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だから言ったろ
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僕が目を覚ましたのは、何処かの暗い路地の上。アスファルトが背中に当たって、とても冷たい。
「……よう、起きたか」
「……カラスくん……!?」
彼は、僕とは目を合わせようとはしない。何があったのか。尋ねなくてもわかる。あの時、カラスくんが咄嗟に飛んできて助けてくれたんだ。
「……あの、大丈夫?」
「……こっちのセリフだよ、馬鹿野郎」
彼の羽は荒れてこそいたが、致命傷のようなものはなかった。むしろ、僕の方こそ生きているのが不思議なくらいの傷だった。
「言ったろ、他人に良い顔ばっかしてるお前じゃ、あっという間に卑怯者の食い物にされるって」
「……カラスくん……そうだね……」
カラスくんは、全部知っていたんだ。僕が他人に良い顔をして、食い物にされて、最後は弱肉強食の摂理に飲み込まれるって。
彼は、こちらを見ないで、よちよちと数歩、よろめくように歩いた。やがてビニル袋を掴むと、こちらの方を向いた。
「……よう、起きたか」
「……カラスくん……!?」
彼は、僕とは目を合わせようとはしない。何があったのか。尋ねなくてもわかる。あの時、カラスくんが咄嗟に飛んできて助けてくれたんだ。
「……あの、大丈夫?」
「……こっちのセリフだよ、馬鹿野郎」
彼の羽は荒れてこそいたが、致命傷のようなものはなかった。むしろ、僕の方こそ生きているのが不思議なくらいの傷だった。
「言ったろ、他人に良い顔ばっかしてるお前じゃ、あっという間に卑怯者の食い物にされるって」
「……カラスくん……そうだね……」
カラスくんは、全部知っていたんだ。僕が他人に良い顔をして、食い物にされて、最後は弱肉強食の摂理に飲み込まれるって。
彼は、こちらを見ないで、よちよちと数歩、よろめくように歩いた。やがてビニル袋を掴むと、こちらの方を向いた。
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