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All for lovers
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「は? 」
「アレンったらさ、こっちのコテージを空にしちゃうなんて……いくら何でも不用心じゃないか? 貴重品は置いてないだろうな? 僕たち、ここで一日、番人をしていればいいのか? 」
――――どうやら、達実は何も分かっていないらしい。
(おいおい、いくら何でも……可愛すぎだろう)
采は思わずプッと吹き出し、再び達実をギュッと抱き締めた。
「お前の、そういう天然なところも好きだよ」
「は、はぁ!? な、ななな……何言ってるんだよ! 僕のどこが天然なんだ! 」
「アレンは、オレ達の為に気を遣ったんだ」
「? 」
「本当に分かってないようだな? アレンは、新しく誕生した恋人たちの為に、愛し合う場所を提供したって事だ」
「っ!! 」
それを聞き、達実の顔は完熟トマトのように真っ赤になった。
耳まで赤くして、達実は口を開く。
「こ、恋人って僕たちのことか? それで……あ、あ、あ……愛し合うって……」
「なんだ? お前ももう18だろう? それなりに経験もあるだろうに」
「ないよ! 」
即座に否定して、達実は更にブンブンと首を振る。
「だって、そんな簡単に……本当に愛している人とじゃないと、セックスなんてダメだろう? 軽はずみに行為に及ぶなんて論外だ。しっかりと、真剣に将来の事を見据えて――って、何を笑ってるんだ! 」
「ハハハ、いや……さすが、あの人に育てられただけはある。オレの知っているアルファは、皆、王様みたいに尊大な態度でそっくり返っているっていうのに……こんなに性に関して純潔なアルファなんて、初めて見た」
「なんだよ! それが悪いっていうのか!? 」
「いや――――」
笑いながら、采はゆっくりと、腕の中の達実へ顔を近付ける。
「嬉しいよ。おかげで、あのアレン・シン・アウラもお前に手が出せなかったんだから」
こんなに無垢で純粋な相手では――――余程の無神経かどうしようもない悪漢でもなければ、そう易々と手を出すことは不可能だろう。
簡単に汚してはならない、純潔の薔薇だ。
故にアレンも、とうとう諦めたのだから。
「達実」
「な、に――」
言葉は、キスで塞がれた。
驚いて固まる達実を見下ろし、采はニヤリと笑う。
「……それじゃあ、経験値の違いを教えてやろうじゃないか? 今度ばかりはオレのペースで行かせてもらうぞ」
それなりに場数を踏んできたことを匂わせると、達実は真っ赤になりながらも、生来の負けん気を発揮した。
「へ、へぇ? それはどうかな? だって采は、もう四十に入ってるオジサンじゃないか。体力なら、絶対僕の方が上だよ」
「ほぉ、言ったな? 」
眉を跳ね上げると、采は達実をひょいっと抱きかかえた。
驚く達実に、先制するように采は言う。
「じゃあ、証明しようじゃないか」
「しょ、証明? 」
「――――逃げるなよ? 煽ったのはお前だからな」
意地悪く忠告すると、達実は悔しそうな顔になり……次に、キュッと目を閉じて、自分から采の肩へと腕を回し、強く抱き付いてきた。
そうして、本当に小さな声で返事をかえす。
「……うん。もう逃げない」
その返答に、采の本能は激しく刺激された。
「アレンったらさ、こっちのコテージを空にしちゃうなんて……いくら何でも不用心じゃないか? 貴重品は置いてないだろうな? 僕たち、ここで一日、番人をしていればいいのか? 」
――――どうやら、達実は何も分かっていないらしい。
(おいおい、いくら何でも……可愛すぎだろう)
采は思わずプッと吹き出し、再び達実をギュッと抱き締めた。
「お前の、そういう天然なところも好きだよ」
「は、はぁ!? な、ななな……何言ってるんだよ! 僕のどこが天然なんだ! 」
「アレンは、オレ達の為に気を遣ったんだ」
「? 」
「本当に分かってないようだな? アレンは、新しく誕生した恋人たちの為に、愛し合う場所を提供したって事だ」
「っ!! 」
それを聞き、達実の顔は完熟トマトのように真っ赤になった。
耳まで赤くして、達実は口を開く。
「こ、恋人って僕たちのことか? それで……あ、あ、あ……愛し合うって……」
「なんだ? お前ももう18だろう? それなりに経験もあるだろうに」
「ないよ! 」
即座に否定して、達実は更にブンブンと首を振る。
「だって、そんな簡単に……本当に愛している人とじゃないと、セックスなんてダメだろう? 軽はずみに行為に及ぶなんて論外だ。しっかりと、真剣に将来の事を見据えて――って、何を笑ってるんだ! 」
「ハハハ、いや……さすが、あの人に育てられただけはある。オレの知っているアルファは、皆、王様みたいに尊大な態度でそっくり返っているっていうのに……こんなに性に関して純潔なアルファなんて、初めて見た」
「なんだよ! それが悪いっていうのか!? 」
「いや――――」
笑いながら、采はゆっくりと、腕の中の達実へ顔を近付ける。
「嬉しいよ。おかげで、あのアレン・シン・アウラもお前に手が出せなかったんだから」
こんなに無垢で純粋な相手では――――余程の無神経かどうしようもない悪漢でもなければ、そう易々と手を出すことは不可能だろう。
簡単に汚してはならない、純潔の薔薇だ。
故にアレンも、とうとう諦めたのだから。
「達実」
「な、に――」
言葉は、キスで塞がれた。
驚いて固まる達実を見下ろし、采はニヤリと笑う。
「……それじゃあ、経験値の違いを教えてやろうじゃないか? 今度ばかりはオレのペースで行かせてもらうぞ」
それなりに場数を踏んできたことを匂わせると、達実は真っ赤になりながらも、生来の負けん気を発揮した。
「へ、へぇ? それはどうかな? だって采は、もう四十に入ってるオジサンじゃないか。体力なら、絶対僕の方が上だよ」
「ほぉ、言ったな? 」
眉を跳ね上げると、采は達実をひょいっと抱きかかえた。
驚く達実に、先制するように采は言う。
「じゃあ、証明しようじゃないか」
「しょ、証明? 」
「――――逃げるなよ? 煽ったのはお前だからな」
意地悪く忠告すると、達実は悔しそうな顔になり……次に、キュッと目を閉じて、自分から采の肩へと腕を回し、強く抱き付いてきた。
そうして、本当に小さな声で返事をかえす。
「……うん。もう逃げない」
その返答に、采の本能は激しく刺激された。
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