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3話 聖女となった理由
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凱旋を見終えた王子パトリツィオは、謁見に来る聖女を待ち、一人王座に座って思案していた。自分の父、現国王は病床に伏しているため、代わりに自分が聖女の謁見を行う事になったのだ。
「…あの娘ならば……」
セラフィーナに何か思う所があるのか。彼は静かに自分の胸に手を当て、そしてすぐに離した。それから、彼は自分が何故彼女を聖女に推薦したのかと思い返した。
「お姉ちゃーん!怪我しちゃったよー!」
「あらら…そこに座って下さいね」
それは、王子パトリツィオが国を視察に来た時の事だった。国の中でも比較的田舎側に位置する町に、彼女は暮らしていた。
「痛いの痛いの…飛んでけー」
膝を擦りむいた少年の膝に、魔法陣を描き、文字を刻んで魔術を発動させる。すると、傷口がゆっくりと塞がっていく。回復魔術。本来は魔物との戦闘に用いる物だが、日常的に怪我の治療等にも役立てる事が出来る。これはよくある光景で、パトリツィオも、なんて事は無い日常の風景だと思って通り過ぎようとした。
「はい。神の御加護がありますように」
「わーい!ありがとうお姉ちゃん!」
「なっ……!?」
しかし、驚いたのはその後だ。彼女が指で十時を切ったかと思うと、傷口に聖なる「加護」の力が宿っていたのだ。
加護は聖なる魔力を宿すことで、一時的に邪悪な物体を寄せ付けない力。軽い怪我であれば、細菌による感染などの防護に役立つ。非常に便利な力だが、聖属性の魔力を持っている者しか、この術式は扱えない。
王国にある書物で読んだものと全く同じ。これこそ、父が長年探し求めていた「聖属性」の魔術そのもの。であれば、彼女は聖女の資質を持っている人物なのだろう。
「(すぐに父上に報告しなくては…!)」
彼は大急ぎで、彼女の存在を国王に伝えた。それから、その地区を担当する司祭を通じて、彼女に聖女になるように通告を送った。心優しい治癒魔術の使い手ならば、きっと立派な聖女になってくれると信じて。
そして、彼女は今こうして聖女となって自分の元に向かって来ている。これから見極める。セラフィーナ・ラガザハート。君がどのような人物なのか、私はとても興味深い。もし君が私の望むような人物なら。
「…いや、辞めておこう。あらぬ期待だ」
そうして、王子はフッとため息をついた。まるで儚い幻想から目覚めるかのように。
コンコンと木製の扉が叩かれる音がした。ゆっくりと扉が開き、聖女が物静かな足取りでこの部屋へと入ってくる。扉が閉まると同時に、聖女はスカートをつまんで静かに頭を下げた。
「お初にお目にかかります。アンドレオッティ陛下。セラフィーナ・ラガザハートと申します」
「よく参った、ラガザハート。私が次期国王、パトリツィオ・アンドレオッティだ」
国王が名乗りを済ませると、堂々とした態度を崩さずに、聖女はその場に跪く。この国を統治する王の前には、聖女であっても敬意を表して跪くのが礼儀だ。厳粛な雰囲気が二人を包み込み、周りに居た近衛兵達もその雰囲気に思わずゴクリと息を飲む。
「…あの娘ならば……」
セラフィーナに何か思う所があるのか。彼は静かに自分の胸に手を当て、そしてすぐに離した。それから、彼は自分が何故彼女を聖女に推薦したのかと思い返した。
「お姉ちゃーん!怪我しちゃったよー!」
「あらら…そこに座って下さいね」
それは、王子パトリツィオが国を視察に来た時の事だった。国の中でも比較的田舎側に位置する町に、彼女は暮らしていた。
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「はい。神の御加護がありますように」
「わーい!ありがとうお姉ちゃん!」
「なっ……!?」
しかし、驚いたのはその後だ。彼女が指で十時を切ったかと思うと、傷口に聖なる「加護」の力が宿っていたのだ。
加護は聖なる魔力を宿すことで、一時的に邪悪な物体を寄せ付けない力。軽い怪我であれば、細菌による感染などの防護に役立つ。非常に便利な力だが、聖属性の魔力を持っている者しか、この術式は扱えない。
王国にある書物で読んだものと全く同じ。これこそ、父が長年探し求めていた「聖属性」の魔術そのもの。であれば、彼女は聖女の資質を持っている人物なのだろう。
「(すぐに父上に報告しなくては…!)」
彼は大急ぎで、彼女の存在を国王に伝えた。それから、その地区を担当する司祭を通じて、彼女に聖女になるように通告を送った。心優しい治癒魔術の使い手ならば、きっと立派な聖女になってくれると信じて。
そして、彼女は今こうして聖女となって自分の元に向かって来ている。これから見極める。セラフィーナ・ラガザハート。君がどのような人物なのか、私はとても興味深い。もし君が私の望むような人物なら。
「…いや、辞めておこう。あらぬ期待だ」
そうして、王子はフッとため息をついた。まるで儚い幻想から目覚めるかのように。
コンコンと木製の扉が叩かれる音がした。ゆっくりと扉が開き、聖女が物静かな足取りでこの部屋へと入ってくる。扉が閉まると同時に、聖女はスカートをつまんで静かに頭を下げた。
「お初にお目にかかります。アンドレオッティ陛下。セラフィーナ・ラガザハートと申します」
「よく参った、ラガザハート。私が次期国王、パトリツィオ・アンドレオッティだ」
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