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81話 デート2回戦

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という訳で、デート当日。セラフィーナは黒のべレー帽を被り、白黒を基調としたシャツにロングスカート…と言った無難なお花見チックなコーデを整えた。

対してアルヴェルトは、いつも通りに専属騎士の外套。デートっぽさの欠片もないが、デートだと悟られない為には適任の服かもしれない。

「えっ!?セラフィーナ様…お洒落してくれたのか…!?」

「はい。せっかくのデートですから。変でしたか?」

「いや!すごい似合ってる!…けどよ…俺なんかとのデートのために…」

「もー、卑下ちゃダメですよ。貴方は私のただ一人の専属騎士なんですからね」

そう言って、ほっぺたをむにむにつつく。アルヴェルトは恥ずかしいような嬉しいような、ともかく、元気を取り戻した。

「お、おう……!///」

「ふふ。行きましょうか」

せっかく昨日はまるまる休みだったので、二人でデートコースを色々考えた。なので今日はそこをぐるぐる回る感じである。パトリツィオとは野郎野郎オブ野郎みたいなデートだったが、アルヴェルトはどうするのだろうか。

まずやってきたのは、シンフォニア王国でも大きな市場を形成しているノミノ・マーケット。ここは国内最大の市場であり、国内外から様々な店が出店し、軒を連ねている。

「わぁー…大きいですね!」

「そうだな。はぐれないように手繋ぐか?」

「あ、はい…///」

ぎゅっと優しく手を繋ぎ、マーケットへと歩いていく。今回二人がここにやってきたのは、デートのついでにあるものを買いに来たからだ。

「アレ、売ってっかな?」

「あると良いですね。チャールズさんも喜びますよ、きっと」

「そうだな。…ってか、ありがとな」

「えっ?」

「ほら…俺一人じゃ、ああいうのって絶対買いに行けねえだろ…?」

「なるほど。どういたしまして」

ふふっと笑って、歩き続ける。二人が探しているのは、飼い猫のチャールズに付けるための装飾品。今まで買ってやろうとは思っていたが、可愛いものが多いので、アルヴェルト一人じゃ恥ずかしくて行けなかったのである。

「あ、ここですね。…わぁ、可愛い!」

「本当だな。随分メルヘンチックだ…」

やってきたのは、猫専門店。やはりというかなんと言うか、キャピキャピの装飾にドギツイピンクで象られた、かなりプリティーな仕上がりである。ここに男一人で入る勇気は無いだろう。

「それじゃあ、入りましょうか!」

「お、おうっ!///」

そんな訳で、カップルっぽく二人で入店。中に入ると、可愛らしい鳴き声と共に足元に猫達がワラワラと集まってきた。

「おおおっ!?か、かか……」

「にゃーん」

すりすり。頬擦りされる。セラフィーナもアルヴェルトも、二人揃って嬉しそうに顔がにやけてくる。

「か…可愛い!」

「可愛いー!」

二人揃って、可愛い出迎え猫に癒されてしまうのだった。しばらくゴロゴロふにゃふにゃしていると、店員さんらしき人がやってきた。

「いらっしゃいませー。猫ちゃんのお店、キャットタウンへようこそ~」

ぴょこぴょことした猫耳の生えた店員。彼女は亜人族の一種、猫娘だ。愛らしい猫耳が特長の、人と猫の因子を備えたハーフ種である。

「あっ!?見て下さいアルヴェルトさん!凄い可愛い!」

「うおっ!マジだ!猫耳ついてる!」

二人でキャーキャー興奮していると、猫娘はなんだかバツが悪そうに奥に隠れてしまった。どういう事だろうか、と二人は不思議に思いつつ、猫用のアクセサリーを購入しに向かった。

「さて、どんなのがチャールズに似合うかな?」

「そうですね…例えば、これなんてどうでしょう?」

手に取ったのは、愛らしい宝石が埋め込まれたネックレス。貴族がよくやる、自分の猫を区別させるための代物だ。可愛いチャールズにはよく似合いそうだ。

「ネックレスか…それもありだな。けどあいつ、確かオスじゃ無かったか…?」

「あ、オスなんですね!だったらもう少し凛々しい方が良いかもですね」

猫は愛らしい生き物とはいえ、オスならかっこいいものをつけるのに憧れたりもするだろう。そんな訳で、もう少しアクセサリーを探ってみる。

「(…でも、セラフィーナ様は男なのに可愛いものも似合うよな……)」

「これも似合うかも…アルヴェルトさん?」

「…あっ、わ、わりい。ぼーっとしてた」

「もー、アルヴェルトさんの飼い猫なんですから、しっかり選んで下さいね」

「はい……」

アルヴェルトは苦悶していた。セラフィーナのように、男だって可愛いものも付けたい人はいるだろう。でも、逆に自分みたいにカッコイイものをつけたい男もいる。チャールズはどっちが好きなのだろうか。

「お悩みですか?お二人共」

すると、店員が声をかけてきた。先程の猫娘だ。

「あ…はい。どれも可愛くて迷ってしまって……」

「でしたら、猫ちゃんの特徴に合わせて選んでみましょう。猫ちゃんはオスですか?メスですか?」

「オスですよね、アルヴェルトさん」

「ああ。間違いない」

「でしたら、カッコ良い系が良いでしょう。無理に可愛いものをつけて、嫌がるオス猫も多いですから」

「そうなんですか…?」

とセラフィーナは不思議そうに見つめた。猫は可愛いものだから、可愛いものをつけて着飾ったらもっと素敵になるのに…と思っていた。

「ええ。可愛い…って性質は猫が生まれ持ったものです。それを気に入るか気に入らないかは当人次第ですので。…私も、猫娘だからって無条件で可愛い扱いされて何度も怒ったものですよ」

「…私は、かっこいい方が好きなのに」

そう言って、店員は少し顔を暗くする。そうしてセラフィーナは気付いた。自分だって、男に生まれたけどそれを気に入ってはいなかった。女の子になりたいから、今こうして女装しているのだと。

「…まあでも、そこは本人と相談ですかね。可愛いものが好きなオスもいるでしょうし」

にゃはは、と頬をかく猫娘。セラフィーナは一瞬ドキッとしたが、自分の事じゃないだろと慌てて脳内でツッコミを入れた。

「そうですか…では、今日は諦めて帰りましょうか…チャールズさんも連れて来てないですし…」

「だな。すんません、冷やかしになっちゃって」

「いえいえ。また今度、猫ちゃんと一緒にいらしてください」

そうして、猫娘に見送られていく。セラフィーナはまたひとつ学んだ。可愛く生まれたからと言って、それが全て可愛くなりたいと願っている訳では無いと。
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