様に「消す」ことができるものではない。
 要は、パーソナルな部分の経路を人為的に混乱させられているのである。
 だがその処置を受けた当の本人達にしてみれば、「消された」という感覚が一番近かった。
 日々を送る上の「知識」は存在する。
 だが自分自身に関する「記憶」だけが、すっぽりと自分の頭の中から抜け落ちているのだ。
 ただし、その中でも、自分の中で強い記憶は、断片的に残っているということはあった。
 それは皆それぞれに形が違っていたし、また、それは必ずしも「良い」ものではないことも事実である。
 さてそんな脱走者は、故郷たるアルクにたどりついたのち、一度解散した。
 彼らはそれぞれに当座の生活に役に立つ程度の宝石をライで手にしていたので、そこから自分の道を歩む者も居た。
 だが結局、かなりの人数が再びその場に集結したのだ。
 政治犯「らし」かった彼らは、今度は政治犯に「なる」ために。

「けっこういい値で売れたよ。ふんとにさあ、エンジニーヤ、あんた技師なんか辞めちって、宝飾デザイナーにでもなったらどぉ?」

 リタリットは椅子の上に反対向きに座りながら、床の上で胡座を組む盟友の一人にそう言葉を投げる。

「リタリット、お前確かこないだ、愛用の自転車の調子が悪いって言ってなかったか?」

 さらりとそう言って、「技師エンジニーヤ」と呼ばれる男は返した。
 リタリットは黙って肩をすくめた。

「リタの冗談はさておいて」

 食卓の上で、リタリットが持ってきた布の袋から「代金」を広げたビッグアイズは金券の枚数を数える。

「実際いい金にはなるな。原石のままより、多少加工したほうがいいかもな」
「おいおいそれでまた俺かい?」

 エンジニーヤは参った、という表情で手を広げた。
 食卓の別の椅子で聞いていたヘッドは頬杖をつきながら、にやりと笑う。

「まあまあ、それはそれとして、だ。方法としては悪いもんじゃないな、ということだ。資金はあったほうがいいに決まってはいるし、そうでなくても、芸は身を助けるのは確かだ」
「へいへい。それじゃ俺、仕事あるから、事を起こす時には呼んでくれよ」

 そしてそれじゃあね、と言い残してエンジニーヤはその部屋から出て行った。
 部屋にはヘッド、ビッグアイズ、BP、リタリットの四人だけがの残された。
 脱走者達が一度に一所で動くというのが危険であることは、彼らもよく知っていた。
 彼らはとりあえず、各地に飛び、偽名を名乗り、そこで表向きの仕事をしながら、時期を待っていた。
 また一方、その飛んだ各地に存在する地下活動家との連絡を取っている者も少なくはない。
 確かに一応ヘッドは全体のまとめ役であり、連絡役ではあったが、司令塔という訳ではない。
 飛んだ各地での役割は、それぞれの手にゆだねられた。
 そして、一所に留まっているというものでも、ない。

「で、ヘッド、今回俺達を呼び出したのは、何で?」

 床の上で腕立て伏せをしていたBPは、ぴょん、と足のバネを使って立ち上がると、二日前に50㎞離れた街にいた自分と相棒を呼び出した訳を問いかけた。 
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