ナラズモノ

亜衣藍

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 麻薬中毒の症状は、顔に出やすい。

 今になって思えば、チック症のように顔面が痙攣していたのを誤魔化すために、花蓮はマスクをしていたのだと解かる。

 婚約し、もうすぐ結婚しようという相手の異変に気付かないなんて、この目は節穴もいいところだ。

 忙しさを理由に、彼女の変調が分からなかったと言い訳している時点で、すでに鬼畜以下だ。

 相棒と呼んでいた達郎の事も、綾瀬はどれだけちゃんと見ていたのだろうか?

 まだ確証はないので課内に公表はしていないが、どうやら、綾瀬の個人情報を件の組織へ漏らしていたのは、達郎であった可能性が出てきている。

 彼のパソコンを解析したところ、怪しい履歴が出てきた。

 つまり、裏切りの可能性が少しだけ見つかったのだ。

 それ故、花蓮は狙われて犠牲になったのか……?

 いったい何がどうなって、そんな事になったのか?

 今まで、綾瀬が見てきたキラキラと輝いていた現実は、全てウソのネオンだったのだろうか?

 何が、エリートのキャリア組だ。

 肝心なところで何一つ気付きもしないで、友も恋人も失うなど最低のクソ野郎だ。

 そして、やはり達郎を信じ切れない自分に、腹が立つ。

(あいつは、断じてそんなヤツじゃない! 花蓮と婚約したって言った時も、あんなに自分の事のように喜んでいたじゃないか)

 裏切りの片鱗が少しだけ見つかっただけで、こうして疑っている自分に嫌気が差す。

 もしかして達郎は、事件に巻き込まれて殉職したのではなく、単に口封じで組織に殺されたのではないだろうか、と。

 全く自分はどうして、そんな酷い事を考えてしまうのか?

 達郎は、親友ではないかっ!?

「そうだ、間違っているのは――――こんな状況に追い込んだ、半グレの黒龍だ。憎むべきは、あいつらなんだ! 達郎は、関係ない……! 」

 四課との合同捜査本部を立ち上げておいて、なお、綾瀬は達郎に関する疑惑を公表しないでいる。達郎の名を、無暗に汚したくはないからだ。

 しかし自分は、刑事だ。

 どうしたって疑惑に目が向きそうになる。

(最悪だな。オレは、親友も信じられないのか? )

 様々な疑惑と、己の不甲斐なさを怒りに変えて、綾瀬は復讐の鬼となっていた。

 迷うな! 敵はハッキリしているんだ!



「必ず――仇を取ってやる……! 」




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