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最終章

最終章-2

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 二十年以上も続いていた光原家の混沌と、嫌な事をすっかり忘れて安穏と生きて来た我が身を比べてみると、そう思わずにはいられない。

 光原秋江と大佑ミツバの結婚十周年を祝うささやかな催しという事だったが、蓋を開けて見ると、それなりの出席者が集まった。
 賑わっている宴席を見遣りながら、朝日は思わず安堵の息をつく。

(無事に二人の仲を取り持つことが出来たから良かったけど、まだギスギスが続いていたらと考えると怖いったら無いな)

 そんな朝日の前に、スッとシャンパングラスが差し出された。

「お疲れさん。この後はフリータイムだ。司会は宇野が代わるから、お前も飲んでいいぞ」
「本当ですか? まだ業務の途中ですよぉ?」

 視線の先には、朝日とを夢見る男、須藤黒闇が居た。

 須藤は、キリっとした風貌の渋くて超イケメンの男だが、顔の傷が相まってどうしても極道寄りの人種に見えてしまうという難儀な人物だ。
 本当は、めちゃくちゃ優しくて面倒見がいい人情派の男なのに。

――そう、今は正確に理解している。

「今回の見事な手打ちは、お前の手柄だな。光原家から祝儀もたんまり入ったし、特別ボーナス出さないとな」
「いえ、そんな……っていうか、そんな言い方をするから、皆が須藤社長の事をヤクザだと勘違いしちゃうんですよ! もっと言い方に気を付けてくださいよっ」
「何だとぉ? そんな小賢しい事を言う口はキスで塞いじまうぞ」
「そういえば、百戦錬磨だとか大口叩いてましたね? 童貞のくせにっ」

 以前ならば、恐怖が先行してこんな生意気な事は言えなかった朝日だが。
 今は、須藤黒闇という人物の事も十分理解したので、笑いながら軽口も言えるようになった。

 須藤の右頬に刻まれた傷跡を見ると、色々な事を思い出して心臓がギュッと痛むのは仕方がないが、だからといって、このまま辛い過去を思い出さない方が幸せだったとは思えない。
 悪い記憶しかないが、涅槃の事も思い出して今は良かったと思う。

 そんな事を漠然と想っていたら、須藤がボソッと口を開いた。

「――お前、あの女秋江がマジであの野郎大佑に惚れていたって、よく分かったな」
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