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最終章
最終章-2
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致命傷だったが、直ぐに病院へ運ばれたのが功を奏し、辛うじて三宮は命を取り留めた。
あの状況だったら、たとえ本当に殺してしまっても、ランは罪に問われなかっただろうと蔵は思うが。
すると、それを肯定するように、糸川は頷いた。
「ああ、その件だが。ランくんが三宮の犯行を止めようとして、誤って刺してしまったと状況証拠は揃っているから、そこは勘違いしないようにね」
(誤って、か)
糸川の言い回しに、蔵は無言で頷いた。
日本の司法は、殺意の有無で大きく判決が変わる。
ランは確実に三宮を屠るつもりで刺したのは明らかだが、嘘も方便だ。
あくまで、あれはアクシデントで起こった事故だと言えば、ランは無罪放免になる。
――だが。
「そのランは、どうなってるんだ?」
「……まだ、意識が戻っていないようだ。精密検査をしたところ、橋外髄鞘崩壊症と診断された。慢性的な栄養不足に、肺炎や薬物の過剰摂取によるオーバードースも見られるとの事だ。あまり身体は丈夫ではなさそうだと思っていたが、見た目以上に中身はボロボロだったようだね……」
糸川は、痛ましそうにそう呟いた。
幼少時からずっと過酷な環境下に置かれ、精神も肉体も擦り切れていたらしい。
もう、どっちにしてもランは長くは生き永らえないかもしれないと告げられ、蔵は瞠目する。
「そんな縁起でもない事言うなよ――」
呻くような声を漏らし、蔵は両手で顔を覆う。
やっと、ランの本当の心に触れたばかりなのに。
まだ何も叶っていないのに、ここで別れるなど冗談ではないのに!
「何もかも、あのクソヤクザが悪いんだ。もしもランが死んだら、オレがあの野郎を絶対ぶっ殺してやる」
恨みをこめて言うと、糸川がフゥと溜息をついた。
「あのね、そんな事は一々口にするもんじゃないぞ。いくら君しかいない個室でも、ここは病院内なんだから」
あの状況だったら、たとえ本当に殺してしまっても、ランは罪に問われなかっただろうと蔵は思うが。
すると、それを肯定するように、糸川は頷いた。
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(誤って、か)
糸川の言い回しに、蔵は無言で頷いた。
日本の司法は、殺意の有無で大きく判決が変わる。
ランは確実に三宮を屠るつもりで刺したのは明らかだが、嘘も方便だ。
あくまで、あれはアクシデントで起こった事故だと言えば、ランは無罪放免になる。
――だが。
「そのランは、どうなってるんだ?」
「……まだ、意識が戻っていないようだ。精密検査をしたところ、橋外髄鞘崩壊症と診断された。慢性的な栄養不足に、肺炎や薬物の過剰摂取によるオーバードースも見られるとの事だ。あまり身体は丈夫ではなさそうだと思っていたが、見た目以上に中身はボロボロだったようだね……」
糸川は、痛ましそうにそう呟いた。
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もう、どっちにしてもランは長くは生き永らえないかもしれないと告げられ、蔵は瞠目する。
「そんな縁起でもない事言うなよ――」
呻くような声を漏らし、蔵は両手で顔を覆う。
やっと、ランの本当の心に触れたばかりなのに。
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「何もかも、あのクソヤクザが悪いんだ。もしもランが死んだら、オレがあの野郎を絶対ぶっ殺してやる」
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