ナラズモノ

亜衣藍

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(今夜は――ユウと、会うはずだったのに)

 悔しくて悲しくて、涙がこぼれる。

 やっと、やっと……長く夢見ていたのに、なんで? 

 こんな飢狼のような男達に弄ばれるなんて、どうして――?

「嫌だ――嫌だぁぁぁぁぁぁ――――!! 」

 泣き叫び、聖は男達の手から逃れようと、必死に身体を捻る。

 一向に大人しくならない獲物の抵抗に、男達は舌打ちをすると、とっておきのアイテムを投入する事にした。

「――あんたに、いいモノをプレゼントしてやるよ」

「そうそう、さすがにこれを喰らっちゃあ、もうあとはハイになるだけさ」

『花圃』を取り出し、畳に押さえ付けたその腕に、注射する。

 一切の抵抗を封じるために、一本、二本、三本と、立て続けに。

「あ――――……」

 弛緩し、大人しくなった聖を見下ろしながら、男達は嗤った。

「さぁ、じゃあヤらせてもらうか」

「三周はラクに回りそうだな」

 そう、下卑た声で笑い合いながら、四人の男達は聖の身体へと群がった。

   ◇

 何だか、とても気持ちがいい。

 今までの胸が潰れそうなほどの苦しさ、辛さ、悲しさが、全てどこかに行ったようだ。


――何をあんなに悩んで、苦しんでいたのだろう? ここはこんなに気持ちがいいのに。


「ふふふ……」

 自然とこぼれる笑みに、悦楽の喜びが混ざり合う。

 内も外も身体が熱くて、弾け飛びそうだ。

 波に突き上げられながら聖は嫣然と笑う。

 やがて、身体の中で熱い潮が弾け、砂浜に打ち揚げられたと同時に、また新たな波が襲い掛かる。もう何度目の波かも分からない。

 身体中を揉みくちゃにされ、全身が開かれて舐め回されるような、そんな泥のような波に、聖は何度も襲われる。

 熱くて熱くて、身体が溶けそうだ。

「あぁ――」

 顔にも身体にも、全身余すとこなく熱い飛沫が掛かり、顔を仰け反らせて声を上げる。

 鼻にも口にも、泥のような、粘液のような熱い飛沫が入り込み、聖は咽ぶ。

 ああ、気持ちが良いけど――もう苦しい。

 疲れて動けなくなる前に、そろそろ陸に上がらないと。

「うぅ……溺れ、そ……」

「タマンネェ、ナンダヨコイツハ」

 意味の分からない潮騒が鼓膜を震わせ、聖はいつの間にか自由になった両手を掲げる。

「早く――陸に上がらないと、沖に、流される、から……」

「クワエロヨ」

「うぅっ」

 口の中に、熱い海水の塊が入り込み、喉の奥まで突いてくる。

(――――や、……苦しい)

 喉の奥がツンとして、涙が出てくる。

 ああ、このままでは溺れて死んでしまう。

(ど……して、こんなに泳いでいるのに、陸が近付いて来ないんだ、ろう……)

 伸ばした足が、海草に絡まる。

 宙を掻く手が、波に攫われる。

 また天地が分からなくなって、聖の身体は、熱い海中へと引き戻された。

「う――――っ! 」

 喉の奥で熱い潮が弾け、否応なくそれを呑んでしまう。

 ダメだ、海水なんて飲んだらいけない。あれは、毒なんだから。

「ゲホッ……」

 吐き出そうとしたら、口を何かが覆った。

「ノメヨ」

「ヴうっ」

(……苦い……)

 嫌々ながら飲み干し、空気を求めて唇を開く。

「あ、あぁ――――」

「ウッ! ダメダモタネェ! イクッ! 」

 すると、身体の奥に入り込んでいた熱い波が、また大きく弾けた。

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