28 / 95
4
4-5
しおりを挟む
ペロリとこめかみを舐められ、朝日の全身に震えが走った。
「社長っ! いい加減にしないと本当に怒りますよ!」
強い声を上げて椅子から立ち上がろうとするものの、須藤とでは元々の体格差もあり、力では到底敵わない。
しかし、どうにかしてこのホールド状態から脱出しようとジタバタ足掻く朝日だったが。
両肩を掴んでいる腕の力に反し、子犬のようにペロペロと優しく耳たぶを舐めて来る須藤に、朝日は言いようのない感覚を覚えた。
それは“悪寒”ではなく、初めての“快感”だと。
次第に熱くなってくる体の反応に、朝日は自分でも戸惑う。
「……あ、あの、もう暴れませんから、肩の手を放してもらえませんか? さすがに痛いっす……」
抵抗を止めてそう訴えたところ、須藤は「本当か?」と念押しするように訊いてきた。
それに対し、朝日は溜め息をつきながら頷く。
「嘘じゃないです。なんか、この状況で抵抗するのって馬鹿らしい気がしてきたし」
すると、万力のような力で朝日の肩を押さえ付けていた手からは、徐々に力が抜けていった。
見上げると、何故だか叱られた犬のようにしょんぼりとした顔の須藤が目に映った。
「怒ってないか?」
こうも直球で訊かれると、却って本音を言い辛い。
朝日は苦笑いを浮かべると、首を振っていた。
「怒ってませんよ。それにしても、何で突然キスをしたんですか?」
「せっかく二人きりになったんだぞ。これは手を出す千載一遇のチャンスだろうが」
「チャンスって……」
意外な事を言われて、朝日は面食らうが。
考えてみれば、出会ってからこの二か月、二人きりのシチュエーションになったのはこれが初めてだったことに思い至った。
会社では常に周囲に人がいたし、デスクワークがメインになった事もあり、上司と連れ立って外回りという事もほとんど無くなった。
そして。
仕事が終わったら直行で帰り、ビールを飲むのが何よりの楽しみだった朝日は『おひとり様』生活を満喫していたので、常日頃から煩わしい飲みの誘いは断るようにしていた。
「社長っ! いい加減にしないと本当に怒りますよ!」
強い声を上げて椅子から立ち上がろうとするものの、須藤とでは元々の体格差もあり、力では到底敵わない。
しかし、どうにかしてこのホールド状態から脱出しようとジタバタ足掻く朝日だったが。
両肩を掴んでいる腕の力に反し、子犬のようにペロペロと優しく耳たぶを舐めて来る須藤に、朝日は言いようのない感覚を覚えた。
それは“悪寒”ではなく、初めての“快感”だと。
次第に熱くなってくる体の反応に、朝日は自分でも戸惑う。
「……あ、あの、もう暴れませんから、肩の手を放してもらえませんか? さすがに痛いっす……」
抵抗を止めてそう訴えたところ、須藤は「本当か?」と念押しするように訊いてきた。
それに対し、朝日は溜め息をつきながら頷く。
「嘘じゃないです。なんか、この状況で抵抗するのって馬鹿らしい気がしてきたし」
すると、万力のような力で朝日の肩を押さえ付けていた手からは、徐々に力が抜けていった。
見上げると、何故だか叱られた犬のようにしょんぼりとした顔の須藤が目に映った。
「怒ってないか?」
こうも直球で訊かれると、却って本音を言い辛い。
朝日は苦笑いを浮かべると、首を振っていた。
「怒ってませんよ。それにしても、何で突然キスをしたんですか?」
「せっかく二人きりになったんだぞ。これは手を出す千載一遇のチャンスだろうが」
「チャンスって……」
意外な事を言われて、朝日は面食らうが。
考えてみれば、出会ってからこの二か月、二人きりのシチュエーションになったのはこれが初めてだったことに思い至った。
会社では常に周囲に人がいたし、デスクワークがメインになった事もあり、上司と連れ立って外回りという事もほとんど無くなった。
そして。
仕事が終わったら直行で帰り、ビールを飲むのが何よりの楽しみだった朝日は『おひとり様』生活を満喫していたので、常日頃から煩わしい飲みの誘いは断るようにしていた。
20
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
【完結】君に愛を教えたい
隅枝 輝羽
BL
何もかもに疲れた自己評価低め30代社畜サラリーマンが保護した猫と幸せになる現代ファンタジーBL短編。
◇◇◇
2023年のお祭りに参加してみたくてなんとなく投稿。
エブリスタさんに転載するために、少し改稿したのでこちらも修正してます。
大幅改稿はしてなくて、語尾を整えるくらいですかね……。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
漢方薬局「泡影堂」調剤録
珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。
キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。
高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。
メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【完結】炎のように消えそうな
麻田夏与/Kayo Asada
BL
現代物、幼馴染み同士のラブストーリー。
この世には、勝者と敗者が存在して、敗者となればその存在は風の前の炎のように、あっけなくかき消えてしまう。
亡き母の口癖が頭から抜けない糸島早音(しとうさね)は、いじめを受ける『敗者』であるのに強い炎のような目をした阪本智(さかもととも)に惹かれ、友達になる。
『敗者』になりたくない早音と、『足掻く敗者』である智が、共に成長して大人になり、ふたりの夢をかなえる話。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる