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「……」
「さぁ、落ち込む前に、監視カメラの確認だ。幸い駅のホームなら、カメラに死角はまずないだろう。JRから映像を提供してもらって、怪しいヤツがいなかったか虱潰しに調べるんだ」
「そ、そうだな! 」
動こうとする達郎に向かい、綾瀬はニッコリと笑って言う。
「慎重に、頭を使ってモノを考えないとダメだぜ? 旦椋警部とも今後の捜査方法の再検討が必要だ。そっちはオレも係わるが――もう勇み足によるミスは無しで頼むよ。あまり庇ってやると周りがうるさいんだからな、石井達郎警部補」
皮肉のつもりはないのだろうが、如何せん、それまで挫折のないエリート人生を歩んでいた綾瀬には、屈折した人間の気持ちは分からなかった。
「ああ……いつも悪いな」
強張った笑顔で返答する親友の気持ちに気づくのは、もう少し後の事である。
◇
いつまでも、落ち込んでいられない。
一度、徹底的に底まで沈んだあとは、浮上するだけだ。
荒淫のために隈の浮いた顔で、冷水のシャワーを頭から被る。
そうして頭と身体を強引に覚めさせ、両手で己の頬をパシッと叩く。
(しっかりしろ、御堂聖! あの子は東京にいるらしいんだから、次の事を考えるんだ。歌手になるには、どこかの事務所のオーディションを受けるか、デモテープで直接売り込むか――バンドを組むなら、メンバーも探すだろう。そうなると、ライブ会場か? いや、最近は路上ライブで観衆を集めるところから始めようとする輩も多い――)
キュッとカランを締め、身体を滴る水滴を、真っ白いバスタオルで拭う。
そして、シャワーブースから素足のまま、リビングへと足を向ける。
リビングには、聖に呼び出されていた真壁が控えていた。
真壁は、バスタオル一枚で現れた己の主人の艶姿に、すっかり呑まれていた。
乳白色の輝くような裸身には、淫らなキスマークが所狭しと印されている。
「あ、お、おはようございます……」
「急に呼び出して悪いな。あと、スケジュール変更も任せてすまない。こっちも、ここしばらく、それどこじゃあなくてな――」
フッと笑い、リビング中央のソファーへ腰を下ろす。
「オレが直接顔を出さなきゃならんような重要な案件以外は、時間を取るように調整してくれたか? 」
「あ、はい! 本日はCMプランナーとの会合、その後昼食を交え、続けてスポンサー会議と入ってまして19時まで動かせませんでしたが、その後の接待は専務と役員が顔を出すことで調整しました」
「明日は? 」
「15時以降なら、大丈夫です。その後は細かい調整となりますが――この商売、時と場合で往々に変化しますから……」
「いい、分かった」
そう言うと、聖はスッと立ち上がり、バスタオルを籠へ放り込む。
「すぐ準備をする。少し待て」
「えっ!? あ、はいっ」
何も隠す様子なく、そのままスタスタとリビングを出て行く聖を見送りながら、真壁は真っ赤になって俯いた。
ついつい、凝視してしまった。
聖の、バランスのいい身体と、しなやかな筋肉の動き。吸われ過ぎて腫れている、薄紅の胸の突起。
それと、淡い陰りから除く綺麗な雄芯。
全身に印されたキスマークや、肩に残る歯形まで、意識せず目で追ってしまった。
(ご、極道の世界には、こういう事も珍しくないって兄貴分も言ってたが……)
御堂聖は、敬愛する極道だ。
兄の徹が褒め称えていた、男気溢れる、男の中の男――……。
「うっ……」
聖の美貌と裸体を思い出し、急速に熱が己の下半身へ集約するのを感じて、真壁は耳まで真っ赤になる。
彼は、前屈みになって、何とか必死に己の雄が収まるよう念じた。
「さぁ、落ち込む前に、監視カメラの確認だ。幸い駅のホームなら、カメラに死角はまずないだろう。JRから映像を提供してもらって、怪しいヤツがいなかったか虱潰しに調べるんだ」
「そ、そうだな! 」
動こうとする達郎に向かい、綾瀬はニッコリと笑って言う。
「慎重に、頭を使ってモノを考えないとダメだぜ? 旦椋警部とも今後の捜査方法の再検討が必要だ。そっちはオレも係わるが――もう勇み足によるミスは無しで頼むよ。あまり庇ってやると周りがうるさいんだからな、石井達郎警部補」
皮肉のつもりはないのだろうが、如何せん、それまで挫折のないエリート人生を歩んでいた綾瀬には、屈折した人間の気持ちは分からなかった。
「ああ……いつも悪いな」
強張った笑顔で返答する親友の気持ちに気づくのは、もう少し後の事である。
◇
いつまでも、落ち込んでいられない。
一度、徹底的に底まで沈んだあとは、浮上するだけだ。
荒淫のために隈の浮いた顔で、冷水のシャワーを頭から被る。
そうして頭と身体を強引に覚めさせ、両手で己の頬をパシッと叩く。
(しっかりしろ、御堂聖! あの子は東京にいるらしいんだから、次の事を考えるんだ。歌手になるには、どこかの事務所のオーディションを受けるか、デモテープで直接売り込むか――バンドを組むなら、メンバーも探すだろう。そうなると、ライブ会場か? いや、最近は路上ライブで観衆を集めるところから始めようとする輩も多い――)
キュッとカランを締め、身体を滴る水滴を、真っ白いバスタオルで拭う。
そして、シャワーブースから素足のまま、リビングへと足を向ける。
リビングには、聖に呼び出されていた真壁が控えていた。
真壁は、バスタオル一枚で現れた己の主人の艶姿に、すっかり呑まれていた。
乳白色の輝くような裸身には、淫らなキスマークが所狭しと印されている。
「あ、お、おはようございます……」
「急に呼び出して悪いな。あと、スケジュール変更も任せてすまない。こっちも、ここしばらく、それどこじゃあなくてな――」
フッと笑い、リビング中央のソファーへ腰を下ろす。
「オレが直接顔を出さなきゃならんような重要な案件以外は、時間を取るように調整してくれたか? 」
「あ、はい! 本日はCMプランナーとの会合、その後昼食を交え、続けてスポンサー会議と入ってまして19時まで動かせませんでしたが、その後の接待は専務と役員が顔を出すことで調整しました」
「明日は? 」
「15時以降なら、大丈夫です。その後は細かい調整となりますが――この商売、時と場合で往々に変化しますから……」
「いい、分かった」
そう言うと、聖はスッと立ち上がり、バスタオルを籠へ放り込む。
「すぐ準備をする。少し待て」
「えっ!? あ、はいっ」
何も隠す様子なく、そのままスタスタとリビングを出て行く聖を見送りながら、真壁は真っ赤になって俯いた。
ついつい、凝視してしまった。
聖の、バランスのいい身体と、しなやかな筋肉の動き。吸われ過ぎて腫れている、薄紅の胸の突起。
それと、淡い陰りから除く綺麗な雄芯。
全身に印されたキスマークや、肩に残る歯形まで、意識せず目で追ってしまった。
(ご、極道の世界には、こういう事も珍しくないって兄貴分も言ってたが……)
御堂聖は、敬愛する極道だ。
兄の徹が褒め称えていた、男気溢れる、男の中の男――……。
「うっ……」
聖の美貌と裸体を思い出し、急速に熱が己の下半身へ集約するのを感じて、真壁は耳まで真っ赤になる。
彼は、前屈みになって、何とか必死に己の雄が収まるよう念じた。
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