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9話 何か違う世界
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こうして、聖女セラフィーナは表向き王子の婚約者となった。それから彼女は、再び先程の汗だくだく着替えを済ませて、自分の新しい住まいとなる聖女用の屋敷へと向かうことになった。
「(なっちゃった…王子様と婚約者になっちゃった……!)」
正直、良いか悪いかで言えば、悪い選択であると言えるだろう。仮初とはいえ、本当に王子がセラフィーナに惚れる可能性も十分にある。それ程までに完璧な女装なのだから。そうなれば、やっぱり死刑である。
「(…それにしても不思議だな…前はこんな事なんて無かったのに……)」
なんと言うか、この世界は過去の世界であるようだが、完全に同じ風には進んでくれないと言った感じだ。婚約者の件に関しても、パトリツィオが可哀想だからなる事を決めたのだが、実際の所これで良かったのか不安なのが現状だ。
「どうした、浮かない顔をしているぞ?」
「え?そ、そうですか?緊張してるのかな?あははは……」
と、隣で不可解な顔をしている祭司様に笑いかける。王城からしばらく歩いた所に、一際大きな御屋敷が見えてくる。その建物の名は、聖なる泉。この建物が、聖女セラフィーナのこれから住まう新しい家である。
「なら良いのだが……ここが聖なる泉だ。名前くらいは存じているだろう?」
「はい。先代の聖女様に、何度かお話を伺った事があります」
先代聖女、エヴァンジェリーナ・アヴォレード。彼女はセラフィーナが7つになる年までこの国の聖女として働いていたが、その年に大量発生した魔物の群れに友好国が襲われた際に、野戦病院を支える救護兵として前線に立つ事になってしまった。彼女はそのまま、そこで戦死したとされている。当時まだ子供だったセラフィーナですら、彼女と話をした事があるように、誰にでも優しく慈しみを持った、まさに聖女を体現したような女性であった。
「そうであったな。…ここはエヴァンジェリーナ嬢が住んでいた頃から、彼女に仕えていた従者達が屋敷が廃れぬように手入れをしている。長らく使われていなかったが、恐らく綺麗なはずだ」
うんうん、と頷きながら、セラフィーナは屋敷の門を慣れた手つきで開ける。というのも、ここは彼女も生前から体験した事柄なのである。扉を開ければ、綺麗な屋敷が自分をお出迎えしてくれる。そう信じて扉を握りしめたところで、なんか言いようのない悪寒が彼女の背中を迸った。
「(えっ!?…き、気のせい…だよね…)」
今日は冷えるし、ちょっと寒くて身体が震えてしまったのだろう。彼女はそう考える事にした。そうして、ゆっくりと扉を開けて────
「な……」
────目の前の光景に、絶句した。
「(なっちゃった…王子様と婚約者になっちゃった……!)」
正直、良いか悪いかで言えば、悪い選択であると言えるだろう。仮初とはいえ、本当に王子がセラフィーナに惚れる可能性も十分にある。それ程までに完璧な女装なのだから。そうなれば、やっぱり死刑である。
「(…それにしても不思議だな…前はこんな事なんて無かったのに……)」
なんと言うか、この世界は過去の世界であるようだが、完全に同じ風には進んでくれないと言った感じだ。婚約者の件に関しても、パトリツィオが可哀想だからなる事を決めたのだが、実際の所これで良かったのか不安なのが現状だ。
「どうした、浮かない顔をしているぞ?」
「え?そ、そうですか?緊張してるのかな?あははは……」
と、隣で不可解な顔をしている祭司様に笑いかける。王城からしばらく歩いた所に、一際大きな御屋敷が見えてくる。その建物の名は、聖なる泉。この建物が、聖女セラフィーナのこれから住まう新しい家である。
「なら良いのだが……ここが聖なる泉だ。名前くらいは存じているだろう?」
「はい。先代の聖女様に、何度かお話を伺った事があります」
先代聖女、エヴァンジェリーナ・アヴォレード。彼女はセラフィーナが7つになる年までこの国の聖女として働いていたが、その年に大量発生した魔物の群れに友好国が襲われた際に、野戦病院を支える救護兵として前線に立つ事になってしまった。彼女はそのまま、そこで戦死したとされている。当時まだ子供だったセラフィーナですら、彼女と話をした事があるように、誰にでも優しく慈しみを持った、まさに聖女を体現したような女性であった。
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「(えっ!?…き、気のせい…だよね…)」
今日は冷えるし、ちょっと寒くて身体が震えてしまったのだろう。彼女はそう考える事にした。そうして、ゆっくりと扉を開けて────
「な……」
────目の前の光景に、絶句した。
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