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しかしその時、脳裏に先程の光景がフラッシュバックした。
『さようなら、栄太さん』
残酷に告げられたセリフを思い出し、栄太はギュッと目を閉じる。
しかしすぐに、無理やり強張った笑みを口許へ浮かべて「しっかりしろ」と、自分を鼓舞する。
(奏も、ここ数日、目まぐるしく色々あった直後だから――――あんな風に別れるなんて言い出したが……なに、少し時間が経てば大丈夫だろう)
何と言っても、奏は栄太の子を身籠ったのだ。
母親には、父親が必要だろう。
確固たる地位を今以上に堅め、馬淵家の当主となり、我が子と奏へこれ以上ないくらいの贅沢をさせてやる。
――――幸せに、なるのだ。
栄太は自分の行いを正当化すると、小柄な奏の身体を軽々と抱えてその場を去った。
数日前まで奏に付いてたボディーガードの姿はない。
奏が断固として拒否するから、正嘉はボディーガードを解任したばかりだったのだ。
一時間後、もぬけの殻となったマンションで防犯カメラの録画映像を確認し、正嘉は唇を噛む。
奏の意見を聞いたのが、裏目に出てしまった――――!
その事を、正嘉は激しく悔やんだ。
しかし、栄太もまた、己の行いを数時間後に悔やむことになる。
何をどうしても、取り返しのつかないことになってしまったと…………。
『さようなら、栄太さん』
残酷に告げられたセリフを思い出し、栄太はギュッと目を閉じる。
しかしすぐに、無理やり強張った笑みを口許へ浮かべて「しっかりしろ」と、自分を鼓舞する。
(奏も、ここ数日、目まぐるしく色々あった直後だから――――あんな風に別れるなんて言い出したが……なに、少し時間が経てば大丈夫だろう)
何と言っても、奏は栄太の子を身籠ったのだ。
母親には、父親が必要だろう。
確固たる地位を今以上に堅め、馬淵家の当主となり、我が子と奏へこれ以上ないくらいの贅沢をさせてやる。
――――幸せに、なるのだ。
栄太は自分の行いを正当化すると、小柄な奏の身体を軽々と抱えてその場を去った。
数日前まで奏に付いてたボディーガードの姿はない。
奏が断固として拒否するから、正嘉はボディーガードを解任したばかりだったのだ。
一時間後、もぬけの殻となったマンションで防犯カメラの録画映像を確認し、正嘉は唇を噛む。
奏の意見を聞いたのが、裏目に出てしまった――――!
その事を、正嘉は激しく悔やんだ。
しかし、栄太もまた、己の行いを数時間後に悔やむことになる。
何をどうしても、取り返しのつかないことになってしまったと…………。
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