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故郷の、古臭い考え方と閉ざされた雰囲気に馴染めず上京してきた朝日だ。
世間知らずのお上りさんだった当初は、何度かここで怖い経験もしたが、でも、あそこに戻るよりずっとマシだと思う。
(僕の母親も、遠回しに見合いの話を勧めたり勝手にデートをセッティングしたりと超お節介焼きだったけど。これって、どこの家も同じなのかな……)
自然と、きよしの身の上に同情する朝日だ。
だが、とりあえず今は、このガチガチに頭の固そうな母親ではなく、光原と話し合うのが良策だろう。
そう思い、チラッと光原を見遣ると、同意見なのか光原も『分かった』というように頷いた。
「……秋江さん、そんなに一方的に言うものではない。少し失礼では?」
「でも、あなた!」
「きよしくんを心配する気持ちは分かりますが、彼も子供じゃないんだ。恋愛は、もっと自由に……」
「そもそもあなたが自由過ぎるんです!」
キリリと眦を吊り上げる秋江夫人は、美しいが般若のようでマジで怖い。
特に、こういった女性に免疫のない朝日は、震えが走る程に恐ろしく感じる。
(み、光原社長~これ以上は怒らせない方がいいですよ。僕はもう心臓が痛いです)
必死に目でサインを送ると、光原は心得たようにゴホンと咳払いをした。
「そうですね、秋江さんの心配する気持ちも分かります。今日はとりあえずお名刺だけ頂いて、お帰り願いましょう。それでいいですね?」
と、双方に語り掛ける光原だ。
秋江夫人は渋々頷くと「それでは名刺だけ頂いたら帰ってもらってください。私は先に失礼させて頂きますわ」と言い、応接間から出て行った。
後を追うようにパタパタと足音も聞こえたが――。
「ああ、家内の乳母だよ。彼女は生粋のお嬢様なんだ」
と、光原が嘆息しながら答えた。
朝日は目を白黒させながら「なんだか色々な意味でスゴイ家ですね」と息を吐く。
しかし、これでようやく光原と一対一になった。
「光原社長。今までの事を詳しく話してくれませんか?」
世間知らずのお上りさんだった当初は、何度かここで怖い経験もしたが、でも、あそこに戻るよりずっとマシだと思う。
(僕の母親も、遠回しに見合いの話を勧めたり勝手にデートをセッティングしたりと超お節介焼きだったけど。これって、どこの家も同じなのかな……)
自然と、きよしの身の上に同情する朝日だ。
だが、とりあえず今は、このガチガチに頭の固そうな母親ではなく、光原と話し合うのが良策だろう。
そう思い、チラッと光原を見遣ると、同意見なのか光原も『分かった』というように頷いた。
「……秋江さん、そんなに一方的に言うものではない。少し失礼では?」
「でも、あなた!」
「きよしくんを心配する気持ちは分かりますが、彼も子供じゃないんだ。恋愛は、もっと自由に……」
「そもそもあなたが自由過ぎるんです!」
キリリと眦を吊り上げる秋江夫人は、美しいが般若のようでマジで怖い。
特に、こういった女性に免疫のない朝日は、震えが走る程に恐ろしく感じる。
(み、光原社長~これ以上は怒らせない方がいいですよ。僕はもう心臓が痛いです)
必死に目でサインを送ると、光原は心得たようにゴホンと咳払いをした。
「そうですね、秋江さんの心配する気持ちも分かります。今日はとりあえずお名刺だけ頂いて、お帰り願いましょう。それでいいですね?」
と、双方に語り掛ける光原だ。
秋江夫人は渋々頷くと「それでは名刺だけ頂いたら帰ってもらってください。私は先に失礼させて頂きますわ」と言い、応接間から出て行った。
後を追うようにパタパタと足音も聞こえたが――。
「ああ、家内の乳母だよ。彼女は生粋のお嬢様なんだ」
と、光原が嘆息しながら答えた。
朝日は目を白黒させながら「なんだか色々な意味でスゴイ家ですね」と息を吐く。
しかし、これでようやく光原と一対一になった。
「光原社長。今までの事を詳しく話してくれませんか?」
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