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4話 聖女の役割
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さて、肝心のセラフィーナはと言うと、完全に緊張で心臓がバクバク、冷や汗ダラダラ状態であった。正直言って、彼女はこういう堅苦しい空気は凄い苦手だ。加えて、前世の死刑の事もある。いつどこでヘマをやらかさないか不安で堪らないのである。
「先ずはおめでとう、聖女ラガザハート。私としても、長年不在だった聖女が新しく就任する事はとても喜ばしい事だ」
「お褒めに預かり光栄です、陛下。聖女として、民を護れるよう精進致します」
「頼もしい言葉だ。して、ラガザハート。聖女の務めが何たるかは、汝もよく理解しているだろう?」
「はい。存じております。幼き頃より、何度かこの目で確かめました」
聖女。それはこの国を守護する結界を維持する為に必要不可欠な存在。この世界に存在する魔物は人々を襲い、殺戮する為、それらから国を守る為に教会と王国が手を組んである種の結界を作り出すことにしたのだ。
それこそが防御式・神の壁である。これは邪悪な力を持つ魔物だけが通れなくなる強靭な結界であり、国全体に張り巡らされている。この魔術の維持には聖なる魔力が必要であり、聖属性の魔力を持つ人物の協力が必要不可欠となる。
しかし、聖属性の魔力を持っている人物は非常に少ない。国中の僧侶を集めても微弱な結界を作り出すことしか出来なかった。その理由の一つとして、国の僧侶達は日頃から、解呪や解毒等、冒険者や国民の為に魔術を使用して魔力を消費している。そのため、結界に回せるリソースが少ない問題があった。そこで、持続的に魔力を蓄え続けられる聖属性魔術の使い手を用意する事にした。それこそが、聖女という存在である。
それなら男でも良いじゃねえか!とセラフィーナも昔突っ込んだ覚えがあるが、実はそうはいかない。男と女、異なる術者によって織り成される魔術は本来の威力より遥かに強力になる。聖女が存在して初めて、結界は魔物を寄せ付けない壁として成立するのだ。そして、僧侶は聖属性に目覚めた男性しかなれない。故に、聖女という立場は女性のみという枠組みになっているのだ。
「(多分だけど…前に男ってバレたのはこの結界をきちんと強化出来なかったからだよね……)」
そして困ったことに、セラフィーナは男である。本来であれば一週間後、最初の魔力供与の際に彼女の魔力が(当たり前だが)上手く機能せず、彼女は男だと確信を持たれてしまったのだ。
「流石だな。ではこれより、正式な着任の儀を行う。儀式用の服を用意してある。そちらの更衣室で着替えてから、再び戻って来るが良い」
「は、はい!」
セラフィーナは心臓をドキリとさせながら、粛々と着替えが用意されている部屋へと歩いていく。
着替え。それは男女誰彼問わず己の肌をさらけ出して、別の衣類へと替える行為。そう、それは男であるセラフィーナにとっては、一瞬たりとも油断のできない時間である。何か策を打たなければ、どこからか自分が男であるとバレてしまうかもしれない……
「先ずはおめでとう、聖女ラガザハート。私としても、長年不在だった聖女が新しく就任する事はとても喜ばしい事だ」
「お褒めに預かり光栄です、陛下。聖女として、民を護れるよう精進致します」
「頼もしい言葉だ。して、ラガザハート。聖女の務めが何たるかは、汝もよく理解しているだろう?」
「はい。存じております。幼き頃より、何度かこの目で確かめました」
聖女。それはこの国を守護する結界を維持する為に必要不可欠な存在。この世界に存在する魔物は人々を襲い、殺戮する為、それらから国を守る為に教会と王国が手を組んである種の結界を作り出すことにしたのだ。
それこそが防御式・神の壁である。これは邪悪な力を持つ魔物だけが通れなくなる強靭な結界であり、国全体に張り巡らされている。この魔術の維持には聖なる魔力が必要であり、聖属性の魔力を持つ人物の協力が必要不可欠となる。
しかし、聖属性の魔力を持っている人物は非常に少ない。国中の僧侶を集めても微弱な結界を作り出すことしか出来なかった。その理由の一つとして、国の僧侶達は日頃から、解呪や解毒等、冒険者や国民の為に魔術を使用して魔力を消費している。そのため、結界に回せるリソースが少ない問題があった。そこで、持続的に魔力を蓄え続けられる聖属性魔術の使い手を用意する事にした。それこそが、聖女という存在である。
それなら男でも良いじゃねえか!とセラフィーナも昔突っ込んだ覚えがあるが、実はそうはいかない。男と女、異なる術者によって織り成される魔術は本来の威力より遥かに強力になる。聖女が存在して初めて、結界は魔物を寄せ付けない壁として成立するのだ。そして、僧侶は聖属性に目覚めた男性しかなれない。故に、聖女という立場は女性のみという枠組みになっているのだ。
「(多分だけど…前に男ってバレたのはこの結界をきちんと強化出来なかったからだよね……)」
そして困ったことに、セラフィーナは男である。本来であれば一週間後、最初の魔力供与の際に彼女の魔力が(当たり前だが)上手く機能せず、彼女は男だと確信を持たれてしまったのだ。
「流石だな。ではこれより、正式な着任の儀を行う。儀式用の服を用意してある。そちらの更衣室で着替えてから、再び戻って来るが良い」
「は、はい!」
セラフィーナは心臓をドキリとさせながら、粛々と着替えが用意されている部屋へと歩いていく。
着替え。それは男女誰彼問わず己の肌をさらけ出して、別の衣類へと替える行為。そう、それは男であるセラフィーナにとっては、一瞬たりとも油断のできない時間である。何か策を打たなければ、どこからか自分が男であるとバレてしまうかもしれない……
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