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しおりを挟む嫌な予感というヤツに限って、よく当たるというのは通説であるが。
それがいざ我が身に降り掛かるとなると、話は別だ。
朝日はアプリを頼りに用賀駅を降り、そこから徒歩10分の『光原』邸を訪れ、つくづくそう思っていた。
恐れていた事が起こってしまったと、冷や汗が止まらない。
朝日は目を見開きながら、目の前の紳士に対峙していた。
「しゃ、しゃちょ……」
「始めまして、光原といいます。こっちは家内の秋江です」
元『ビューティー探求房』社長こと、光原大佑は朝日の言葉を遮ると、先制するようにそう言葉を被せて来た。
光原は、突如会社を須藤に譲り(俗に言う居抜き状態でだ)そこから行方の分からなかった人物であるが。
一応、それまで勤めていた社員には規定通りの退職金を支給したし、特にブラックでもないし夜逃げをして何もかも踏み倒した訳ではない。
相変わらず裕福そうだし、第一、都内で一戸建ては相当な部類だろう。
そう考えると、そもそも光原と須藤はどういう関係なんだと、キツネに抓まれるような気がしてならないが。
(それに、光原社長が風俗で働いていたってのも謎なんだよな。やっぱり恭介の見間違いってのが一番しっくり来るんだけど)
考えるほど、何がなにやら分からなくて混乱する。
朝日は戸惑いながら、光原をもう一度見遣るが。
「息子から、電話でお話を伺っていました。おたくは結婚相談所の担当さんだそうで」
「え、はい……ソウデス」
どうやら光原は『初対面の他人』を装う気のようだと察し、朝日は困惑しながらもそれに付き合う事にした。
「ほ、本日は、きよしさんが目出度くパートナーに巡り合えたご報告を、僕の方からも説明させ――」
すると、光原の隣に座っていた秋江夫人が、冷やりとする口調で「結構ですわ」と朝日の口上を遮った。
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