キラワレモノ

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（オレは、やはりどうしてもユウが愛しくて堪らない。オレの腕の中にスッポリ入るくらいに小さかったあの子が……すっかり大人になって、立派になって……PTSDも、ユウは自分で克服しようとしている。もう、オレの力なんてとうに必要じゃないくらい知っているが――――でも、まだオレは、ユウの父親でいたいんだ）

　十中八九、ユウは聖の干渉を――今はすっかり疎んでいるだろう。

　それは知っている。

　分かっている。

　聖の願いを聞き入れて、ユウは文句も言わずに、先月戸籍に入る手続きに応じてくれた。

　これで晴れて、堂々と親子の名乗りを上げられるのだから、聖はもう満足だと手を引くべきだろう。

　でも聖も、これ以上愛しい者を失いたくないと……ここ数年煩悶しているのだ。


　聖を愛していると激しく求めながら、置き去りにして行った男がいる。

　待っていてくれと勝手な事を言って、その男は塀の中へと消えた。


――――もう、たくさんだ……。


　聖の心には、消えない傷がある。

　ぽっかり空いた穴がある。

　そこから目を背けたくて、聖は殊更ユウに干渉している。

（オレも――とんだ馬鹿野郎だな）

　新しい道が分からなくて、途方に暮れたまま、ずっと立ち止まっている。

　だから、変わりようのない『親子』という、確かな関係のユウを頼って、心の支えにしている。


（どうしてこんなに弱くなった？　）


　まったく、人なんて好きになるもんじゃあないな――――。

　小さく笑って、聖は眼を閉じた。