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汽車編

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「何だ……?」

 ゴン、ゴン、と何かがぶつかっているのか、揺れが続く。

 窓を開けて、音のする方を見れば、そこには巨大な鳥型のスカルが汽車に体をぶつけているではないか。

 このままでは車体が脱線し、乗客に被害が出る。

「おい、五両目にスカルが体をぶつけている。私はこのまま窓から屋根に登って奴を引き付ける。その隙に、あんたたちは乗客の避難誘導を頼んだ。それが終わり次第戦闘に入ってくれ」

「わかった! 俺が五両目以降の車両にいる乗客を後方に移動させるから、ザグさんは前の車両にいる乗客を頼んだよ! じゃ、サラちゃん気を付けて!」

「了解っす! それが済み次第加勢するっす!」

 サラは確認して、車窓に手をかけた。

「あ、あの……! 私は、一体どうすれば……?」

 困り果てたジャクリーンが、サラのマントを掴む。

「おおっと……! ああ、あんたはザグジーの指示に従ってくれ。恐らくこの二両目にいれば問題ないはずだ」

「わ、わかりました」

 サラはジャクリーンが手を離したのを確認し、車窓から屋根に向かって跳躍した。

 汽車の屋根に着地し、サラはスカルの方へ駆けだす。

 翼を広げたスカルの大きさは二メートルを超えている。

 その巨体が汽車に体当たりを繰り出しているとなれば、相当なパワー。

 そりゃ汽車も揺れる。

「行くぞ、アル……!」

 サラは剣を握り、猛スピードで近寄っていく。

 サラに気が付いたスカルが咆哮を上げて突っ込んできた。

「こい! 切り刻んでやる!」

 剣を構えて振り切る。

 けれどスカルはサラの攻撃をひょいっと躱して上空へ逃げる。

 飛行しているスカルに接近戦は難しいか?

 いや、いける……!

 上空へ飛んだスカルが、こちらへ向かって急降下してきた。

 サラは迎撃の体勢になり、再び剣を構えた。

 風を切って突っ込んできたスカルに、鋭い一撃を放つ。スパッと右翼を斬りおとせば、スカルはバランスを崩して汽車の屋根に倒れ伏す。

「終わりだ……!」

 サラがとどめの一撃を加えようと剣を振り下ろしたが――。

「な……!」

 剣は虚しくズコンと音を立てて車体に刺さっただけ。

 スカルの切り落とした右翼が再生され、再び上空へ飛び立っていたのだ。

 乗客の恐怖心を煽ってそれを喰ってるな……。

 だから再生能力が上がっているのか?

 サラは上空を滑空しているスカルに向かって、剣を薙いだ。連続して光の斬撃を飛ばすもスカルは滑空して見事に避けてゆく。

「当たらないな……」

「サラちゃん!」

 ウィルソンが車両と車両の間にある階段から屋根に登ってくる。続いてザグジーもそこから登場した。

「スカルはどんな感じっすか?」

「飛ばれたら攻撃が当たらない。だが、この乗客の恐怖心を煽って、それを吸収しているようだから、この汽車から遠くには離れようとしない。一定の距離を保ちつつ、こちらの攻撃をかわしている」

「向こうからは攻撃してこないんすか?」

「今は距離を取って攻撃してこないが、攻撃は大した攻撃ではない。攻撃力としてはこちらの方が勝っているが、あのスカルは再生能力が高い。一撃で致命傷を負わせてもすぐに回復するだろう。だから奴の身動きを取れなくするか、挟み撃ちにするかしないといけない。そうしないと浄化しようにもすぐに上空に飛ばれてしまう」

「サラちゃんって結構分析しながら戦ってるんだね!?」

「……当たり前だろ。考えなしに攻撃し続けるのはアホがすることだ」

 ウィルソンに向かってそう言うと、「それってまるで俺に言ってるみたいだよね!」と笑い出す。

 ウィルは考えずに戦ってそうだと思ったのは、黙っておこう。

「じゃあ、どうするっすか?」

「俺が誘導するように水柱立てるよー」

「じゃあ、俺も反対側から誘導するように岩で援護射撃するっす。そうしたら行き場を失ったスカルがこちらへ向かって飛んでくると思うっす!」

「わかった。こちらに向かってきたのを見計らって私が一撃を入れる」

 三人は頷き合って飛んでいるスカルを睨んだ。
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