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「マフタン財団が管理する医療法人の外科医が執刀したら、復帰の可能性は0じゃないとされていたらしい。それをエサにして、レオンは彼女との婚約を強行したようだ」
「婚約者は、AIが判定したからと言っていたが」
「嘘も方便だよ。マフタンの長老が後継者を作れと命令していたことに加えて、レオンがそう言い張ったら、誰だって逆らえないさ」
晁生のセリフに、聖は成程と感心した。
それにしても、よく調べたものだと思う。
「お前は、とっくにオレを救出する気は無くなったんだと思っていたよ」
聖がそう言うと、晁生は苦笑いをした。
「ボクには君のような行動力は無いけど、下準備をするくらいは出来るからね」
「そうか……だが、疑問も残っているぞ。秘書が、不幸な婚約からシオリを救う為にレオンを襲い、その結果、本当に婚約解消に至ったとしてだ。当然だが、その場合は外科医の治療を受ける話は頓挫してしまうだろう。不承不承でも『治療』の対価として婚約を受け容れただろう彼女が、秘書の妨害行為を有難いと思うだろうか?」
「う……」
「そのうえで秘書を匿うだけの理由が、果たしてシオリにあると?」
その指摘に、晁生は苦虫を嚙み潰したような顔になった。
「確かに、その点は矛盾を感じるけど……」
「レオンが手に入れようと狙っていたのはシオリではなく、やはり秘書が本命だとオレは睨んでいる。思うに、秘書は元々シオリの関係者だったから、レオンはそこに目を付けて、シオリを『婚約』という形で先に手に入れてから秘書を懐柔しようと企んだんだろう」
「君はそう思うのか?」
「ああ。だって、ロイヤルスイートで蜜月を過ごすつもりだった相手はシオリではない事は、とっくにバレているんだ。お前、サイエンから聞いてないか?」
「彼は、ボクの事を恋敵の一人だと思っているからね。ボクに情報なんか漏らさないよ」
嘆息しながら答えると、聖はチッと舌打ちをした。
「ったく、あいつもしょうがねー野郎だな。じゃあ、オレ達で反撃開始と行くか」
その言葉に、晁生は頷いた。
「そうだね。じゃあボクはシオリの方へ行くから、君はレオンの方へ行ってくれ」
「どうしてだ?」
「あいつが、自分を襲撃した『地味な東洋人の秘書』を、自らロイヤルスイートに匿っているという線もあるからさ。ボクが行っても門前払いだろうけど、君なら中に招かれるだろうし」
「そんな、まさか――もしも秘書がそこに居たら、幾ら何でもオレも門前払いだろうよ」
「いいや。君の訪問を断るような男なんて、この世には存在しないさ」
晁生はそう言うと、自信満々に頷いた。
「婚約者は、AIが判定したからと言っていたが」
「嘘も方便だよ。マフタンの長老が後継者を作れと命令していたことに加えて、レオンがそう言い張ったら、誰だって逆らえないさ」
晁生のセリフに、聖は成程と感心した。
それにしても、よく調べたものだと思う。
「お前は、とっくにオレを救出する気は無くなったんだと思っていたよ」
聖がそう言うと、晁生は苦笑いをした。
「ボクには君のような行動力は無いけど、下準備をするくらいは出来るからね」
「そうか……だが、疑問も残っているぞ。秘書が、不幸な婚約からシオリを救う為にレオンを襲い、その結果、本当に婚約解消に至ったとしてだ。当然だが、その場合は外科医の治療を受ける話は頓挫してしまうだろう。不承不承でも『治療』の対価として婚約を受け容れただろう彼女が、秘書の妨害行為を有難いと思うだろうか?」
「う……」
「そのうえで秘書を匿うだけの理由が、果たしてシオリにあると?」
その指摘に、晁生は苦虫を嚙み潰したような顔になった。
「確かに、その点は矛盾を感じるけど……」
「レオンが手に入れようと狙っていたのはシオリではなく、やはり秘書が本命だとオレは睨んでいる。思うに、秘書は元々シオリの関係者だったから、レオンはそこに目を付けて、シオリを『婚約』という形で先に手に入れてから秘書を懐柔しようと企んだんだろう」
「君はそう思うのか?」
「ああ。だって、ロイヤルスイートで蜜月を過ごすつもりだった相手はシオリではない事は、とっくにバレているんだ。お前、サイエンから聞いてないか?」
「彼は、ボクの事を恋敵の一人だと思っているからね。ボクに情報なんか漏らさないよ」
嘆息しながら答えると、聖はチッと舌打ちをした。
「ったく、あいつもしょうがねー野郎だな。じゃあ、オレ達で反撃開始と行くか」
その言葉に、晁生は頷いた。
「そうだね。じゃあボクはシオリの方へ行くから、君はレオンの方へ行ってくれ」
「どうしてだ?」
「あいつが、自分を襲撃した『地味な東洋人の秘書』を、自らロイヤルスイートに匿っているという線もあるからさ。ボクが行っても門前払いだろうけど、君なら中に招かれるだろうし」
「そんな、まさか――もしも秘書がそこに居たら、幾ら何でもオレも門前払いだろうよ」
「いいや。君の訪問を断るような男なんて、この世には存在しないさ」
晁生はそう言うと、自信満々に頷いた。
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